釉薬の3大要素とは釉薬には3つの大きな役割があります。当サイトでは基礎知識のカテゴリーで概要を紹介しました。(参考ページ : 釉薬(ゆうやく)とは)このページでは3つの役割を、更に掘り下げていきます。釉薬の組成(そせい:構成する成分のこと)は、1塩基性酸化物 2中性酸化物 3酸性酸化物に大別されます。それぞれ「~酸化物」とありますが、これは大気中にあるため酸素と結合した結果の産物です。また、塩基性...
透明釉について釉薬の性質・外観の区分のひとつに透明釉があります。これは光沢のある透明無色の釉薬を指します。たとえば染付に用いられる石灰釉や灰釉(高火度釉:1,200℃前後で熔ける)や、唐三彩(とうさんさい)のような鉛釉(低火度釉:800℃前後で熔ける)が代表的な透明釉です。素地の色や化粧土の色をそのまま反映するため、下地の色をそのまま活かすことができます。この透明釉は素地である白をそのまま活かして...
失透釉について釉薬の性質・外観の区分のひとつに失透釉(しっとうゆう)があります。失透釉とは表面に光沢がある不透明な釉薬のことです。失透釉が不透明なのは、釉薬の内部に「細かい結晶」があるためです。たとえば透明ガラスと、白っぽいタイルをイメージしてみましょう。どちらも表面は光沢がありますが内部が違います。透明ガラスの内部は透明である一方、白タイルの内部は不透明(=白)になっていますね。これはタイルの内...
マット釉について釉薬の性質・外観の区分のひとつにマット釉があります。マット釉とは表面に光沢がない不透明な釉薬を指します。身近な例では敷物であるマットが分かりやすいです。もともとマットには「光を反射しないもの」「光沢のないもの」という意味があります。マットは動物の毛などツヤ消し状の素地がよく使われますね。ところで失透釉とマット釉はどちらも不透明な釉薬です。失透釉は「表面」にツヤがある一方、マット釉の...
乳濁釉について釉薬の性質・外観の区分のひとつに乳濁釉(にゅうだくゆう)があります。乳濁釉とは釉薬の成分がきれいな結晶にならず、非晶質(ひしょうしつ)の状態になっています。たとえば液状に見えるガラス層や、粒状に見えるガラス層に分かれるため、白濁する釉薬になります。このように釉中の成分が、性質の異なるガラス質に分かれることを分相(ぶんそう)といいます。結晶:分子と原子が規則正しく配列されている。釉中に...
結晶釉について釉薬の性質・外観の区分のひとつに結晶釉があります。結晶釉(けっしょうゆう)とは、釉中にある結晶がはっきり目視できる釉薬のことです。失透釉やマット釉の場合、結晶質によって不透明になります。しかしその結晶をひとつひとつ肉眼で確認することはできません。そのいっぽう結晶釉の場合は、結晶が核を形成して大きくなるため肉眼で確認できます。左がマット釉、右が結晶釉です。マット釉の結晶は細かく視認でき...
上野緑釉について上野緑釉(あがの りょくゆう)とは、福岡県の上野焼で使われる緑釉(酸化焼成)のことをいいます。上野焼に特徴的な釉薬であり、単に「上野釉」と呼ぶこともあります。上野緑釉の呈色剤には主に酸化銅が使われます。このように銅を呈色剤とする釉を「銅緑釉」と呼びます。ちなみに灰釉に酸化銅を加える織部釉もこの類となります。さて上野緑釉の色については、緑だけではなく青に近い発色も見られます。白濁した...
飴釉について飴釉(あめゆう)とは鉄釉の一種で、酸化焼成で褐色になる釉薬です。この褐色を「飴色」と呼ぶことから飴釉の名が定着しました。釉中に含まれる酸化鉄は5~8%で、それ以上増えると黒釉になります。調合例:福島長石6:土灰4。外割で鬼板5%淡黄色の焼きあがりになった場合、鬼板の%を上げていきます。飴釉自体は、含鉄量が1~3%未満の黄釉と、瀬戸黒などの黒釉(約10%)の中間に位置します。よって発色に...
伊羅保釉について伊羅保釉(いらぼゆう)とは伊羅保茶碗に使われる釉薬です。伊羅保茶碗は高麗茶碗の一種であり、侘びた佇まいと素朴な釉調が見てとれます。その伊羅保釉は、胎土の砂気により手触りが粗いのが特徴です。高麗茶碗の名の起源は不明なものが多く、伊羅保の由来もはっきりとしていません。一説によれば釉肌が粗く、イライラした釉調から「伊羅保」と名付けられたといいます。灰をベースにしながらも、鉄分を含む伊羅保...
織部釉について織部釉(おりべゆう)は酸化焼成で緑に焼きあがる釉薬です。これは灰釉をベースとし、呈色剤として酸化銅を3~5%加えたものを指します。調合例:釜戸長石6:土灰3:藁灰1。外割で酸化銅(II)4%調合例:三河長石4:土灰6。外割で酸化銅(II)4%ちなみに銅を呈色剤とする釉薬を銅緑釉(どうりょくゆう)と呼びます。銅の種類はいくつかありますが、緑に発色する酸化銅が代表的なものです。酸化銅(I...
柿釉について柿釉(かきゆう)は鉄釉の一種で、茶褐色の釉薬を指します。その色調はチョコレート色ともいわれ、必ずしも柿の色と一致するとは限りません。柿釉は釉中の鉄分がおよそ12%~15%となります。鉄分は約10%で黒色を呈し、それ以上増えると次第に飽和してきます。つまり柿釉の渋い茶色は、溶けきれずに飽和した鉄分の発色といえます。調合例1:福島長石5:土灰4:中国黄土1。外割でベンガラ10%黄土とベンガ...
黄瀬戸釉について黄瀬戸釉(きぜとゆう)とは灰釉をベースにした黄色の釉薬です。調合の一例を挙げるならば、釜戸長石6:土灰4。外割で鬼板を3%釜戸長石4:土灰6。外割で黄土10%淡黄色の発色は木灰に含まれる微量な鉄分(=1~3%の酸化第二鉄)によるものです。ただし木灰といっても、含まれる鉄分量は種類によって異なります。たとえば鉄分をほぼ含まないイスの木は、灰にする皮の部分に0.3~0.5%の鉄分しかあ...
志野釉について志野釉(しのゆう)とは志野に使われる白色釉薬です。長石を単味で用いるのが一般的で、厚めに施釉されることが多いです。釉薬に厚みが出れば白さが増し、ピンホールも出やすくなります。その一方で釉が溶けきらない、溶けて流れすぎる、緋色が全くでないなど。志野の歩留まりはけして良いとは言えないでしょう。志野釉の一例:平津長石100%志野は桃山時代に生まれた施釉陶器です。当時は白いやきものが貴重だっ...
青磁釉について青磁釉(せいじゆう)とは、酸素が少ない還元焼成によって青~緑色に発色する釉薬です。この発色は釉薬に微量な鉄分が含まれるためです。鉄分が少なくなれば青白磁のような淡い色になり、鉄分がほぼ含まれなければ白磁や染付のような透明釉になります。還元とは逆に、酸素が十分な状態である酸化焼成では黄色味を帯びた発色をします。釉の厚みがさほどない場合、黄瀬戸や御深井(おふけ)のように見えます。これは青...
蕎麦釉について蕎麦釉(そばゆう)とは鉄釉の一種で、緑色~黄色に発色します。光沢が少なく鉄分が結晶になって表れるのが特徴です。失透釉でもあり結晶釉の性質も併せ持つわけですが、結晶ができるのは焼成後の徐冷時間が必要です。また発色の違いについては焼成条件によります。たとえば酸化焼成では黄~茶褐色に焼きあがります。それに対して還元焼成では青~緑色に発色する傾向があります。調合例1:平津長石5:土灰3:籾灰...