管理者プロフィール | ご挨拶
略歴
小林俊介(こばやし しゅんすけ)
古物商許可証:東京都公安委員会第303272117645号/陶磁器鑑賞歴30年以上 / 日本国内の窯業地訪問20箇所超 / 訪れた美術館・展覧会は約300(月1回ペース) / 2014年から陶磁器専門サイトを運営。同時に陶芸を習い始める
1974年生まれ。栃木県佐野市出身。陶磁器を中心に美術品を取り扱う家の長男として生まれる。幼少のころから陶磁器が身のまわりにある環境で陶芸作家と作品を日常的に見ながら育つ。上京後は東京都内の美術館めぐりを通じて古陶磁を頻繁に鑑賞する機会に恵まれる。
次第に自分が心から感動した陶磁器を自覚しはじめ、20代から現代陶磁の原点である六古窯(ろくこよう:日本の鎌倉~室町時代に栄えた代表的な窯場。瀬戸・常滑・越前・丹波・備前・信楽のこと)のほか、桃山陶・中国と朝鮮半島の古陶磁に魅了され深い感銘を受ける。
以来、古陶磁から現代の陶磁器に関連する展覧会・美術館めぐりをささやかな趣味として続けるうちに、陶磁器をじかに見る事の素晴らしさを身をもって実感するようになる。
30代のある時期、友人のおかげで自分では分からなかった得意なことに気付かせてもらう。陶磁器のことを聞かれる側に留まらず素晴らしさを伝える側に立ってみたい。その方法を模索し始める。
そして2014年、40才になる節目の年に陶磁器の専門サイトを開設。同年、20余年の憧れであった陶芸を始める。陶磁器鑑賞で身についた知識と作陶の実体験を、かつて友人に伝えたような内容にまとめ、自分なりの言葉で書きはじめ現在に至る。
基本情報 | Profile
| 屋号 | とうろじ (開業届先:玉川税務署)2014年7月より |
|---|---|
| 業種 | 文筆業 |
| 活動拠点 | 東京都世田谷区 |
| 活動内容 | 陶磁器と陶芸に関する専門情報サイトの運営管理。管理者個人の体験に基づく記事の執筆・修正。 |
| 執筆範囲 | 陶磁器の基礎知識、陶芸技法、陶磁器の産地、釉薬の基礎知識。現代陶磁器から古陶磁(六古窯~桃山陶、中国・朝鮮陶磁の一部)、陶芸体験における試験および作陶に関する内容(画像含む)。 |
| 釉薬の販売 | 不可。当サイト掲載の釉薬は管理者個人の材料を元に調合、試験後に使用しています。譲渡および販売は行っておりません。 |
| 陶磁器の鑑定 | 不可。美術商、オークション会社、鑑定を執り行う専門家にご依頼くださいますようお願い申し上げます。 |
| 陶磁器の買取・販売 | 不可。価格の査定および買取は専門業者にお問い合わせください。当サイトで掲載した陶磁器の譲渡・販売は行っておりません。 |
掲載と引用実績
メディアへの引用・被リンク
| 総被リンク数 | 187媒体(Google Search Console調べ) |
|---|---|
| 主なリンク先 | Amebaブログ。Yahoo! JAPAN。Note.com。上位3サービスを記載 |
| 画像の掲載 | Pinterest、個人サイト・ブログなど。ユーザー側による画像保存と共有 |
お問合せ実績※ニックネームなど個人ユーザー様からのお問合せは除く
| 問合せ元 | 食品会社、工芸品取扱会社、イベント運営会社、釉薬製造業者など7社(社名非公開) |
|---|---|
| 内容 | 陶磁器に関する専門的な情報提供依頼、問合せ内容に関する確認作業、採取原土の焼成試験依頼、画像使用許可申請、釉薬精製環境の開示依頼など。 |
テレビ
| 番組名 | テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」 |
|---|---|
| 放送日時 | 2024年11月5日(火)夜8時54分 |
| 掲載内容 | 当サイト掲載の「志野を焼く共土で作った輪トチン」の画像をナレーション解説時に使用。画面下に「陶磁器お役立ち情報」のクレジット表示。 |
ご挨拶-とうろじができるまで
陶磁器お役立ち情報『とうろじ』管理者の小林俊介と申します。当サイトは2014年7月、陶磁器のことを少しでも多くの人に伝えていきたいという私個人の思いからスタートしました。2012年ごろから仕事の合間にwebの勉強を始め試行錯誤をくり返していました。
サイトを作るためにスピードを重視すれば無料ブログがもっとも簡単で手っ取り早い方法でした。でも書きたい事を書き綴ってもサービスが終われば無に帰してしまいますので、独自ドメインをとってサーバーを借りてサイトを立ち上げることにしました。
tourojiというドメイン名は陶磁器の「陶」、お茶会での茶室につづく茶庭である「露地」を合わせた『陶露地』という造語がその由来です。右も左もわからぬ状態のまま英語表記でtouroji、ドッドコムを最近よくみるという理由からtouroji.comにしようと決めました。
一時期、美味しい抹茶を点てたくて茶道を習っていたことがあります。その後お茶会に行く機会がありました。作法も中途半端で茶道具の中でも陶磁器以外はさほど関心を持てない自分でしたが、茶室に向かうまでの露地を通る瞬間がとてもすきでした。
今からどんな茶碗が見られるのか楽しみですし、お軸も何書いてあるかぜんぜん分からないのですが模様のような文字が美しいんですよ。うちのアパートはフローリングでしたから畳の感触と香りも最高です。あと釜の湯が冷める過程で部屋がしっとりとするあの湿度の心地よさ。外腰掛で待つあいだこんな何かに対する待ち遠しい心持ちになりました。
この体験をもとに、わたしのwebサイトは陶磁器の事を知りたい方がちょっとわくわくしながら見ていただけるようなコンテンツにできたらいいなと考え陶露地と名付けました。
次にヘッダー画像を作ることにしました。陶磁器の画像をただ並べるのではなく、ほのめかす程度でちょうどいいのですが何をモチーフにしていいかさっぱり分からない。小さいころから身体を動かすといい考えが浮かぶものですから、なんとなく散歩に出かけました。2014年の7月は近所の家の軒先で朝顔がたくさん咲いていました。
その年の夏も朝からうだるような暑さで、よく平茶碗でぬるめの抹茶を点ててました。そんな日常と重なったんでしょうね、朝顔の形が萩の平茶碗に似てたものですから「これだ!朝顔にしよう」と決め、一目散に帰宅して作業をはじめました。
今では10分で出来るヘッダー画像を当時は四苦八苦しながらつくりました。ただの素人ですからフリー素材探しから加工まで何時間もかけてやっとできたものを今でも使い続けています。あと「陶露地」では字面がガチガチに硬くてぎこちない。ひらがなにしたら柔和でやさしい感じになったので「とうろじ」と書き添えました。
ここからは管理者の個人的背景を含めた自己紹介になります。いくつも問い合わせをいただく中で、言葉は違えど「あなた何者?」というご質問をいただく事が多かったためです。ここからはご興味のある方だけご覧ください。陶サイトを訪れていただき誠にありがとうございます。
陶磁器を商う家に生まれ-音と香りの記憶
音と香りというと何の話か不思議におもわれてしまうかもしれませんね。わたしが物心ついたころ、陶磁器や陶芸作家と関わるときはいつも独特の音と香りがありました。ほかの何ものにも似ていないと思います。
わたしが小学生のころ、ご縁があって田村了一先生に水彩画を教わっていました。教室は階段を上がった2階にあって「よ~いドン」と友だちと競争して駆け上っては叱られていました。アトリエにはバリのお面が壁に飾られていて彫りは鋭く色の組み合わせがとても美しいのですが、日がかげってくると影ができてなんだか恐ろしかった。
油絵は中高生のお兄さんお姉さんたちがやっているいっぽうで、わたしはイニシャル・ランニングコストに優れる水彩。油絵は大人が嗜むものという9歳児の不文律を高校生まで持ち続けていました。
了一先生の評「俊ちゃんは集中力まったくない」。ですので水彩とスケッチにすぐ飽きて教室から階下に行くと、父君の耕一先生が甚兵衛を着て釉薬を合わせておられる。柄杓でかき混ぜる「じゃぶん。どっぷん。どっぷん」という音と、真っ黒に濁った釉からは土のにおいがしました。先生にどんな色になるか尋ねると「透明だよ」という内容のことを仰った。
灰色のドロドロした液体なのに先生が焼いたら透明になるんだなぁと不思議な感じがしました。音と香りの思い出です。
私が作陶を習いはじめたのは40才のときですが、灰釉を自作した時にあの音と香りに紐づいてバリのお面と紺色の甚兵衛。あの光景がわりと鮮明に目に浮かんで思わず立ちすくんだことがあります。
そしてある時は父に連れられ陶芸家の窯を見てまわりました。ピンポイントでどなたの窯だったかは覚えていませんが、益子と笠間をトヨタのコロナバンで何か所か連れて行ってもらったんですよ。
助手席に乗って窓を空けると何か所からか煙が立ちのぼっているのがみえて焦げくさい匂いが車に入ってきました。現地で焼成中の窯にいくと火の番をしているおじさん達がタバコ吸ってその窯で作ったであろう湯呑でお茶やコーヒーをすすっている。
わたしは簡単な自己紹介をしておじさんの後ろから窯を見せてもらいました。「ぱちぱち。しゅー。ばちっ」という音を立てながら薪が燃える音が聞こえました。風に煽られて煙突から出る煙は一方向に流れ、雨よけの青いサッシみたいなものが上下にバタバタと揺れていました。薪をすとんと投げ入れると窯口から煙が逆流してまたぱちぱち音を立てます。
火から離れていても暑くて具合が悪くなって水をたくさん飲みました。その時の水がやたら煙たく感じました。煙の焦げ臭さで嗅覚がいっぱいだったのだとおもいます。
後年、サイトを立ち上げた頃ですので2014年前後の話です。唐津に行ったとき田中佐次郎さんの窯を見せていただいた事があります。先生は確かミュンヘンで個展をやると仰っていましたがその前のタイミングでたまたま伺うことができました。レンタカーで山瀬の山道を走ると倒木が何本も転がっている。動かせないレベルの木があると道を変えるので予定の倍くらい時間がかかりました。
先生は「大変だったね。何日か前に台風きたから」と仰っておられました。何日かとは2日間なのか5日間なのか。わたしは放置されていた倒木ことで一瞬頭がいっぱいになりました。赤松だったら乾燥させて薪にできるのでは?とも、杉であれば陶芸用に自作の木べらで使えないかとも真剣に考えました。台風がきたのだからちょっと地すべりでも起きれば山瀬の土が採れる(窃盗です。絶対にいけません)のではとわくわくしました。
中に通していただくと窯の前に神棚があり、先生が作られたのか作風がまったく違う印象を受けましたが酒器でお酒が供えてある。登り窯は4~5段だったと思いますが全稼働する大規模な焼きはしばらくされていないとの事でした。そこでも煙のにおいがして例のぱちぱち音が聞こえてきました。
その時の音と煙の香りによって、私は山瀬にいたわけですが、30年も前の益子と笠間の山あいの光景がまたはっきりと思い出されました。佐賀県唐津市にいたのに、栃木県芳賀郡益子町と茨城県笠間市の山間にある田園風景が出てくるわけです。いただいたお水はやはり煙と混ざったあのときの香りがしました。
こうした音と香りの組合せは他にありません。そこに光景が結び付けられている。父が店を開けるときのシャッターの音と、店内に並べられた納品されたての桐箱の匂い。お客さんが抹茶碗を手でまさぐるサラサラという音、そして抹茶の香りと店名の入った包装紙のにおい。
物心ついた幼いころの記憶は断片的で曖昧ですが、音と香りに紐づいた光景が鮮烈に残っています。こうした音と香りの中で生まれ育った思い出が、わたしの陶磁器とのかかわりにおける原体験です。
父との不和-教訓として
中高生になると次第に父との折り合いが悪くなってきました。彼はわたしに商売を継がせたい強い気持ちがあったと思います。そして事あるごとに家族や親戚は皆同じような事を言い始めます。後継ぎなんだから〇〇で当たり前(義務)。〇〇だ(断定のあと理由→)なぜなら後継ぎだから。後継ぎは〇〇しかない(一択)。わたしはおおいに反発しました。
ただ、父は言い過ぎたと思ったらきちんと改めてくれました。ちょっと遠慮してしばらく後継者語録を読み上げなくなる。でも母が同じことを言ってくる。母が反省して静かになると叔父や他の誰かが同じようなことを言ってくる。
私のことを心配してくれていたとはいえ、この絶え間なく来る波状攻撃にはさすがに辟易しました。小学生のころはただうつわを眺めていたんですよ。陽にかざしてきれいだなとかつるつるした表面をなんとなしになでてました。書籍もたくさんありましたから、写真のところだけパラパラめくって見てるだけでとても楽しかったんですね。
そんな風に小学生のころと同じことをしていても、それはどんな物だ説明してみろとか、どんなところが良いと思うんだ、好きというが何で好きなんだ本当にそうなのか、商売は厳しいぞ本当にできるのか絶対にできるのか、修行先は東京か京都か、途中で辞めるなんてできないんだぞ覚悟は決まってるのか、なんていろんな大人たちが根掘り葉掘り聞いてくるんですね。
店の展示品みてても値札をみると目が曇るなんて注意される。お客さんからも、後継ぎなんだから自分の興味がない工芸品や商売のことも勉強するようにアドバイスをいただく。陶器好きの学校の先生からは、あの展覧会はみなきゃダメだろ後継ぎなんだからなんて言われる。
そして自然とすきだった陶磁器の事をわたしは高校生になった頃にはあまり好きではなくなっていました。家業と結び付けて好きになれ、詳しくなれ、後継ぎだからだ。好きであることに常に理由が求められ後継者という責務も加わるからです。
陶磁器のことを誰とも話さなくなった高校生の私はバスケットボールと音楽とゲームに夢中でした。
当時はマイケル・ジョーダンが私の神様で、あの頃のブルズは後に語り草となるはじめの三連覇を達成しはじめた時期でした。井上雄彦さんの「スラムダンク」はリアルタイムでバスケットマンを量産していましたし、音楽に詳しい友人(仲違いしちゃったんですけどね)が教えてくれたSmall Facesは今でも聴いてます。ここでの神様はスティーブ・マリオットで彼のファッションにも当時のイギリスのモッズ文化にも憧れました。ゲーム界の神様は顔も見たことないシブサワ・コウさん。コーエーの「信長の野望」シリーズは群雄伝をやりこんでいました。
うちはゲーム厳禁というわけではなかったのですが、口開けてゲームに熱中している息子の将来を憂う親心は今となればとてもありがたく感謝しています。何度か見つかると注意されて更に度を超すとゲーム没収ですので、親の就寝後にこっそりプレイするわけです。夜が明けて授業で寝て体力が回復した状態で部活を頑張るという生活を送っていました。
バスケ、音楽、ゲーム。夢中で大好きだったのは「自分で選択できる自由」があったからでもちろん大好きな理由も説明も要りません。実家にいる限り陶磁器は不自由な自分と結びついてしまって再び好きになれませんでした。
一方でバスケや音楽、ゲームは夜を徹しても問題なく寝食を忘れるくらい熱中しました。恩師に「集中力がない」と言われたのは先に述べましたが、正しくは興味がないから当然集中できない。好きなことには強い関心とこだわり、興味と情熱を抱きます。皆さんと同じです。
そんな高校生の時分、父に言われたことがあります。お前はうちの商売に向かないという内容でした。美術商は自分のこだわりが強すぎると商品が偏ります。もちろんそうした感性で成功されている経営者もたくさんおられます。
ですが父は私の事を「こだわりが強くわがままで自分本位。俺はお客さんが求めたものを仕入れる。自分の好みは好みだが、お客さんの必要なものを優先する。俊介はバランス感覚が乏しくそれが出来ないからウチに向かない」という内容のことをその後もたびたび言っていました。
初めていわれたときは腹が立ったわけですが、今となっては父の言葉がとてもよくわかり腑に落ちてきたのです。はじめは商売には向かない、今のままじゃ失敗するぞという否定的なところだけに焦点をあてて腹を立てていただけなんですよね。
別の見方をすれば、自分が寝食を忘れるくらいの熱量で出来る事をやればいい。美術商は自分にはできないと納得できたのだから、自分ができる事を考えた方が楽しいじゃないですか。父からの言葉に対して始めは怒りと反発を。回りまわって今では大切な教訓となりました。
上京-古陶磁との出会い
上京した1993年ごろはネットもgoogleもありませんから、美術館に行くと置いてあるパンフレット(「〇〇展@〇〇美術館」)が唯一の道標でした。おおむね構成は表面に会期、入場料、開館時間などが小さく箇条書きで、展覧会の目玉の画像大き目でどーん!裏面はメインに続く名脇役達の分割画像と説明文。下の方に関連の催し情報と地図。
こういうパンフレットを何枚か持ち帰って気が向いたらひとりで観に行くんですね。ひとり暮らしをはじめたのは世田谷区の羽根木という所で、近隣には五島美術館、静嘉堂文庫があり自転車でよく行きました。
五島美術館では古備前の徳利との出会いが最も印象深いものです。初めてみた時は造りがとても自然で美しいけれどなにせ地味だなぁと思いました。それまで自分が見たことのある作品は現代作家の陶磁器が多かったんですね。伊部であれば金重陶陽先生や中村六郎先生。こうした現代陶芸家の原初ともいえる古備前は書籍の写真でみた程度で、実物をみたことがそれまで一度もなかったのです。
古備前の徳利の美しさよりも、まずは他に展示されていた峰紅葉や「わらや」に目を奪われていました。有名な茶碗ですしやはり実物見るの初めてでものすごく衝撃的だったんですよ。破れ袋も底以外のほぼ360度見れますからね、桃山現物すげーってなってました。
でも何度も足を運ぶうちに地味な古備前の徳利ばかり観に行ってる。いつしかこんな口造りだったなと絵なんか描いてしまっている。茶道具展なのにこの酒器が展示されてるか電話で確認してから(煩わせてしまって申し訳ありませんでした)観に行っている。こうして現代陶芸から古陶磁への関心が高まっていきました。
また静嘉堂文庫美術館は岡本にあった頃よく行きましたが、当初のお目当てはやはり国宝の稲葉天目です。日本の国宝が中国からの渡来品って面白いですよね。陶磁器の国宝は中国発の作がいくつもあります。稲葉天目をはじめて直にみた時は見込みと対照的な外側の黒色が渋くて感心しましたし、想像よりもずっと小ぶりな茶碗で驚きました。ここではいつしか青磁鼎形香炉が来館目的になっていました。
この香炉も天目同様に南宋時代の作ですが、形がとても柔らかくて照明が貫入に差し込んだ発色の美しさに徐々に魅入られていきました。はじめの印象は、カッチリした造形が多い官窯にしては丸みのある形がいいなぁと。そして何度も見るうちに緑の光彩にやられてしまいました。現代作家では清水卯一先生の青磁をみたとき感動しましたが、先生もこの香炉のような南宋時代の青磁をお手本の一つになさっていたのではと思います。
こんなふうに美術館にいくと収蔵されている作品の中で自分の好みがだんだん分かってきます。はじめは知名度の高いその美術館の目玉を見に行くのですが、自然と個人的愛着のある作品がでてくるのが面白い。もうその一品が展示されていたら「久しぶりに会いに行こうか」ってもはや旧友のような感覚すらあります。
上京してからは誰にも干渉されずひとりで美術館や展覧会に足を運びました。誰に気兼ねするでもなく自分が見たいものをみたい時に自由に選択できる。こんな当たり前のことがなかなかできなかった状態から解放され、20代半ばには陶磁器を自然に好きな状態に戻りつつありました。
友人たちが気付かせてくれた-自分の強み!?
こうした生活を続けていると一般の人よりも陶磁器のことを少しだけ知っている状態になっていました。実家でのネガティブな感覚も薄れていたので、30代になるとまわりの友人にも陶磁器がすきな事や美術館にいった話も普通にしていました。
次第に友人や知人から陶磁器について聞かれることが増えてきました。「益子焼ってどんなの」「この前の古びた皿さ、現代ものってどこで見分けたの」「木村一郎ってどういう作家?」。質問はいつも突発的でした。分からないものは「ごめん。全く分からない」と答えておわり。少しでもわかる事はなるべくわかりやすい言葉で丁寧に話しました。どこで勉強したんだ詳しいなと驚く友人もいました。
ただ自分では特別なことをしているつもりは全くありませんでした。子どものころから日常的に見てきて別段意識することなく覚えてきたことを話しているだけです。東京に来てからは美術館めぐりや窯場いって物は普通に見てますし。陶磁器については「ちょっとこれ聞いてみるか」という存在になっていたかもしれません。
ほどなく「お前の話聞いてから出光美術館いってみた。展示は良かったけど陶片室何が面白いんだ?」とか、別の友人は「酒飲みなのに勿体ないとか言ってたからまともなの買ったぞ」と斑唐津の盃の画像を見せてもらいました。こういうことが何度かあるのですがとにかく嬉しかったんですよね。
このように友人に聞かれて答えると彼らがなんらかの行動をしはじめるのです。なんの関心もなかったやつらが出光行ったりぐい呑み買ったりするわけですよ。この頃になると私は大それたことを考え始めていました。何らかのきっかけさえ与えることができれば友人たちのような陶磁器ファンが増えるのでは!?と。
この伝える行為を身近な人に限定せず、インターネット上で不特定多数の人向けにやってみたいなと本気で考えはじめました。そこから2年くらいたってやっとのことでウェブサイトができたのです。勉強だけ続けても埒が明かないものですから、えいってサイト始めちゃったんですよ。
まず日本語なんだからへたくそでも文章は書ける。webはやりながら少しづつ覚えればいい。本見てても退屈だし。友人に伝えたような内容で書けばいい。記事タイトルはよく聞かれた内容にしよう…などなど。
そしてサイトを立ち上げてからは実際に陶芸を習い始めました。これも体験してみないと全く分からない事がたくさんあって驚きました。できあがった作品ばかり見てたもんですから自分で作るのが新鮮でとても楽しかったです。この教室での作陶体験はかけがえのない経験となりました。これをサイトで伝えたいというと先生は喜んで賛同して下さった。
こうして友達と先生のおかげで書きたいことをはじめて記事にすることが出来たのです。
最後にこのサイトで何を伝えたいのかを書かせてください。もともと知識のある人はたくさんいらっしゃいます。そうした方々は自分で陶磁器を使い、美術館に行き、思い思いの楽しみ方を既になさっているはずです。私がしたいことはまだ何の興味もない方々に陶磁器に興味をもつきっかけになりたい。
友人がうつわに関心を持つようになったあの喜びを少しでも広めていく一助になればこんな嬉しいことはありません。そんな思いでこのサイトを運営しています。
webの完全なるど素人からスタートしたことが何よりもありがたい経験となりました。行き詰ったり慢心したりしたときの自戒の言葉は『2014年の7月を思い出せ』長々とお付き合いいただきありがとうございました。小林俊介
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陶磁器の真贋鑑定・価格査定 鑑定・査定をご希望の方は、美術商・オークション会社・専門鑑定機関にご依頼ください。
釉薬の販売・譲渡 当サイト掲載の釉薬は管理者個人が調合・試験したものです。販売・譲渡は行っておりません。
陶磁器の買取・販売 当サイトで紹介した陶磁器の買取・販売・価格査定には応じておりません。専門業者にお問い合わせください。
著作権
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