楽茶碗の作り方2 | 成形
楽茶碗の成形:水分量について
今回は筒形から土を動かして成形する工程です。ここで腰の立ち上げを行い、全体の形を決めていきます。ムロで1~2日間保管した作品を手に取り、全体の水分量が均一になっていることを確認します。
水分量の目安は作品に軽く爪を立て、しっかり跡がつく柔らかさが理想です。5~7日経過した場合は水分が抜けていますので、スポンジで全体を加水して、濡れタオルをかけて30分ほど置いておけばこの状態になります。
用意するものは加水用のスポンジ・洗面器、底を締める叩き道具、口縁部を削るヘラが必要です。叩き道具は直径3~5cmで平らに叩けるもので、土離れのよい木製がお勧めです。
楽茶碗の成形方法については、下記に文章で補足させていただきます。
成形の手順1:底を突き出す
右利きの場合:左手のひらで茶碗を持って底を支え、右手で叩き道具を持ちます。叩き道具で底の中心を押して突き出していきます。
腰から下の形はこの段階であらかた決まります。たとえば半筒型ならば腰の角度はそこまで必要ありません。また椀形(わんなり)にするならば適宜角度をつけておきます。今回は3つの茶碗を作りますので、半筒型を2椀(粗めの混合土×2)、椀形を1椀(きれいに混ぜた土×1)という構成で作ります。
動画の作品では椀形を想定しています。この1椀のみの録画となりますが何卒ご了承下さい。
左手ですっぽり茶碗を持って、図のように底を押します。左手のひらまで徐々に底をでっぱらせていきます。粘土が伸びるためひびが入りますが、手順3で修正します。押す力を入れすぎると底が抜けますので、左手のひらに作品を収めながら、右手で少しずつ押し出していきます。
成形の手順2:腰の立ち上げ
次は腰の部分を立ち上げていきます。この作業で腰の形ができて、外側に向かって力強い「張り」が出ます。楽茶碗に限らず、志野や瀬戸黒などに見られる腰作りでもあります。なお半筒型の2椀は腰の張りを出し、椀形の1椀は張りをほとんど持たせずに作ります。
これは茶碗を横にした断面図です。赤丸の部分に対して矢印の方向で力を加えます。左手の親指で内側を押して、右手の指で外側に押し上げていきます。その結果、腰の位置が高くなって外側に張りが出るうえ、見込み側の粘土がしっかり締まります。
逆に高台側の粘土は外に広がってさらにひびが入ってきます。しかし手順3で一気にひびを埋めますので、この段階でも高台側のひびは問題ありません。全面にわたって腰のラインと張りをきっちり作り込んでおきます。次の手順でひびを埋めて粘土が縮むと、腰の張りも一回り小さくなります。
成形の手順3:底のひびを埋める
腰が出来あがったら作品を逆さまにします。口縁部が傷まないよう柔らかい敷物の上に置くとよいです。スポンジで腰から底までまんべんなく加水します。
動画では録画の都合により濡らしてすぐに締めています。ですが実際は加水したら濡れタオルをかぶせ、10分~30分ほど置いておくと、水が浸透してひび埋め作業がはかどります。
腰回りから粘土を締めはじめ、そこから底の中心に向かって土を締めていきます。これで高台側のひびも埋まるでしょう。
成形の手順4:口縁部を切って調整する
腰が立ち上がったぶん、作品全体が高くなっています。そこで当初の高さに合わせて、余分な口縁部をカットします。口縁が垂直な作りであれば、なめし革でふちを慣らしておきます。この段階で腰の角度・胴・口縁・底の形ができますので、全体の形を微調整しておきましょう。
ちなみに今回の作品は、口縁部が内側にすぼまる「姥口(うばぐち)」にします。このまま口縁を内側に折ると、粘土が厚いので少し削ります。口縁の内側を斜め45度の角度で削れば、土が減ったぶん内側に丸めやすくなりますね。丸めたあとは外側のひびに注意します。
まだ口縁部の粘土も柔らかいので、力を入れずにそっと削ります。口縁の内側にヘラ・外側に指をそえて削れば、削りによるひびが入りづらいので安全です。
成形の手順5:外観チェック
最後に再度底をしめて成形作業は終わります。叩き道具で中心部を押さえつけ、横から見て作品が水平か確認します。もし斜めになっていたら、叩き道具で底を押さえながら、本体を動かして水平にします。
左のイメージ図は横から見ると傾いていますね。底を押さえたまま、低い方の腰を持って上に引き上げて調整します。もしくは高いところを上から下に押して調整してもいいです。これは底から腰の角度とバランスをみて、上げるか下げるか判断します。
作品を手回しロクロにのせ、ゆっくり回してみると分かりやすいですね。平行になっていれば完了です!
【参考】上が半筒型:口縁を内部に丸め、側面は流線型、腰の張りを持たせたもの。下が椀形:口縁の丸みは少なく、側面はほぼ垂直、腰の張りもほとんどない。ともに型おこしの筒形から成形。
- 型おこしの作業後 「直径11cm、高さ8cm、底の厚さ2cm。そして側面の厚さは8mm」
- 今回の作業後(椀形) 「直径11cm、高さ8.8cm、底の厚さ 約1.5cm。側面の厚さは8mm」
口縁部をカットしたものの、今回の作業で高さが出ました。そして底の厚さが5mmほど薄くなっています。これ以上底が薄くなるといずれ穴があきそうです(笑)
さて、サイトでは成形と削りを分けて解説していきます。作業量がかなりあるので本成形と削りを分けさせていただきました。連続して出来る方は削りの工程に進んでいただければと思います。
なお粘土が柔らかく削りにくい場合は、ムロに入れて2~5日ほど乾燥させます。5日以上乾燥させる場合はムロに保湿用のスポンジを入れ、それ未満であればスポンジは必要ありません。均一な湿度を保ちながら乾かします。
なお楽茶碗は見込みの削り・高台の削り出しがメインになります。あとは高台周辺を削りますが、表側の腰から上はさほど削りません。したがって表面のひびはこの段階で無くしておくとよいでしょう。