原土のテスト:結果検証
ここで各テストピースについて結果検証を行います。ぐい呑み型のテストピースが5個、板状のテストピースが16枚です。本焼成時間は火入れから9時間で目標温度に達して窯の電源をoffしました。
【焼成条件】
温度:1250℃ ねらし焚き(最高温度をキープする焚き方)実施せず
※1250℃に達した時点で電気窯の出力off。その後24h放置して徐冷。
焼成雰囲気:酸化焼成。電気窯にて計9h焼成。
ぐい呑み型テストピース
釉薬はすべて灰釉1を一度だけ施釉。
左上からテストピース「O」100%の土、右がテストピース「J」100%。
左下から右へ:「J」50%・「J」30%・「J」80%(信楽ロット土とブレンド)
名称 | 耐火度:1250℃ | 収縮率 | 釉の発色(灰釉1) |
---|---|---|---|
「O」100% | ○:(ひび小) | 15.8% ◎ | ◎ |
「J」100% | ×:水漏れあり(ひび大) | 29.4% × | ×:素地に吸収された? |
「J」80% | ×:水漏れあり(ひび大) | 27.2% × | ○:やや釉の厚さがない |
「J」50% | ◎ | 22.4% ○ | ◎ |
「J」30% | ◎ | 17.0% ◎ | ◎ |
収縮率は成形して乾燥させた大きさから、本焼成後の大きさで算出。素焼き終了時点での計測はせず。例:「O」100%の場合:口縁の径:7cmから5.9cmに収縮(15.8%)。
「O」100%は単味で問題ないでしょう。鉄分を多く含んだ土のようで黒く発色しています。釉も安定した状態で土もしっかり焼き締まっています。後述する板状のピースでも灰釉1・灰釉2・乳濁灰釉(藁灰)それぞれ問題ないと判断しました。乳濁灰釉で何か作りたいと思います。
「J」30%と50%は信楽の長石粒と「J」土の鉄分の黒い斑点がそれぞれ出ています。鉄分がほどよく中和され色合い的に抹茶碗が良いかもしれません。土の収縮率は「J」50%では22%と高めですがいけそうです。「J」30%は色合い・収縮率ともに良好です。
この段階で作れる・作れない土を切り分けて「ダメな組合せを消去」していきます。水漏れがひどい「J」100%と80%に灰釉1(一度がけ)をあきらめます。「J」は混ぜ土で少量使いますが、残りの大部分は天日干しスペースに戻します。
板状のテストピース
左から。上段テストピース名「O」灰釉1・灰釉2・乳濁灰釉で試験。メモの数字は施釉回数。
下段テストピース「J」灰釉1・灰釉2・乳濁灰釉・黄瀬戸釉・織部釉。メモの数字は施釉回数。
見づらい箇所はご容赦ください。釉薬が複数になるので表は割愛させていただきます。
結果として「O」は灰釉1・灰釉2・乳濁灰釉すべて良好(釉の一度がけ・二度がけともにOK)。
「J」の一度がけは全滅。二度がけでも黄瀬戸釉は色が出ず、織部釉は縮れてしまってだめでした。土との相性が悪いので「J」は灰釉1・灰釉2・乳濁灰の二度がけを残して(ただしひびが出るので難あり)あとはあきらめます。
なお施釉回数は二度がけの方が発色がよく、釉が流れてピースが貼りつくこともありませんでした。一度がけでは釉が薄いので土味が分かりやすく、二度がけは釉の濃淡が出ていました。
難しい・・・結論は?
文章だと難しいですね!実際は簡単な消去作業です。
- 問題なし:「O」は土・釉薬ともに問題なし。「J」50%と30%も灰釉1ならば問題なし。
- 難あり:「J」100%で釉は2度がけ(灰釉1・灰釉2・乳濁灰釉のみ)。※ただしひびが入りやすい
このように複数のテストピースと釉薬によって様々なことが推測できます。もちろん焼いてみないと結果は分かりませんが、ある程度の予想をたてるにはこのようなテスト焼成が有効です。