原土の乾燥と保存
原土(げんど)を日にさらす
採取した原土はまず天日干しします。特に掘り出されるまで地中にあった土は、空気に触れることでさまざまな変化が起こります。
たとえば採取した時は灰色の土が、乾いてから日を追うごとに褐色になっていったことがあります。白っぽい土が乾燥してから黄土のようになったものもあります。これは水で粘土に戻しても変化後の色のままです。
画像は灰色から褐色に変わった原土です。
粘土に含まれる微量元素が、乾燥する過程で何らかの反応を起こしているのです。質についてもはじめは手荒れてしまう土が、天日干しした後にはおおむね問題ない粘土になります。
これは外気に晒されて土に含まれるアルカリ分が抜けたためです。また成分がこなれて可塑性が増すこともあります。
土がアルカリ性だとなぜ困るのか
ちなみにアルカリ分は身近な例でいうと石鹸に含まれています。手がきれいになるのだから良いのかな?と思っていたのですが、実際に刺激が強いものは手荒れするうえ、カサカサに乾燥しますので注意が必要です。
また、原土に含まれるアルカリはもう1つ困った事を引き起こします。それは粘土の強度を下げてしまうことです。地中にあった粘土は空気に触れる機会に乏しく、日光を浴びることもありません。そのためアルカリ性のまま地中に眠っています。
これを掘り出してすぐ使うと、アルカリ分によって作品にひびが入りやすくなります。600℃ほどの低温帯で素焼きしても土はバサバサ、1,200℃の高温帯で焼けば跡形もなく熔けてしまうこともあります。このアルカリ分をなくすためには、地中にあった時と逆のことをしてあげればよいです。
つまり空気に触れされ太陽光を浴びせるということです。簡単にいえば野ざらしにして天日干しすることでアルカリ分が抜けて行きます。
このように原土を乾燥させると粘土に良い変化が起こり、扱いやすい土に変わっていきます。外気にさらす期間は土の成分によりますので一概に言えません。画像の土は3週間ほどで完全に乾燥した状態のものをテストピースにしています。
ただ、3週間ほどでは不十分な可能性が高いですね。ずっと放置できる環境があれば数か月~1年以上が望ましいと思います。
なお乾燥した原土を管理できるよう、日付と採取場所を記しておくと後々よいでしょう。そして外気に晒しながら、一定の期間ごとにテスト焼成するしかありません。手間はかかりますが間違いない唯一の方法なので、長い目で見たら近道と考えます。
いずれ独特の土味を持った作品ができあがります。原土の乾燥作業は、その楽しみに向かう最初のステップです。