何を作るか?販売品への要望と不満が大切
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何を作るか?販売品への要望と不満が大切

 

 販売品に対しての不満??

自分で陶芸をするさいに何を作るかは思案のしどころです。実際に自分で作るわけですから、日々使える日用品かもしれませんし、飾って楽しむ作品でもよいわけです。

 

作陶をする方々に「どんな作品を作りたいですか?」と聞くと、異口同音に「販売店では手に入らないもの」という答えが返ってきます。

 

たしかに私の場合、質は到底求められませんが「どこにも売ってないオリジナル」という要素は魅力的です。

 

知人によれば「縄文土器のような質感のワイングラス」とか「青磁釉をかけたタジン鍋」など独創的な意見もありました(笑)。

 

実用性はさておき市場で売っていないという、ある種の「要望・不満」がヒントになると思います。

 

これは人によって違うはずですが、私ならば焼き締めでオリジナルのビアマグを自作したい(要望)、高くて買えないぐい呑み(一種の不満)を自分なりに写して作るなど、これらの要望が土をこねる大きな理由のひとつです。

 

写しは自分の理想作品に近づこうとハードルが高くなりますが、作りと技法のよい勉強になります。

 

また、現在サイトを運営していますが「原土はどんな風に粘土にするか知りたい(要望)」とか「銀継ぎ(漆を使った修繕)の作業内容をもっと詳しく知りたかった(不満)」がありました。

 

そこで知りたかったことを実際にやってみて、失敗しやすいところや作業の細かい内容を自分なりにまとめています。

 

また、経験者からすれば「原土?はたきか水簸(すいひ)で戻すに決まってるでしょ」ということになります。

 

しかし私にとっては「はたき土を粘土に戻すのに水分が多いとこんなにやりづらいのか」「手荒れする原土は天日干しするといくぶん改善するな」とか「小石(風化した天然長石・珪石の粒)って角が丸いんだ!」と発見の連続です。

 

こうした体験が誰かの役に立てばいいのです。これは「知りたい!」「知りたかったのに」という要望と不満がそもそものはじまりです。

 

つまり要望や不満は決して否定的なことではなく、むしろ実際に新しいことを始めるきっかけ・建設的な意見とも言えます。

 

陶芸から脱線しますがビジネス(販売促進・商品開発)や実生活(日用品の工夫改善・便利グッズの発案)など、広範囲にわたって要望と不満は大切な要素です。

 

したがって、陶芸作品においても販売品に対する要望や不満をもとに何を作るか決めるのが良いと考えます。

 

 プロの思考から学ぶ

プロの陶芸家に話を聞いても、やはり「見たこともない作品=独自性のある作品を創りたい」という答えが多いです。ある陶芸家から修業時代に一日100個の茶碗をロクロ引きしたと伺いました。

 

手伝いと睡眠時間を除けば自由になる時間は一日に2時間ほど。口径15cm・高さ10cmの茶碗を作っては土桶にもどす作業をひたすら繰り返したそうです。これは単純計算で一個あたり1分ちょっとで引くペースです。本番の引きでも成形から切り離しまでは、5分もかからないといいます。

 

ただし最初の一年は一椀に10分~20分と時間をかけて、基礎的なことからじっくり取り組んだそうです。師匠に遅いと叱られても、兄弟子に急げと煽られても、その姿勢を崩しませんでした。

 

「自分だと分かってもらえる形にしたい」「もっと上手くなりたい」という要望・不満がその原動力といえます。作家にとっては「あの1年が土台」なのです。

 

この作家はもともと短時間でロクロ引きできた方ですが、修業時代にあえて過去の自分より「ゆっくりと丁寧に引く」事で、その後は思ったように成形できるようになり、自然にスピードも上がったといいます。早く引かなければという意識をしなくても身体が動くのでしょう。

 

 つまづいたら初心にかえる

いくつか作品を作るうちに、何となく惰性で作っている自分に気付きます。つい土を締めるのが疎かになっていたり、削りも施釉も適当になっていることがあります。

 

多少の慣れと作陶の早さを意識するあまり、最初は出来ていたことが抜けていきます。

 

これは作品にすぐ出ますので、乾燥したらひびが入った、焼いたら割れた、思ったような形にならないという事になります。仮にこういう状態になった場合、陶芸を始めた頃に覚えたことを丁寧にやり直すとガラッと改善することが多いです。

 

たとえば粘土を見ながら意識して土を締めていくだけでも全然違います。または作品の上部の成形が上手くいかないとき、底の径を決めて土台を叩きしめるだけで成形しやすくなります。というのも粘土はつながっていますからね、ひびも入りづらくしっかりと成形できるはずです。

 

その感覚を取り戻すと、2回目からは自動的にスピードも上がってきます。

 

つまり「質」を高める内容に終始するうち熟練度が上がって「勝手にスピードが上がる」ということです。これは陶芸に限らず身のまわりのあらゆる事に共通しています。

 

たとえば私がサラリーマンの頃の話ですが、新入社員の時分はパソコンも営業スキルも大変残念な内容でした。ですが何年も必死にやっているうちに、以前ほどの労力をかけずに「質」「スピード」ともに向上していきます。

 

そして慣れてケアレスミスをしたら、初心に帰って精度を上げて修正するわけです。

 

もちろん私は陶芸家の技巧的なことは絶対に真似できませんが、その考え方は大いに真似すべきだと思っています。すなわち要望・不満と基礎固めが最終的に近道になると考えます。

 

まずは販売品(もしくは自分の作品)に対して要望と不満をしっかり持つことです。それに対して何を作るか決めて、はじめは時間をかけて作陶の「質」を高めることに専念します。そして、その後は「勝手にスピードが上がってくる」のです。

 

市場にはない皆さんにしかできないオリジナル作品をつくってみてください。

 

 

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