粘土を寝かせると良い理由
粘土を貯蔵すると
水分を含んだ粘土の中ではどのようなことが起こるのでしょうか。よく言われるのは「しばらく寝かす(貯蔵しておく)と粘りが出て成形しやすくなる」ということです。水を含ませてもひびが入りやすく、成形しづらい粘土も数か月寝かせると改善します。実際に体験した方もたくさんいると思います。
これは粘土の中にいる微生物すなわちバクテリアのおかげです。たとえばパンや味噌もバクテリアの種類は違えど微生物の恩恵を受けています。発酵するわけですから、ある意味その粘土は腐っていくともいえます。(※微生物は焼成の過程で全てなくなるので衛生上の問題はありません)
バクテリアによって粘土粒子の分解が促進されます。その結果、粒子が細かくなることで粘土はより柔らかく粘土本来の粘性が増し、粒子が細かくなって水分が浸透することで、粘土はより扱いやすい可塑性のある粘土となります。
このように粘土の中でバクテリアを増やして粘性を高めるには寝かしておくことが必要です。ちなみに市販されている一般的な粘土は、何種類もの土を混ぜて調整されているため、可塑性もあって扱いやすい粘土です。しかし採取した原土の場合は必ず寝かす期間が必要になってきます。
原土を寝かす方法
別ページ「原土の乾燥と保存」「はたき土とは」と重複する内容もありますがまとめます。
採取した原土は一度天日干しをします。ここで余分なアルカリ成分が抜けるので、手荒れしにくく作品の仕上がりもよくなります。アルカリ分が強いと焼成したときに亀裂やキズができやすくなるため、しっかりと外気に晒して乾燥させます。
次に乾燥した原土を砕いて水を混ぜます(参考ページ : はたき土とは)。粘土状に戻ったら荒練りをして袋に入れて貯蔵します。乾燥しないようにビニール袋で密閉する場合と、粘土を濡れた布でくるんでフタ付きのバケツに入れておく場合があります。
しばらく使わない場合は前者を、頻繁に使う場合は後者の方法で寝かしています。バケツで保存するケースでは布が乾いてきたら水を加えて再度ふたをしておきます。どちらの方法も空気は多少入るので、適度に空気に触れさせながら粘土を育てるといった感覚です。
ちなみに粘土の表面と内部では酸素量も違います。空気を必要とする好気性のバクテリアと、空気をほぼ必要としない嫌気性のバクテリアが粘土を育てます。
なお、これらの粘土を使う際は水分が足りなければ加水し、よく練って水分量を均一にすることが大切です。よく練ることで成分もより均一化され、手の皮脂もバクテリアの養分となります。普段は乾燥していないことだけ確認すれば十分だと思います。
寝かせた粘土の良さ
よく寝かされた粘土は成形がしやすいだけではなく、粒子の目が細かくなることで収縮率が少なくなる傾向があります。たとえば焼くと20%~30%以上も縮む原土があったとします。
これでは何とか成形できても、焼いた際のひびや割れは覚悟した方がよいでしょう。しかし寝かすことで収縮率が15%程度になれば十分実用に耐える粘土となります。
このように粘土を寝かす利点としては
- 粘りが増して成形しやすくなる
- 収縮率が少なくなってトラブルが減る とまとめられます。