陶芸7つ道具
陶芸をするのに必要な道具はそこまで多くありません。もちろん陶芸教室や窯元での体験作陶では設備が整っていますが、自宅でも製作は可能です。凝りだしたらキリがありませんが、必要最低限度の道具で十分に作陶できます。
粘土や釉薬は通販で買えるほか自己調達することも可能です。しかし窯は用意できない場合がほとんどですので、窯がある陶芸教室や窯の所有者に相談するしかないでしょう。私は窯がないので都内の陶芸教室に通っています。自宅で作陶をすることもあれば、教室で作ってそのまま焼かせてもらっています。
窯を借りる場合、粘土の耐火度や釉薬との相性・発色がわかれば特に問題ありません。たとえば天然の粘土(原土)のように何も分からない土の場合は、窯を貸す・焼く側としても困ってしまいます。その場合は費用をかけてでもテスト焼成から相談するか、窯の所有者が焼成済みの実績がある粘土を購入します。
さて、粘土の性質がわかればあとは道具を揃えて自宅でも作陶できます。
1.作業台(板でも可)
作業台が理想ですが予算・設置スペースの問題があります。台がない場合は大小2種類の木製板があればまずは事足ります。
大は1m四方のベニヤ板で1cm以上の厚さが必要です。これは粘土をもむための板で厚ければ厚いほど揉んだときに安定します。薄目の板では力を入れて粘土をもむと動いてしまうので、板に両膝をつきながら大まかな荒練り、空気を抜く菊練りをします。膝をつくスペースも考慮すれば1m未満の板だと作業しづらいです。
小さい板(亀板:かめいた)は作品によりますが30cm四方の板、もしくは直径30cmの丸板でよいでしょう。これは作業をしたり、作品を載せるための板です。したがって作りながら持ち上げたり回して見れるサイズの板を用意します。乾燥時には作品を載せるので、厚さはやはり1cm以上のものが丈夫でよいです。
大小ともに土離れのよい松材以外にも、土が張りつかなければどのような板でもよいです。
2.洗面器セット(洗面器・スポンジ・タオル)
成形する際に粘土は適切な水分量が必要です。粘土に水を差したり手についた粘土を落とすために使います。スポンジは粘土にかける水分量を調節できます。たとえばほんの少し湿らせたい時にかたく絞ったスポンジが役に立ちます。また、余分な釉薬をふき取るなど何かと重宝します。
タオルは掃除だけではなく粘土の保湿に使えます。かたく絞ったタオルを作品にかけておけば、作業を中断しても大丈夫です。やや乾燥気味の粘土にかけて時間をおけば、均一に水分を吸って成形しやすくなります。
3.ヘラ
ヘラは成形と削りで使います。数種類のヘラをセット販売しているもので十分だと思います。ただ、「成形」用の牛ベラやコテなどは手で成形すれば事足りますので、最低限度必要なのは「削り」用のヘラです。うつわの表面や見込を削る中型サイズのもの、高台内を削る小型サイズのものがあればよいでしょう。
上:うつわを削るヘラ。両端に形状の違うものがついている。下:高台削りのヘラ。
あとは必須ではありませんが先が尖った「彫り」用のヘラ。これは割り箸を削っても代用できます。いずれにせよヘラは消耗品と考えて、作品のためにも削れなくなったら交換することになります。
4.切り弓(切り糸)
切り弓は扇状の取手に針金を張った道具です。これで作品の凸凹になった口縁を切り落とせます。ロクロで回しながら余分な土を落とすことで切り口が整います。
なお切り弓と似ていますが、切り糸はワイヤーの両端に取手のついた道具で、板に乗った粘土を切り離す時などに使います。ワイヤーは粘土がきれいに切れますが、一般的な紐や糸でも代用できます。粘土を切り離せるものであればよいです。
また、両端ではなく片方だけ取手のついたものをシッピキといいます。よく電動ロクロでシッピキを使うのを見ます。ロクロに載った作品の底を切り離す時、ロクロを回しながら作品に糸を数cm食い込ませます。そして取手を一方向に引くと、作品がきれいに切り離せます。これも普通の紐や糸で代用可能です。
5.なめし革
これは作品のふちを平らにするために使います。鹿革が主に使われますが水を吸って表面が滑らかなものであれば問題ありません。成形の最終段階で使うので作業中は水に浸けておきます。
右利きであればこのように持ちます。ロクロを回しながら、革のピンと張った部分で口縁部をきれいに整えます。指で代用できないこともありませんが・・・仕上りがきれいなのでなめし革は必須と考えます。
6.ロクロ
ロクロには電動・手・蹴(足で使う)の3つに分類できます。ロクロがなくても作品は作れますが、口縁のなめしや表面の削りの時にあると便利です。私は手回しロクロしかありませんが、とりあえず成形と削りはこれで十分だと思います。
手ロクロの大きさについては最低でも直径25cmは欲しいです。なぜならば径が小さいと手で回しても作品を触っているうちにすぐ止まってしまうからです。ベアリングの性能も大切ですが、遠心力と慣性をいかせるサイズは45cmくらいでしょう。このサイズになれば一度回すとある程度回り続けてくれます。
7.筆(または刷毛)
用途としては掃除用・施釉用・絵付用の3つに大別できます。必ず筆を使うのは成形後に表面の細かい粘土くずを取るときです。大きさは作品の隅々まで入るサイズと硬さがあればきれいにゴミが取れます。
施釉用の筆は太いものと細いもの2種類あれば初めは問題ないでしょう。施釉は作品を直接浸す「ズブ掛け」が一般的ですが、釉薬の量を減らして薄く塗りたいときなどに筆塗りします。施釉できる幅であれば刷毛でも問題ありません。
絵付筆は線の太さに応じて揃えることになります。全て兼用で細・中の2本とペンキ用の刷毛1本でとりあえず間に合います。足りないものは適宜そろえることになります。
まずは粘土に触れてみるのがよいでしょう。無心でものを作る楽しさから次第にステップアップしていけばよいと思います。