素焼きの目的
素焼きをすると何が起こる?
作品ができるなかで素焼きは本焼きする前の仮焼をする工程です。施釉する場合は素焼をするのが一般的です。乾燥させた粘土をおおむね600℃~800℃の低火度で焼きます。
素焼きすると何が起こるか把握すれば、おのずとその目的がわかります。そしてつくりたい作品に応じて素焼きをするか否か、するならば温度帯はどうするか決めていきます。
素焼きをすると以下のことが起こります。
- 作品中の水分が蒸発する
- 粘土に含まれる不純物が燃える
- 粘土自体が焼き締まる
これらを個別にみていきましょう。
1.水分の蒸発
成形した粘土を約1週間乾燥させた場合でも水分は20%ほど残っています。水分が作品の中に閉じ込められると水蒸気爆発をおこします。そこで釉薬で表面を覆う前に、水分量が数%になるまで焼いておきます。
水分量が減れば焼いて破損するリスクが減ると同時に吸水性が高まり釉薬をしっかり吸い込みます。実際に水で濡れた指をつけると、水をよく吸うので指がうつわに貼りつくような感触があります。
水の沸点は100℃ですので、作品の温度が100℃を超えると表面の水分から蒸発しはじめます。作品の内部に熱が伝わって水分が蒸発するのは、窯の温度がおよそ400℃あたりでしょう。
2.不純物の燃焼
窯の温度が400℃を超えると水分が抜けて不純物が燃え始めます。市販の粘土は不純物(=有機物)が少ないですが、採取した原土には植物の葉や根のような有機物が含まれます。窯が400℃を超えるとこれらが燃えるにおいがしてきます。
不純物が燃えると作品にすすが付きます。これは700℃くらいでほとんど取れるので、本焼きの温度では問題はありません。それよりも粘土から不純物がなくなるメリット・デメリットがそれぞれ重要です。
すなわち不純物がなくなると粘土の焼き色が安定します。たとえば白く焼ける粘土は純粋な白色に近づきます。これはメリットである一方で作品によっては焼き色に変化がないといったデメリットにもなります。
したがって粘土単体の色と安定性を目指すならば700~800℃くらいの温度で不純物を焼き尽くしておきます。逆に焼き味の変化を求めるならば、500℃程度で素焼きをやめて不純物を多少残しておくという選択もありえます。
不純物を残して施釉すると、変化に富んだ焼味が得られることもあれば、意図しない残念な焼きあがりにもなりえます。
こうした要因から500℃で仕上げる場合や800℃まで焼くケースなど、温度設定は意図する作品によって変わります。
3.粘土が焼き締まる
水分と不純物が抜けて粘土が焼き締まることで固くなります。適度な強度をえられるので作品の保管には役立ちます。たとえば素焼きせず作品を置いておくと、ちょっとしたことで跡がついたり、場合によってはあっさり欠けてしまうこともあるからです。
また、焼き締まれば素地の収縮も当然起こってきます。素焼をせず施釉して本焼きした場合、収縮が大きいと釉剥がれや破損の原因となります。
仮に成形した時点から本焼成すると20%縮む土があったとします。素焼きで仮に8%縮むとすれば、施釉後の本焼きでは12%の収縮で済みます。収縮率が少なければトラブルの確率が下がるので、素焼きというワンクッションを置くという理屈です。
このように適度な丈夫さが得られる点、少しだけ収縮させておける点がメリットとして挙げられます。
素焼きの目的まとめ
- 作品中の水分が蒸発する・・・施釉しやすい下地
- 粘土に含まれる不純物が燃える・・・焼きが安定
- 粘土自体が焼き締まる・・・丈夫さ+本焼きの収縮率を低減
2の不純物の多寡については意見が分かれるところでしょう。しかし安定性を考えれば素焼きは非常に有効といえます。