上絵窯(赤絵窯、錦窯)
上絵窯 江戸時代前半~現代:昇炎式
上絵窯(うわえがま)とは文字通り上絵を焼きつけるための窯です。上絵とは釉薬をかけて本焼き(1,200℃~1,300℃)した上に絵付けをすることです。そして上絵窯の中で低火度(600℃~800℃)で焼成します。
初期の上絵は「赤」を主体とした色絵具だった名残から「赤絵」といいます。その後、色絵具は赤・青・緑・紫・黄色を色彩を増やし、錦のような色合いから「錦手(にしきで)」ともいいます。
ゆえに上絵(色絵)≒赤絵≒錦手を焼く窯という意味で、上絵窯は「赤絵窯」・「錦窯」とも呼ばれます。
上絵窯は中が二重構造になっています。焚口からの炎は窯の回りを通って排煙されます。このように直接火が当たらず、内部のうつわに熱だけを伝える仕組みです。こうした構造の理由は、直接火が当たると煤(すす)や焦げ・予期せぬ変形や窯変を伴うからです。
日本における上絵のはじまりは江戸時代の有田です。有田焼は白い素地が特徴ですので、変形や窯変はもとより焦げは厳禁とされます。
はじめ赤絵窯の燃料は薪が使われていました。その後は時代の変遷とともに明治時代には石炭、それ以降は重油や軽油も加わります。
当時は温度管理に熟練が必要だったはずです。というのも上絵窯は低火度(600℃~800℃)焼成なので、ひとつ間違えば温度が上がりすぎて上絵が液状化してしまうからです。
現代の上絵窯
現代では温度管理が容易な電気窯が主流となり、ガスや灯油も使われています。もちろん薪窯でも上絵窯になりえますが、特に電気窯が優れているのはその構造でしょう。
炎ではなく電熱線であぶるので、炎による焦げ・汚れはありません。さらに温度設定や温度上昇パターンの選択など操作も簡単です。上絵窯の要件は低温帯で酸化焼成ですので、素焼きや上絵用として電気窯は非常に優秀な窯といえます。