粘土ができるまで
陶磁器に使われる粘土は主に花崗岩(かこうがん)から作られます。花崗岩という岩石が粘土になるまでは膨大な時間を要します。
花崗岩は長い年月をかけて風化して朽ち果て、風雨にさらされて細かい粒子が少しづつ地表に堆積します。やがて地面の土や枯葉などの有機物と混じりあって粘土になっていきます。
花崗岩とは火山の噴火によってできる火成岩の一種です。火成岩には大気や水によって急速に固まる火山岩と、地中で自然にゆっくり固まる深成岩(しんせいがん)に分かれます。花崗岩は後者の深成岩に該当します。
花崗岩はこうした白っぽい岩石です。私たちの身の回りでは墓石などで使われる一般的な石材です。現物を見ると白・灰色・黒の粒がそれぞれみえます。
- 白・・・長石が含まれます。
- 灰色・・・珪石(=石英)が含まれます。
- 黒・・・黒雲母(くろうんも)が含まれます。
長石、珪石、黒雲母は太陽の紫外線や雨風によって次第に結晶化していきます。もとは一つの岩であった花崗岩は、構成物である長石・硅石・黒雲母がそれぞれ結晶化を起こすと一体感を失って脆くなります。
一言でいえば花崗岩は風化が進むと崩れやすくなるのです。溶岩がゆっくりと地中で固まって出来た花崗岩は、より長い時間をかけて土に還っていきます。
長石と珪石はアルミナとシリカを含んでいます。アルミナとは粘土に粘りを持たせる物質で、シリカとはガラスの素になる鉱物です。これらが土と水と混じりあい粘土になります。
粘土は適度な水分量であれば形を作ることができますね。いったん形を作ってしまえば乾燥してそのまま固まります。これを高温で焼くとガラスの素であるシリカがガラス化して硬い陶磁器になるわけです。
ただし、粘土に含まれる珪酸値が高いと可塑性(粘土の曲がりやすさ=扱いやすさ)が低くなります。また、アルミナが増えると耐火度が上がって高温にしないと硬く焼き締まらなくなります。
産地によって粘土の個性が違う理由は、このように長石・珪石・土の割合と特性が異なるためです。つまりアルミナとシリカの割合=粘土の個性とも言い換えられます。
粘土は無尽蔵?
さて、火山活動が活発な日本では花崗岩が多いといえます。花崗岩の風化によって長石・珪石は地層にたくさん含まれているでしょう。それでは同じ場所に粘土は無限にあるのでしょうか?
残念ながら答えは「No」です。長石と珪石があるだけでは陶芸用の粘土にならないからです。
粘土は有機物を含んだ土と長石・珪石が必要です。さらに粘土が出来るまで一説によれば数万年から長いもので350万年かかるとも言われています。したがって同じ場所で採掘する条件下では、ほかの資源とおなじく限りのあるものなのです。
以前は粘土の採掘場であった所でも、粘土が枯渇すればそこは閉鎖されてしまいます。閉鎖された採掘所跡をみると寂しい気持ちにもなりますが、こうしている間にも世界中の至る所で少しづつ粘土が堆積しているはずです。