一次粘土と二次粘土
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一次粘土と二次粘土

 

陶磁器に使われる粘土は不純物(有機物)を含むものと、ほとんど含まないものに分かれます。有機物は木片や落ち葉などを指します。それぞれ不純物が少ない粘土を一次粘土、不純物を含む粘土を二次粘土とよびます。

 

粘土は一次粘土か二次粘土に大別されますが、この不純物の多寡はどんな要因で決まるのでしょうか?

 

それは粘土の原料がその場所に留まるか移動してしまうかでおおかた決まります。一般的に岩石が風化するとそこに含まれていた長石・珪石が地面の土と混ざって粘土になります。

 

一次粘土は長石・珪石がその場に留まったため不純物が少ないと考えられています。二次粘土は長石・珪石が風雨で移動したため不純物が多いといわれています。

 

それぞれの特徴は以下の通りです。

種別

不純物
(有機物)

用途 粘土の名称 可塑性
一次粘土 少ない ほぼ白色 磁器(*) カオリンなど 低い
二次粘土 普通~多い

有色
(褐色など)

陶器

木伏粘土など

高い

*磁器は陶石を砕いた材料が一般的に知られています。参照記事 : 「陶器と磁器の違い」。陶石は有色素成分の鉄や炭素が含まれないことが望ましいです。たとえば有田の泉山陶石や熊本の天草陶石などが有名な陶石として挙げられます。

さて、蛙目粘土(がいろめねんど)のように一次粘土と二次粘土の中間といわれるものもあります。色はおおむね灰色ですが含まれる成分によって変わってきます。カオリンより可塑性(粘土の柔らかさ・形の作りやすさ)は高いですが木節粘土には劣ります。一次粘土に近い部類といえるでしょう。

 

 土地の粘土と陶工

その土地によって一次粘土・二次粘土の産出量が異なります。この違いによって全国の窯業地では様々な特色を持った陶磁器が作られてきました。

 

たとえば蛙目粘土が大量に産出した瀬戸(愛知県瀬戸市)では、釉薬を用いた施釉陶器(せゆうとうき)が中世から盛んに焼かれます。平安時代末期からの中世において、施釉陶器を作っていたのは瀬戸焼だけです。

 

その理由は一体何でしょうか?ひとつには蛙目粘土が白色に焼きあがる粘土だからといわれます。白色に焼きあがるという事は不純物が少なく、黒く発色する鉄分をあまり含みません。

 

そして白色に仕上がる粘土は釉薬の発色を妨げないのです。つまり瀬戸で産出した大量の蛙目粘土は、施釉陶器と相性のよい粘土だったといえます。近隣の常滑(愛知県常滑市)・信楽(滋賀県甲賀市)でも施釉陶器の情報自体はあったと思われます。

 

しかし信楽では長石の粒が特徴の有色粘土が主体で、蛙目のような白色粘土は三重県の島ケ原方面の産です。また、常滑では白色系の粘土は山茶碗などの雑器に多用され、あとは赤褐色に焼きあがる鉄分の多い土や朱泥などが主体でした。瀬戸とは採取できる粘土も用途も違うのです。

 

このように一口に一次粘土・二次粘土といっても、その「採掘量」によって各窯業地の特産品がガラッと変わってしまいます。瀬戸では二次粘土である木節粘土の産出も膨大な量がありましたが、土によって作品を作り分けるなど棲み分けができています。

 

すなわち瀬戸ではすでに施釉の技術が確立していますので、鉄分が多い土ならば飴釉など黒色系の鉄釉、白色に近い粘土ならばうっすらと黄色~緑色を呈する灰釉などが作られました。産出する粘土の特性に合わせた陶工たちの作品が伝世しています。

 

伝世品を鑑賞するさいに土味(色や質感)を意識すると、特色のある粘土を生んだ土地柄にも触れられるような気がします。採掘される粘土は数万年~数百万年という単位で生成・堆積していきます。

 

どんな粘土層ができるかは遥か昔からの地質条件によって決まり、どんな作品が特産品となるかは陶工の創造性と技術にかかっていたといえます。

 

 

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