大量の粘土が集まる条件
日本には陶磁器の名産地がいくつも存在します。その耐火粘土は良質であるだけでなく、膨大な採掘量を誇っています。
こうした窯業地にはたくさんの粘土が集まる条件があるのでしょうか?
粘土の堆積
粘土は花崗岩など岩石が風化した物質から作られます(参考記事 : 粘土はどうやってできるのか)。風化した物質ははじめ地表に積もりますがその量は微々たるものです。この微量な物質が一か所に大量に集まる条件が自然の中にあります。
たとえば花崗岩が豊富にある場所に雨が降ったとします。地表の物質は地中に浸み込むか、引力に従ってより低地に移動しながら川に流れ込むものもあります。
そこから下流に流れる間に淀みがあればそこに溜まるものもあるでしょう。
または、川にたどり着かなくても地面に裂け目があればそこに溜まる可能性も十分あります。
こうした粘土のかたまりは地表に露出しているものもあれば、がけ崩れなどによって偶然発見されるものもあります。このように条件を満たした地形と長い年月によって、一定の地域に莫大な量の粘土が蓄えられるのです。
窯業地の共通点
こうして考えると粘土が溜まっていそうな場所が思い浮かんできます。
川であれば上流より支流が多く流れ込む下流地域。山間ならばより低い場所にある可能性が高いでしょう。また、過去に沼地があって干上がった場所ならば堆積物が期待できます。
窯業地は海や大きな湖に近い場所が比較的多く、内陸でも山間もしくは山に隣接した地域や、広大な田畑がある近隣にあるといえます。要するに粘土が溜まりやすい条件を満たしているのです。
たとえば六古窯のうち備前・常滑・越前は海に隣接しています。信楽は琵琶湖と伊賀方面との山間にあります。丹波は三田市の山土と篠山市の田土が使われました。瀬戸も内陸ですが500万年前には琵琶湖の6倍の大きさの湖があったといわれます。
参考:六古窯の所在地
このように窯業地は昔の地層から恩恵を受けています。こうしている間にも私たちの知らない場所に粘土は少しずつ蓄えられているはずです。