口・首・耳・肩・胴・腰!| 陶磁器の各部名称
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陶磁器 各部の名称

陶磁器の各部には人と共通する名称があります。たとえば縁(ふち)の部分を「口」、うつわのおよそ下の方を指して「腰」と呼んだりします。これは美術館や販売店などで、陶芸作品の話をする時によく出てきます。あとは作品の表面を「肌」ということもありますね。

 

また、私は陶芸をやっているのですが、陶芸仲間と話すときにこんな会話をすることがあります。「次はもっと(壺の)首を絞めなきゃダメだね」とか「(自作した茶碗の)腰から下(の削り方)がひどい。見れたもんじゃない」など。

 

()を省いて話してますから、当事者以外は「え!?何のはなし?」ってなります。電車の中で話すには誤解を生みかねない内容だったりします。

 

さて、茶碗(抹茶椀)については一部独特な名称がありますが、一般的なものから図示したいと思います。

壺や瓶 各部名称

壺や瓶の各部名称

 

大小を問わず壺型・甕型のものや花瓶・徳利などの名称です。作品によっては分類のために一部が使われる事もあります。

 

たとえば首があたかも鶴のように細長いので「鶴首徳利(つるくびとっくり)」とか、肩が衝きだしていることから「肩衝茶入(かたつきちゃいれ)」と命名されたのがその一例です。

 

また、耳の数にしたがって2つ耳の双耳壺(そうじこ)、三耳壺(さんじこ)、四耳壺(しじこ)と呼ばれる作例もあります。耳はふたをして紐をくくりつける用途がはじまりですが、壺や茶入の装飾としても発展してきた歴史があります。

 

ではこれらの名称を覚えた状態で、こう書かれた作品解説を読むとしましょう。「腰から肩までが緩やかな曲線で結ばれ…(略)」とか「中世に見られる典型的な三耳壺のような…(略)」。どうでしょうか、何となく形が思い浮かんできませんか。

 

飯椀や皿の各部名称

飯椀や皿の各部名称
椀や皿は口が大きく開いて見込みが広いです。したがって首や肩に該当する部分がないため省かれています。ちなみに真っ平らな皿には見込み・胴・腰はありませんし、高台がないものもたくさんあります。そのような場合は口(縁)と底といった表現でよいと思います。

 

茶碗(抹茶椀)の各部名称

 

茶碗の各部名称

 

抹茶碗の場合は名称に茶道具が絡んできます。この図では茶碗をふく布である「茶巾(ちゃきん)」、抹茶を撹拌する「茶筅(ちゃせん)」が関係してきます。

  • 茶巾摺(ちゃきんずり):茶巾で長年拭いているうちに擦れてくる場所です。見込みの比較的浅いところが該当します。茶巾が滑りやすくひっかかりがないよう、施釉したり削りが工夫されます。
  • 茶筅摺(ちゃせんずり):茶筅で擦れてくる部分を指します。見込みの深いところを指します。茶筅が使いやすく傷まないよう、茶巾摺と同様の工夫がされています。この部分の釉が剥げてしまったものもよく見られます。
  • 茶溜まり(ちゃだまり):抹茶を飲み干した際、わずかな飲み残しがたまるくぼみのことです。見込みの中心部にきれいに溜まるように作られています。
  • 高台脇:釉をかけず土見せにしたり、削りで土味と作者の個性が出てきます。高台本体とあわせて見どころのひとつといえます。
  • 高台裏(内):高台脇と同じく削りによる意匠が見てとれるところです。中央に渦巻き状の兜巾(ときん)を設けたもの、中心をずらして削る三日月高台など様々です。

さて、例えば茶碗のある場所を言葉で表したいとします。「この茶碗の内側の…えーと、ちょっと下。。真ん中より少しだけ底の方」なんて言っても分かりにくいですよね。名称をお互いに知っていれば「茶筅摺りの箇所」で通じ合えます。

 

では書籍にこう書かれていたらどうでしょう。「本作は腰から高台脇にかけてのヘラ目(ヘラで削ったあと)が特徴的である。畳付には一部釉薬がかかって剥がした跡が見られる」。

 

名称を知っていれば、ヘラ目と釉剥がしをした箇所が大まかにわかりますね。このように各部名称を覚えておくと、状況に応じて何かと役に立ちます。

 

 

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