ボーンチャイナの「Bone」と「China」とは?
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ボーンチャイナの「Bone」と「China」とは?

ボーンチャイナとは磁器の仲間で、原料の粘土に牛の骨を焼いた骨灰(こつばい)が30%~60%含まれています。18世紀末にイギリスで生まれたボーンチャイナは、はじめ中国や日本の白磁を目標にして作られました。

 

白磁がもてはやされた背景には、シノワズリ(仏: chinoiserie)という中国趣味の流行がありました。ヨーロッパにおけるシノワズリの隆盛は17~18世紀であり、18世紀半ばには日本趣味であるジャポニズム(仏: Japonisme)も白磁人気に影響を与えたと考えられます。

 

白磁を目指して生まれたイギリスのボーンチャイナは、実は中国や日本の磁器のように陶石や磁器土が原料ではありません。これは陶石をはじめ白磁を作るための原料がイギリスでほとんど入手できなかったからです。

 

そこで陶石の代替品として乳白色に焼きあがる牛骨灰を使用しました。

 

牛の骨灰は骨の成分であるリン酸カルシウム類が豊富なうえ、鉄分をほとんど含みません。鉄分が多いと焼いたあと黒みを帯びてしまいます。ゆえに鉄分の少ない牛骨灰は白色の作品を作るのに適していました。

ボーンチャイナ「Bone」の意味

現代では骨灰のほか同成分(リン酸カルシウム類)を素地に添加して作られています。ボーンチャイナは骨の成分が含まれているので、一般的な磁器土(陶石を原料とする磁器用の粘土)より粘りが弱く、成形が難しいことで知られています。

 

しかし高い技術によって成型されたボーンチャイナは、白色の素地と滑らかな手触りで世界的に高い評価を受けています。現在でもイギリス本国をはじめ、ヨーロッパや日本において優雅な白色のうつわが作られています。

 

さて、原料の特性からボーンチャイナのボーンは「骨」(Bone)に由来することが分かりました。ではチャイナは何が語源なのでしょうか。

 

ボーンチャイナ「China」の意味

冒頭でボーンチャイナは中国や日本の「白磁」を目指していたと述べました。白磁のはじまりは6世紀ごろの中国までさかのぼります。6世紀というと北斉(ほくせい 550年~577年)の時代に白磁が焼かれたことがわかっています。

 

つまり中国においては、イギリスのボーンチャイナ誕生より、約1,200年も早く白磁が作られていたことになります。中国といえば磁器!ともいえますね。

 

そこから「China」という単語には中国発祥である「磁器」という意味もあります。たとえば磁器のことを英語で「China ware」ということもあれば、「porcelain」(磁器)はあえて使わず「China」と表記した書籍も一般的といえます。また会社名にチャイナがつく企業が、磁器製品を扱っている実例もありますね。

 

このようにボーンチャイナという名前は、イギリス独自の骨灰(bone ash)と中国に起源をもつ磁器(China)に由来します。

 

陶石で作る一般的な磁器は還元雰囲気(酸素が不足した状態)で焼成されます。その結果、素地に含まれる微量な鉄分がうっすら青く発色します。

ロイヤルコペンハーゲンの色合い

この画像はロイヤルコペンハーゲンのものです。白といっても青味をおびた白なんですよね。身の回りの磁器といえば、こうした涼しげな色合いが一般的です。

 

それに対してボーンチャイナは鉄分がほぼ含まれないうえ、酸化雰囲気(酸素が十分な状態)で焼成されるため純白~やや黄色味をおびた柔和な白色になります。仮に還元焼成しても青く発色せずむしろ白がはっきり出るといいます。

ボーンチャイナの色合い

この画像はウェッジウッドのプレートです。中央に「BONE CHINA」という表記がありますね。先のロイヤルコペンハーゲンの色合いと比べると青味がなくクリーム色に近い白色だと思います。

 

このように青を帯びることなく、乳白色の焼きあがりを求めるならば、ボーンチャイナの「白」は理想的な色合いといえるでしょう。また光を通す透光性にもすぐれ、白い器体が光をうけた肌合いは独特の透明感と美しさがあります。

 

ただしリン酸カルシウムが比較的高価であること、本焼きを二度行うなど作成工程においても手間がかかります。このためボーンチャイナの希少性は高いといえますね。また、ボーンチャイナは日本では30%以上のリン酸カルシウムを含むと規定されています(JIS規格)。

参考:ニューボーンチャイナ | New bornとは

リン酸カルシウムを含まない「ニュー・ボーンチャイナ」と呼ばれる磁器もあります。ボーンチャイナと混同しないよう概要を述べたいと思います。

 

ニューボーンチャイナは長石と磁器土で作られる白色磁器です。しかしボーンチャイナの骨灰と異なり、ニューボーンの白さは長石の発色です。ニューボーンも酸化焼成で作られます。

 

これは新しく生まれた(1960年代に岐阜県多治見市で開発)ということで「new born」と名付けられました。量産に適しており乳白色で透光性もありますが、品質や工数ではボーンチャイナには及びません。しかし安価に大量生産できるという点で、ニュー・ボーンチャイナは非常に優れています。

白磁への憧れから始まったイギリス発のボーンチャイナは、中国や日本磁器の模倣に留まらず、今や独自の地位を確立していると言えます。

 

 

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