昇炎式と倒炎式
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昇炎式と倒炎式について

 

昇炎式の窯と倒炎式の窯(火の動く方向による分類)

焼成中の窯の中では勢いよく炎が燃えさかっています。熱によって上昇気流が発生し、その炎は窯の構造によって動きが変わってきます。火元から煙突へ出ていくまでの動きによって昇炎式・倒炎式と大別することができます。

 

それぞれ図示するとこのようになります。

 

昇炎式と倒炎式
昇炎式は下から上に炎が昇っていったあと煙突から出ていきます。それに対して倒炎式は、出口(煙突)がないため天井に当たって下に戻ってきます。戻ってきた炎は床下の煙道を通って煙突から出ていきます。

 

この図では煙突・煙道という出口があったため火の動きも単純です。しかし出口がなかった場合はどうなるでしょうか。

 

 半倒炎式≒横炎式

昇炎式の炎は天井から戻ってくる倒炎式の動きになります。倒炎式の炎は行き場がないため焚口に逆流するか、高いところがあれば図のような動きをとります。
半倒炎式

 

このように高い場所にある次の焼成室へと移動していきます。これを上手く利用したものが連房式の登窯です。複数の焼成室を持ち下の部屋からの熱を効率よく利用します。倒炎を繰り返すことで窯全体が焼かれ、その熱を次の部屋でも活かすことができるわけです。

 

さて、昇炎式と倒炎式の2つをさきに挙げましたが、この図では火が倒れながら傾斜に沿って斜めに移動していきます。先に挙げた倒炎式を「完全倒炎式」と呼ぶのに対し、登窯のように横に移動していくものを半倒炎式といいます。

 

ちなみに炎が横(斜め)に移動するため、半倒炎式のことを「横炎式」ということもあります。横炎式という名前は、炎が「真横」に移動する窯にも使われます。数ある書籍や資料、焼成現場でも半倒炎式と横炎式いう表現が混在しています。

 

どちらも火が横方向に動くのでほぼ同義といえるでしょう。呼び方は理解しやすい方でよいと思います。

 

 直炎式

最後に直炎式について述べたいと思います。直炎式は参考までに見ていただければと思います。

 

直炎式には2通りの使われ方があります。第一に「器物に直接火が当たる」という意味。作品に火が直接かかると焦げだらけになったり、変色や思わぬ窯変を伴うことがあります。防護のため匣鉢(さや)に入れて焼いたり、意図的に焦げや窯変した作品を狙う場合もあるでしょう。

 

ただ、器物に火が触れるというとほぼ全ての窯が該当してしまいます。作品を焼くのは炎のカロリー(遠赤外線で焼く)ですが、多かれ少なかれ炎は直接当たります。ですので私は火が直接「当たり続ける」という解釈をしています。

 

たとえば楽の窯では炭火が直接当たっていますし、七輪陶芸では炭の中に埋まった状態で焼かれるうつわもあります。これらは直炎式ともいえるでしょう。

 

第二に「昇炎式と同じ意味」で使われることもあります。昇炎式の窯は火が上に行きっぱなしなので、煙突までの火の通り道に器物を置くことがほとんどです。そこから直接火が当たるわけですが、作り手や書籍によっては「昇炎式」の代わりに「直炎式」と表現する場合もあります。

 

 火の動きによる分類:まとめ

  • 昇炎式(≒直炎式):炎の動きが下から上へ行く方式。例:イギリスの「ボトルオープン窯」など。
  • 完全倒炎式:天井に当たって下に戻ってくる(行って来いしてる)方式。例:単室の「石炭窯(角窯)」など。
  • 半倒炎式(≒横炎式):炎が倒炎しながら横方向に移動する方式。例:穴窯、登窯、鉄砲窯(蛇窯)。
  • 横炎式:半倒炎式とほぼ同義。炎が横方向に移動していく方式。例:穴窯、登窯、鉄砲窯、トンネル窯など。
  • 直炎式:炎が器物に直接当たり続ける(もしくは頻繁に当たる)方式。楽窯など

 

 

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