磚(せん:レンガ)を焼く窯
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磚窯(せんがま):饅頭窯とも

 

 磚窯(せんがま)古代中国~現代:半倒炎式

磚(せん)とは中国で作られる石を主原料にした黒色レンガのことです。磚が使われている世界的に有名な建造物といえば万里の長城(ばんりのちょうじょう)が挙げられます。

 

長城をはじめ多くの東洋建築で磚が使われました。その形から饅頭窯(まんじゅうがま)と呼ばれることもあります。

 

磚の特徴は強還元炎で焼かれたその黒色にあります。強還元状態にするための仕組みは窯の上部にあるくぼみです。ここに水を注入していぶす事で窯の酸素をなくしていきます。
磚窯イメージ図
図の例では水が直接かからないよう中央に作品を積み上げています。磚を焼く場合は石炭で一週間ほど焼いたのち、窯の温度が900℃になった時点で窯を密閉します。それから水を注入して還元状態にします。

 

900℃にもなるとレンガの素地は酸化・還元の影響を受ける状態になります。ここで注入された水は窯の内部温度が高いため急速に蒸発します。そして中の作品は還元雰囲気に焼成されます。

 

水は火を止める900℃の時点で一時的に注入されるだけで、その後は注入口もふさがれます。

 

窯の形については円筒状のものから角張ったものまで様々です。煙突の位置についても水を注入する近くから排煙する昇炎式の窯もあります。いずれの場合も水を注入することで強制的に還元雰囲気にもっていく点がおおきな特徴です。

 

問題点としては水が直接かかることによる破損や焼きムラができる点でしょう。現代でもこうした昔ながらの手法が使われるのに対し、水は注入せずガス燃料の調整によって還元焼成するケースもあります。後者は安定度が高く一定の品質をえられる点が利点です。

 

 一般的な作品への応用

問題点のうち焼きムラが出る点についてですが、これは逆にいえば予期しない窯変を伴います。水による破損は容認できませんが、作品によっては焼きムラ・窯変がメリットとなる場合もあります。

 

たとえば種子島焼(たねがしまやき)を再現した小山富士夫(こやま ふじお)は窯に水を入れて、多様な窯変の作品を得ています。

 

1972年のこと、台風によって窯焚きを中断せざるを得なくなった小山氏は、1,200℃の窯に水を入れた袋を投げ込み温度上昇を抑えようとしました。偶然にも強還元雰囲気になった結果、おもしろい作品がいくつもできあがったのです。

 

のちに岐阜県土岐市に花の木窯(はなのきよう)を築いた小山氏は、意図的に水を出せるよう窯の床下に水が噴出するパイプを敷設しています。窯焚きの終了ごろ(1,200℃~1,300℃)に水を噴出させて強還元状態にできるよう設計されています。

 

このような例のほか還元状態で作られる青磁釉や辰砂釉(しんしゃゆう)を使った作品にも適用可能です。これはある窯元の事例ですが、焚口と焼成室の間にある色見穴から水を入れることがあるそうです。少量の水であれば温度は下がらず青磁の緑に深みが出るといいます。

 

このように注入方法は違えど、水によって強還元にする手法が使われることがあります。磚の窯はレンガの黒色をえるため、はじめから還元焼成に特化した構造になっています。水によるリスクはあるものの、ユニークで合理的な窯の一例として興味深いものです。

 

 

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