角窯(石炭窯)
角窯(石炭窯)明治時代~現代:倒炎式
角窯(かくがま)は明治時代に作られた長方体の窯です。そのはじまりは明治初期にワグネル(ドイツの化学者。1831年~1892年)が築いた石炭窯を元に各地で開発されました。
江戸時代は連房式の登窯が主流でしたが薪はコストがかかります。すなわち木を切って薪を割り、何か月も乾燥・保存する手間がかかります。
いっぽう石炭は少量でも燃焼性に優れ、採掘してから燃料になるまで薪より手間が要りません。そこで石炭を使う角窯が明治時代以降に広く普及しました。
燃料は重油・軽油、ガス(ブタンガス・プロパン・都市ガス)へと変遷しますが、はじめ石炭を用いた名残から石炭窯ともよばれます。
全体的に角張った形ですが、天井だけは炎の回りを良くするためにドーム状になっています。最大の特徴は傾斜が不要で焚口を複数持つことです。
上からみると登窯・穴窯は横に距離を取りますが、角窯はほぼ正方形で場所を取りません。また、焚口が複数あることで炎が中心に集まり窯の温度差が少なくなります。
※二次空気を送る「ロストル」、空気調整をする「ダンパー」がない窯もあります
図は焚口が二つある例です。双方の炎が天井でぶつかり作品の方へおりていきます(倒炎する)。その炎は床下の煙道に抜けて煙突へと向かいます。双方の火勢を均等にすれば室温が一定に保てるのがメリットです。なお石炭以外にもロストルを利用して薪で焼くこともできます。重油・軽油やガスはバーナーで焚きます。
まとめますと、石炭窯は従来の登窯と比べて「燃料が安価」「場所を取らない(=傾斜不要)」「室温が均一(焚口が複数)」といえます。
もし焚口がひとつならば火前は温度が高く、火奥は温度が低くなりますね。この場合は「角窯は温度のばらつきが少ない」メリットがなくなります。
しかし温度差をいかし耐火度の高い作品を手前、低いものを奥におくなど工夫はできます。また、計器を使えば窯の温度も分かるので、試し焼きの粘土(テストピース)を窯の各所においてもよいでしょう。このように意図的に焚口を一つにした角窯もあります。
現代のガスを使った角窯は温度管理の精度がより向上しています。業務用の窯はバーナーの小型化が進み、窯の各所にバーナーが並びます。室温も均一で昇温・酸化と還元の焼き分けも容易になっています。
一般的なガス窯は角窯を小型化した形になっており、管理面・画一的な作品を焼くには非常に優れた構造の窯といえます。