蛇窯(じゃがま:鉄砲窯、龍窯)
蛇窯(鉄砲窯・龍窯)15世紀ごろ~現代:横炎式(半倒炎式)
蛇窯は登窯の一種で細長く伸びた単室の窯のことです。上からみると竹を置いたように長方形で「割竹式(わりたけしき)」とも称されます。
複数の焼成室を持つ割竹式登窯と混同されることもありますが、基本的に単室のものが蛇窯といわれます。ちなみに蛇窯は鉄砲を横たえたようなので「鉄砲窯」と、中国や台湾では龍の姿をなぞらえ「龍窯」と呼ばれています。以下の図は単室式の蛇窯をあらわします。
炎は焚口から煙突まで一定の傾斜を駆け上がっていきます。横幅がある蛇窯では内部の壁際を炎が通りにくく、中央以外はうまく焼けないおそれがあります。または火が一方に偏るなど、横幅が広ければ均一に焼けないリスクが高まります。そこで下図のように窯の側面に薪を入れる穴を設けます。
炎は上昇気流を伴い高いところに移動します。しかしその過程でまず熱を帯びた道、すなわち火道を優先して通ります。その結果、炎の通り道にムラができると焼きの甘い場所が出てきます。そこで火力の足りない場所の側面から薪を投入して火勢を補います。
はじめは大薪をくべてもまともに燃えません。小割にした雑木や薪を入れて温度を上げ徐々に薪を増やします。ただし薪が燃えるのに酸素と炎の熱量を奪うので最初は温度が下がります。
このように一気に薪をくべるのは温度が下がり酸欠になって逆効果です。少しずつ薪を足し、おおかた燃え尽きるのを待って再投入する・・・この繰り返しで酸素量も保たれ温度が上昇していきます。
蛇窯(鉄砲窯、龍窯)の応用
単室で小規模の蛇窯を使う場合、作風を絞る作り手もいます。たとえば横幅・高さともに1mほど・全長2.5m程度の窯で自然釉の作品専用窯としたものを見たことがあります。狭いので窯詰めは長時間横ばいのまま・・・小さな作品を一番奥から窯詰めするのに半日かかるそうです。
焚口から見ると作品で窯の中がほぼ塞がっていました。雰囲気は穴窯なのですが上からみると長方形です。鉄砲というよりむしろ削りかんなのようです。薪を足すところはなく灰かぶり作品に特化した興味深い窯でした。
このような単室の蛇窯に限らず、用途別の窯を持つ作り手が増えてきたと思います。一般的なものに上絵窯や素焼き窯がありますが、窯変用・火襷(ひだすき)用・緋色用など使い分ける人もいることでしょう。
蛇窯といえば丹波の立杭にある例もその一つです。蛇窯は基本的に単室ですが、丹波にある9つの焼成室を持つ登窯は、地元で蛇窯とも言われています。部屋の数はさておき、丹波の例では細長く伸びたその「姿」が呼び名の由来なのでしょう。
明治時代に作られたこの窯の全長は47mあります。行事で実際に火が入ることもあり、「丹波立杭登窯」として県指定の文化財として親しまれています。屋根の下に入ってみると、その規模と古様がよくわかります。
一般的な登窯ほど高さがなく、横への膨らみのない細長い外観です。現存する蛇の窯がそこに横たわっています。