穴窯(窖窯)
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穴窯(窖窯)

 

日本最古の歴史を持つ窯

日本で初めて窯が登場したのは古墳時代。須恵器を焼くための穴窯がはじまりです。従来の土器は手びねり(ロクロを使わない)成形した土を野焼きしていたのに対し、須恵器は「ロクロ」を使って成形したものを窯で焼く最先端のやきものでした。

 

具体的には足で回し両手が自由になる蹴ロクロと、地中に傾斜のある穴を掘った穴窯です。これらは中国大陸および朝鮮半島から伝播したといわれます。

 

 穴窯(窖窯) 5世紀ごろ~現代:横炎式(半倒炎式)

穴窯は地中に穴を掘る「完全地下式」のものと、山などの傾斜に屋根を付けた「半地上式」(半地下式とも)に分かれます。

 

完全地下式穴窯
完全地下式の穴窯は日本に伝播した最も原始的な窯といえます。野焼きの場合、焚けども焚けども炎の熱は空中に逃げてしまいます。その炎を地中に閉じ込めて焼くという発想から作られました。

 

窯自体が地中にあるので湿度とメンテナンスの問題があります。適切な湿度は必要ですが、地中の湿気が多すぎれば温度が上がらずうまく焼けなかったはずです。また崩れた場合は莫大な労力をかけて掘りなおすか、諦めて場所を変えるしかありません。

 

 

半地上式穴窯
半地上式の穴窯は傾斜を利用して築かれたものです。平らな地上に傾斜を築くわけではないので「半地上式」と呼ばれます。もともとあった傾斜にドーム状の屋根を作って煙突につなげた単室の窯です。

 

完全地下式よりメンテナンスが容易で燃焼効率も優れています。なお、現代でも半地上式の穴窯を使っている作家もいます。単室の窯では保温・温度管理が難しい反面、個性的な作品が作られています。
※ロストル、捨て間、ダンパー・空気調整穴のない窯もあります

  • ロストル:二次空気の取り込み口
  • 捨て間:焼成室と煙突の間に設けた部屋。炎の熱が一時的にとどまり窯の保温性が向上する
  • ダンパー:空気調整用のゲート。調整穴も用途は同じ

 

次は半地上式穴窯の平面図です。上から見ると窯は「涙型」をしています。長方形に近い穴窯、細長いものもありますが涙型が一般的なものです。焚口から円形に開いて「焼成室」は作品を詰める幅を取っています。そして仕切りを通って捨て間、煙突に向かってすぼんでいきます。
半地上式穴窯の平面図

  • 分煙柱:炎を左右に分ける柱 ※分煙柱がない窯もあります

炎は何もなければ煙突の方向へ直進していきます。すると左右の壁際の作品がうまく焼けないおそれが出てきます。そこで分煙柱をたてて炎を左右に振り分けるのです。図はイメージですが炎の熱量が焼成室全体に行きわたります。

 

柱は窯の補強を兼ねて天井についているものもあれば、低めに作って上に作品を置けるもの、細い柱を複数たてて更に炎を細分化する分煙柱など様々です。

 

 穴窯の特徴 登窯との比較

穴窯の燃焼効率は登窯としばしば比較されます。どちらの窯も規模・用途・意図する作風が異なります。ゆえに比較する意義がうすいのですが、ひとつの参考にはなります。

 

登窯は複数の燃焼室を持つ(連房式)ため、単室の穴窯よりも燃焼効率が良いとされます。ある作家から聞いた話では、同量の燃料(薪)を使った場合に登窯なら6倍以上の作品がとれるそうです(※参考まで)。

 

もちろん単室と連房式で窯の規模が違いますが、1個の作品に対する薪代が単純に6倍以上も違うという話になります。

 

焼成日数は登窯の1~2日間に対し、穴窯は4~6日間がひとつの目安です。登窯は多くの作品を詰め、焼成室ごとに違った雰囲気の作品をとります。それに対して穴窯は単室なので、少ない作品かつ作りたい方向性を絞って焼きます。

 

また、登窯は作品全体の事を考えますので、ある程度の焼き上がりで火を止めます。いっぽう穴窯は単室ですので、納得いく焼き上がりを得るまで焼き続けられます。先の作家によれば「条件次第では6倍どころじゃ到底すまない。失敗するとしばらく立ち直れない」との事。

 

たしかに穴窯で10日以上焼く窯元もあれば、灰がガッチリかぶるまで延々焚き続ける作家もいます。穴窯は構造的(煙突までほぼ直結)、性質的(少量・個性が最重要)な理由により、作品一個につき登窯よりたくさんの燃料を消費します。

 

次に温度管理の面でも登窯の方が管理しやすいと言えます。たとえば焚口から外気が入った場合、規模の大きい登窯は窯全体の温度は下がりにくい一方、単室の穴窯はダイレクトに外気の影響を受けてしまいます

 

温度が変わりやすければ焼ムラも出やすくなり、些細なことで作品に影響を及ぼしかねませんね。(登窯にも当然焼ムラはあります。)

 

さて、こうしてみると穴窯は欠点だらけのように思えてしまいます。しかし灰かぶりの作品や窯変の景色は欠点を補って余りあるほどです。最も分かりやすいのが焼き締めでしょう。同じ焼き上がりの作品がひとつもないのは登窯と同様です。

 

しかし穴窯は作品の良し悪しの度合いが登窯よりも強烈だと思います。

 

もちろん登窯の一部でも個性的な作品は取れるはずです。ただ、穴窯は窯全体が運命共同体です。全滅の可能性もあれば、登窯以上の美しい作品、アクの強い作品が取れることもあります。

 

また施釉作品においても酸化・還元に火の強弱も加え、個性的な焼き上がりが得られます。同容量の電気窯・ガス窯とは個性という点で比較にならないでしょう。

 

逆に安定してキレイに焼くという点では、穴窯は電気窯・ガス窯に遠く及びません。排煙問題・操作性・安定度・経済性はさておき、個性を重視する作り手にとっては最高の窯といえるでしょう。

 

 

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