椀形 | わんなり
椀形について
椀形(わんなり・わんがた)とは木製の椀の形に由来します。椀形は最もオーソドックスな形であり、飯碗や抹茶碗などによく見られる基本形といえるでしょう。
- 椀:「木」偏。木製のもの
- 碗:「石」偏。陶磁器製のもの
たとえば木製のお椀が典型的な椀形といえます。腰から胴、口縁部までゆるやかな曲線で立ち上がる形です。
これは販売店で目にするご飯茶碗や、一般的な抹茶碗に見られる形状ですね。あたりを見渡せば、ぐい呑みや丼ぶり、小鉢などの飲食器は椀形の作例がたくさんあると思います。
その特徴は見込みの中心(底)まで緩やかな傾斜になっています。したがって具材や飲料が、常に中心に集まるので取りやすく使いやすいですね。そして丸みを帯びた形は手に馴染みやすいのも椀形の利点といえます。
椀形の一例
椀形の作例は抹茶碗に好例がたくさんあると思います。一例を挙げれば高麗茶碗の一種である、呉器(ごき)や彫三島(ほりみしま)などの茶碗の形状もそうです。
呉器茶碗であれば撥高台(ばちこうだい)と呼ばれるその高台に特徴があります。撥高台とは下にいくにつれて広がる高台のことですが、茶碗のボディは椀形をしています。
たとえば、伝世品として名高い紅葉呉器茶碗(もみじごきちゃわん:泉屋博古館 蔵)は、椀形+特色ある高台の組合せといえるでしょう。
また、三島茶碗ならば東京国立博物館所蔵の彫三島(銘「木村」)があります。掻き落とし・印花技法と白化粧の装飾から三島手と呼ばれますが、茶碗のボディはやや浅めの椀形になっています。または、底が浅いので平形(ひらなり)といえるかもしれません。
このケースでは椀形+特色ある装飾の組合せとなります。全体を白化粧する粉引茶碗や、化粧土を刷毛で塗る刷毛目茶碗も同様といえるでしょう。
こうした作例に限らず、茶碗や飯椀には多くの椀形作品があります。中には蓋付の作例もありますし、表面の装飾はバリエーション豊富で私たちの目を楽しませてくれます。
椀形は実際に手に取って扱いやすく、オーソドックスな形ゆえ飽きの来ない点が魅力でもあります。新旧を問わず、和食器の代表的な形状といえるでしょう。