平形 | ひらなり
平形について
平形(ひらなり・ひらがた)とは口縁部が広く、見込みの浅い形を指します。主に抹茶椀に見られる形状で、平形のものを平茶碗といいます。
平茶碗は椀というよりはむしろ、鉢や皿に近い形状といえます。左のイメージ図が椀形(わんなり)、右図は平形となります。
椀形と比較すると、平形は口縁の幅が広く見込が浅い形状です。腰から口縁部までほぼ直線的な立ち上がりのものが多いです。
平形は平茶碗のほか、浅めの鉢や盃。あとは大小の平皿にも見られる器形です。
底が浅いので抹茶や盛り付けた具材がよく見えます。そして空気に触れる部分が多いため、熱いものは外気によって冷めやすい傾向があります。
平形の活用例
さて平形の一例として茶碗を挙げましたが、平茶碗はどんな場面で使われるのでしょうか。平茶碗は見込みの深い茶碗と比べ、熱を逃しやすい形状となります。
こうした事由から平茶碗は蒸し暑い時期に好んで使われ、「夏茶碗」と呼ぶこともあります。
たとえば5~10月の茶席では、平茶碗が使われるケースがよくあります。5~10月は風炉の時期でもあり涼を取りたい季節ですよね。そこで平茶碗の放熱しやすい形状が重宝されるのです。
薄手で見込みの浅い平茶碗は、見た目も涼やかなうえ、広がった口縁が抹茶の熱を適度に逃がしてくれます。
そして白~青など寒色系の釉調であれば、より冷涼感のある作品となります。
私は白萩の平茶碗を使っていますが、見込みの深い茶碗より茶が冷めやすいのを実感しています。なお一年中使える状態ですが、確かに蒸し暑い時期の方がよく使っています。
もちろん夏は平茶碗という決まりはありません。ですが、外観と実用面で暑い季節によく合う形状だと思います。
平形の利点
さて、鉢や皿などの食器で使う場合は、口縁が広いので盛り付ける場所に余裕がありますね。いずれも茶碗より見込みが浅く、真っ平らな平皿に近い形のものがよく見られます。
うつわの丈が低いので食材を平面的に配置しやすく、回りの余白もアクセントになるでしょう。
サラダであれば中心にふんわり盛りつけ、周りはうつわの地肌を見せておきます。たとえば焼き締めで褐色のものや白・黒のうつわなど、野菜の緑黄色と被らない異色のうつわが合うはずです。
または魚や肉などメイン料理があるならば、やはり中心に盛り付けて高さを出してみましょう。そして周りに野菜を低く盛りつけると、高低のメリハリがついて見栄えが美しいと思います。
外食の際にはうつわの形と盛り付けなど、あれこれ参考にしても面白いかもしれません。平形の食器で出される料理は意外と多いはずです。
これは平形の傾斜のおかげで、ソースやドレッシングなど液体がこぼれにくい形だからでしょう。浅めの見込は食材の配置がしやすく、深筒形のようなスペースの制限がありません。平形の食器は機能的でありながら、盛り付けも楽しめる器形のひとつです。