筒形 | 筒型について
筒形について
筒形(つつなり・つつがた)とは胴の部分が筒状になった形のことです。見込みが深いものは「深筒形」、見込みの浅いものを「半筒形」といいます。
左側が深筒形で向付にはよくある形だと思います。ちなみに見込みの深い向付を深向(ふかむこう)といいますが、深向を茶碗に見立てたものが伝世品にもあります。
右側は半筒形となります。これは黄瀬戸・瀬戸黒や楽茶碗、志野など半筒形の茶椀によく見られる形です。深筒形と比べれば見込みが浅いですが、抹茶椀としては十分な容量といえます。
深筒・半筒の茶碗はもともと別用途で作られたものも多くみられます。たとえば黄瀬戸茶碗は食器であった向付を、茶人が抹茶碗に見立てたものです。
そして古染付の筒茶碗は、もともと香炉や火入だったものを茶碗に見立てた一例といえます。
筒型の用途について
一般的に筒形のうつわは向付のような食器、もしくは抹茶椀として用いられます。その形状から安定感があり、容量のある点が利点といえます。
また、抹茶椀であれば深筒のものは冬季、半筒のものは夏季に使われるケースもあります。これは深筒は見込みが深いため、保温性に優れていることがその理由です。
深筒形は空気に触れる部分が少ないので、抹茶が冷めにくく手に取ったさいに温かいわけです。寒い季節にはこの温もりが何よりの馳走といえるでしょう。
これに対して半筒の茶碗は見込みが浅めですから、深筒形より温度が冷めやすい傾向があります。夏などの暑い季節には、半筒の茶碗はより涼しい感触が魅力といえるでしょう。
もちろん季節に関係なく、深筒形・半筒形が用いられるケースもあります。数ある茶会記の例を見れば、真夏に深筒形の茶碗を取り合わせた例もあります。
たとえば、深筒形であっても涼しげな古染付の茶碗であれば、真夏の一服にも「涼」を添えることは出来ますね。半筒の茶碗でも手触りや色あいによって真冬の一席に「暖」をもたらしてくれるはずです。
このように他のうつわとの組合せや機転によって、多様な取り合わせが楽しめるはずです。
抹茶椀と向付のほか小鉢や湯呑みなど、筒形の飲食器は用途の幅広さ、他食器との組合せが多岐にわたる点が魅力といえるでしょう。