切立(きったて) | 切立形の陶磁器
切立について
切立(きったて)とは円筒形の陶磁器を指します。飲食器である向付や湯呑み、貯蔵用の甕のほか花瓶などによく見られる形です。
底から口縁部まで垂直に立ち上がる器形で、胴がまっすぐ伸びたものが切立の基本形です。
この画像は絵唐津の向付となります。腰から口縁までまっすぐに切り立った姿です。横からみると長方形で上からみるとほぼ円筒形です。
ただ口縁部にややカーブがありますので、もっと角が立てば四方(よほう:四角形)、もしくは菱形になりますね。容量としては底が深いもの、浅いものがあります。
なお底が深い向付は中の料理が取りづらいので、和え物など箸でつまみやすい食材がよいでしょう。
切立形の魅力とは
切立はまっすぐ垂直に立ち上がり、非常にシンプルな形です。目だった器面の装飾もなく場合によっては地味に映るかもしれません。
しかし簡単な造形であるがゆえに、どんな料理にも合わせやすいといえます。形が複雑な食器では、時として盛り付けが限定されてしまうこともあります。
たとえば変形型の皿であれば、うつわの中央に少量の食材を盛ったりします。余白の部分を装飾として見せる場合、食材の色・量のほか盛り付ける場所も限定されるかもしれませんね。
また手付(取手のついたもの)鉢であれば、取手が妨げにならないように低く盛るか、菓子器のように用途を絞って使うことになります。食材の構成と配置を考えるのもひとつの楽しみですが、うつわの個性がやや強いともいえます。
いっぽう切立であれば形が主張しすぎることもなく、色んな食材を無難に盛り付けられます。和え物や香の物(漬物)などを低く盛ってもよいですし、丈のある野菜であったり茶碗蒸しのような食材も合うかと思います。
そしてフタがあっても形の調和が取れていて姿形のバランスがよいです。
また向付や小鉢に限らず、花器においてもその形は使いやすいと思います。どんな花を活けても無難に合い、シンプルなうつわは花の個性とぶつかりません。きっと花を主役にしてくれるはずです。
シンプルな造形ゆえに色絵や色釉との相性もよく、多様な装飾があってもうるさくなりにくい形状です。さらに垂直でかさばらないため収納性もよいです。
このように切立形のうつわは相方を選ばず、自ら主張しすぎません。盛られた食材や活けられた草花を引き立てる名脇役といえるでしょう。