熊川 | 熊川形
熊川について
熊川(こもがい)形とは高麗茶碗の一種である熊川茶碗の形のことです。熊川茶碗にちなんだ呼称ですから、熊川形といえば抹茶椀の形を指すのが一般的です。
高麗茶碗は朝鮮半島から渡来したものですが、かつて慶尚南道(けいしょうなんどう・キョンサンナムド)に熊川港という港がありました。この港から出荷された熊川茶碗の形にちなんで、「熊川形」という名称が使われるようになります。
では典型的な椀の姿である椀形(わんなり)と熊川形を比較してみましょう。
まず口縁部が外側に反っていますね。これを端反り(はたぞり)といいますが熊川形のひとつの特徴です。次に高台が大きく幅と高さがあります。これら二つが熊川形の大きな特徴といえます。
全体的に丸みを持ちながら、端反りの口縁と重厚感のある高台の作り。こうした形は熊川茶碗以外の作例でも目にすることができます。
たとえば唐津茶碗の一種である奥高麗茶碗(おくごうらいちゃわん)があります。奥高麗の伝世品では「三宝」や「秋の夜」が熊川形の典型例といえるでしょう。ただし奥高麗の高台はおとなしめの作例が多いです。
高麗茶碗のほか、上記のような和物茶碗、現代作品においても熊川形は馴染みある形といえます。
熊川茶碗の種類
このように熊川形はほぼ決まった形となります。あとは釉調や装飾によって茶碗の種類が分かれます。
- 真熊川(まこもがい):熊川茶碗の中でも最上手とされる作行き。高台は大きく、釉調は安定して落ち着いた品格を持つ。真熊川の中でも特に見込みの小さな茶だまり(=鏡)を珍重する。
- 鬼熊川(おにこもがい):真熊川より小ぶりで変化に富んだ作行きのもの。たとえば釉調や色彩が不均一なもの(釉だまりや火間、窯変など)、雨漏りが見られるもの、見込みに鏡のないものもある。
- 紫熊川(むらさきこもがい):器面全体、または一部分に黒紫の発色があるもの。この渋い色あいを景色として賞玩した。
作風としては品の良い真熊川よりも、鬼熊川の火間(ひま:釉のかかっていない部分のこと)や琵琶色と暗色の窯変など、鬼熊川の見どころが多いと思います。
ただ、これらの形はみな熊川形で統一されています。口縁部の自然な外反と、全体を包む柔らかな丸みが人気の所以でしょう。