稜花形・輪花形の陶磁器
稜花について
稜花(りょうか)とは、丸い食器の口縁部に規則的な切込みを入れた形です。円形の皿や鉢によく見られる形状で、大輪の花を連想させる形といえます。
切込みによって花弁がいくつも出来るわけですが、その花びらごとに先端を尖らせているのが稜花の特徴です。
稜花の「稜」という字は一文字で「角」「尖ったところ」という意味で、稜線などで使われる「稜」からきています。たとえば山の稜線は、山頂部や隣の尾根との境界が角になって尖って見えますね。
この作例では稜花の尖った部分が六ヶ所あるので、六稜花といいます。このように偶数のものもあれば、三稜花や五稜花のように奇数のものもあります。
この作例は涼しい色あいですので、暖色系の食材を盛りつけると合いそうですね。
なお稜花の典型的な作例としては、中国の定窯などに見られる稜花皿が挙げられます。先端の鋭い連弁模様が美しい装飾になっています。
輪花について
輪花(りんか)とは稜花と同様、口縁部に規則的な切込みを入れた形状です。稜花との違いは、稜花の花弁に尖った装飾があるのに対し、輪花には尖った部分がない。もしくは尖った部分が非常に小さいのが輪花の特徴です。
これは梅の花を模した作例ですが、尖った部分を持たず円形の花びらになっています。輪花といえば花弁ごとに切込みを入れるものの、このように花びらが弧を描くかたちが一般的です。花弁が五か所あるので、五輪花の皿と表現できます。
この作品は先ほどの稜花とは逆に暖色系の色あいです。寒色系の食材のほか、うつわ自体が丸みを帯びていますので、角切りにした形状の食材も見栄えが良いでしょう。
ちなみに、この作品は置く方向が決まっています。画像のように花びらが重なっているところが手前です。こうすると全体の姿が締まってバランスがとれています。
なお典型的な輪花作品を挙げるならば、青磁輪花鉢(せいじりんかばち。東京国立博物館蔵)などが好例といえます。
さて稜花と輪花は縁の切込みによって、器面全体に動きが出ています。さらに一定間隔で施された装飾は、調和のとれた美しさも演出しています。リズミカルかつ優美さを併せ持った形といえるでしょう。