陶磁器の汚れを落とす
表面の汚れについて
陶磁器は吸水性があることで汚れや臭いがつくことがあります。特に多孔質の陶器にはその傾向があります。釉薬がある場合はガラス質によって吸水性はありません。しかし釉薬上の貫入から水が入って胎土に水が染み込みます。
乾燥が十分であれば問題ありませんが、乾燥が不十分な状態で長期保管するとカビや臭いがつきます。箱から取り出した途端、表面の異変に気づきます。水で洗っても黒ずんだ部分や臭いが取れない場合は漂白剤で除菌・脱臭をします。
汚れが落ちるという事は、古色や貫入のいわゆる「味」もなくなります。きれいになる反面、古陶磁や年季の入った陶磁器の趣は、当然のことながら失われます。
そして塩素系の漂白剤を使う場合、色絵や金銀彩のものは装飾が熔けてしまうので使用できません。今回の例では山茶碗を塩素系の漂白剤で除菌・脱臭します。この椀は土が荒いので器面にはたくさんの穴があいています。表面の汚れはさほどありませんが多孔質のため内部にカビが発生したと推測します。
カビ臭いので脱臭が第一の目的です。茶渋などの汚れもこの方法で取り除けますね。
まず水2.5リットルに対して漂白剤25ミリリットル(ここではハイターを使用)を入れてよくかき混ぜます。次に茶碗が丸ごと収まるサイズの容器を用意します。塩素を含む液体なので木材は不可、ステンレスのボウルがよいでしょう。うつわ全体を沈めるので外側の汚れもしっかり落ちます。時間は30分から長くて1日ほどで十分です。
すすぎと陰干し
水で十分にすすぎ真水を入れて放置します。1~2日ほど真水に漬けておき、一日一回水を交換します。私はこの期間は長めにとっています。なぜなら水にさらす期間が短いと塩素の臭いがつくからです。
ただし塩素のにおいがついてしまっても、熱湯で煮沸すれば塩素臭さは抜けてくれます。真水の状態から沸騰させ、沸騰したら弱火にするか火を止めても問題ありません。
強火だと小さな作品の場合は、沸騰した気泡で揺れるので注意が必要です。熱湯が常温になるまで放置しておけば塩素臭は抜けているでしょう。
その後は風通しの良い場所で陰干しをお勧めします。厳密にいえば直射日光では紫外線を浴びるので、気になる方は屋内で乾かすのが良いでしょう。真水に浸けた期間もありますので、数日間しっかり乾燥させます。
これでも汚れと元々のカビ臭さが取れない場合は、上記の漂白を再度行います。2回目以降はやや漂白剤を濃くするか、漂白期間を延ばします。そして手間はかかりますが、真水にさらす工程を繰り返します。もしくは前述のとおり、塩素臭が抜けない場合に煮沸します。
これでほとんどの汚れはきれいに落ちます。漂白剤によって使用方法が変わりますので、使用上の注意をよく読んで、うつわをきれいにしてあげて下さい。