窓絵の技法
窓絵について
窓絵(まどえ)とは主題とする絵を収める枠(=窓)を設ける技法のことです。窓絵の大きさと形を決めたら、あとは窓絵の中にモチーフを描きます。このように主役にはなりませんが、中の絵を際立たせる補完的な役割を果たします。
窓絵は染付をはじめ様々な作品で見ることができます。絵を描くための窓の形もじつに多様です。これは亀甲型の窓絵を輪郭とし、その内部に柘榴(ザクロ)を描いたイメージ図です。亀甲(きっこう)とは亀の甲羅をかたちどった六角形の図案です。
この例では磁器の白い胎土に、藍色の呉須で輪郭と絵付けをしています。窓絵の外側は白いままでもよいですし、別の装飾、たとえば赤絵や金襴手のような別色の装飾を施してもよいでしょう。
あくまでも窓絵は主題である『絵』を引き立たせるための技法となります。柘榴さん、絵心がなくてごめんなさい。
また必ずしも縁取りをする必要もありません。これはロウ抜きの技法を紹介したページで使った画像です。(参考ページ : 蝋抜き | ロウ抜きの技法)
この例ではまず白化粧土の部分にロウを塗ります。ロウソクは釉薬や絵具をはじきますので、周りの部分を自由に装飾できます。そして焼成するとロウソクは焼けてなくなります。本焼成後、白抜きになった窓絵の中に、赤・緑・黄色で上絵を描いて焼きつけています。
白い背景によって上絵がより鮮明になります。そして他の箇所との対比も楽しめますので、窓絵・主題になる絵・他の装飾との構図を考えるのも窓絵の醍醐味といえるでしょう。
このように下地を抜き文様にするわけですから、ロウ抜きのほか、墨はじきの技法でも窓絵を作ることができますね。(参考ページ : 墨はじき | 墨弾きの技法)。つまり絵を描くスペースが確保できればいいので、逆に白化粧を上塗りしても窓絵の要件を満たせることになります。
窓絵の作例について
さて、窓絵がはじまったのは16世紀なかごろの中国(明代)といわれます。景徳鎮をはじめ、江戸時代の日本でも窓絵の手法は数多く残されました。
たとえば有田で焼かれた古伊万里や古九谷、柿右衛門様式には窓絵がよく見られます。陶器においても仁清の色絵牡丹図水差、乾山の色絵紅葉文壺などは窓絵の好例といえるでしょう。
また、朝鮮半島でも18世紀(李朝後期)の広州官窯(こうしゅうかんよう)でも窓絵の技法が用いられます。青花窓絵草花文面取壺など有名な伝世品では淡い発色の呉須と、繊細な窓絵の筆致が面取りの器面とあいまって独特の風情を醸し出しています。
名称が長いですが単語ごとに区切ると分かりやすいです。青花(=染付)・窓絵・草花文(=草花の絵)・面取・壺となります。当サイトでも紹介させていただいた、馴染みある技法との組合せですね。前述のロウ抜きや墨はじきについても同様です。
このように窓絵単独での特別な技法というものは別段ないのです。数ある技法を駆使して抜き模様=窓絵を作り、その中に上絵もしくは下絵を描く。器形は面取り、鎬(しのぎ)、叩き成形etc。窓絵の外側の装飾は、印花、象嵌、掻き落とし、色釉や金銀彩etc。
このように窓絵の技法は、作り手によって成形・加飾・構図の幅は際限なく広がります。別技法の組合せによって、はじめて活きる装飾技法といえるでしょう。