釉薬を自作する その2 | 長石を砕き、灰を水簸する
このページでは具体的な手順について紹介します。まず長石・土灰の例を見ていきましょう。なお藁灰を灰の段階から精製する場合は、土灰の作業手順に準じます。
長石を砕く手順
釉薬の原材料である長石を砕くには段階を追って作業します。原石を大まかに割ったあと少しずつ細かく砕いていきます。
今回用意した道具と用途は以下の通りです。
- 鉄製ハンマー:大ざっぱに割ったあと砕いていく
- 石臼:粒を細かくしていく。はじめはゆっくり挽くこと。
- 乳鉢:粒をさらに細かく。パウダー状にする(完成)
この中で石臼はあまり馴染みがないと思います。用意できない場合はハンマーで細かくしていくことになります。石が飛び散っても大丈夫なよう、周りに敷物があるとよいです。
石臼の利点は、臼の重さを活かして均一に細かく挽ける点です。ただし均一とはいってもポットミルほど均一すぎず、臼の目によって微妙な粒の違いが出ていいですね。
さらに取手を回すだけでとても便利ですが、無い場合はハンマーでひたすら叩きます。そして仕上げに乳鉢でパウダー状にしましょう。
この方法は長石に限らず応用できますね。たとえば鬼板や賀茂川石などの含鉄土石、珪石などの精製も同じ手順で行います。
もちろん石によって硬さはまちまちですが、この作業が基本となります。
なお、粒が粗いと釉調にムラが出ますし、細かすぎると釉に含まれる水分量が増加します。その結果、収縮・膨張率が上がって釉剥がれなどのトラブルも発生する可能性があります。
このようにすり潰す度合いはとても難しいところですね。今回はパウダー状に擂って作業を止めました。これは今まで使った長石の粒度を参考にしています。
灰の水簸手順
さて、草木灰には必ず灰汁(アク:アルカリ分)が含まれています。この灰汁が多いと悪さをしますので取り除きます。
灰から灰汁を取り除く作業は水簸(すいひ)が最も適しています。今回は雑木の灰である土灰(どばい)という灰で、バケツ1個で収まる量です。
先にバケツに水を張ってから灰を溶いていきます。この順だと灰が無理なく溶けてくれます。灰を入れてから水を注ぐと、混ざってはじめ粘るので時間がかかります。
水簸作業の概要は
- 灰を好みの大きさのフルイにかける
- 水に溶いてよくかきまぜる
- 1~2日放置する
- 灰汁の出た上澄みを捨て、水を加えてよくかき混ぜる
手順3~4を何度も繰り返しましょう。上澄みははじめ茶色くなっているはずです。ですが作業を繰り返すうちに透明の水になります。
ただし水は透明でも灰汁はまだ残っています。これは表面にうっすら膜ができるので分かります。今回の作業は1日おきに灰汁を抜き、約2週間かけて作業をしました。およそ7~8回の換水をしています。
ちなみに上澄みを捨てる量は多いほどよいです。バケツに沈んだ灰を巻き上げないよう、できるだけ上澄みだけを捨てるようにしましょう。
土灰の乾燥作業
灰汁抜きが終わったら灰を乾かします。天日干しで灰の灰汁(アルカリ分)が抜けるので、乾燥も大切な作業となります。
まず灰が漏れないよう、キメの細かい手ぬぐいで包みます。画像のようにテルテル坊主のように吊るして乾かします。期間は1週間ほどで十分でしょう。
乾燥すると中で灰が固まっています。それをほぐして新聞紙を下に敷くと、紙が水分を吸って早く乾きます。
完全に乾燥したら天日干しします。こうすることで灰のアルカリ分がさらに抜けて良質の釉になります。屋外に出すと吹き飛んでしまうので、屋内で日当たりの良い場所に安置しておきましょう。
これで灰の準備も出来ました。実際に調合する際には、各材料を乳鉢ですって混ぜます。次の回では釉薬のテスト焼成と検証を行います。