七輪陶芸と鞴(ふいご)焼成の実際

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七輪窯と鞴(ふいご)焼成の実際

 

 七輪に合ったサイズの作品を用意

食べ物を焼く七輪には様々な形状があります。その中でも筒形の七輪を窯として使っていきます。作品は市販の耐火粘土で湯呑みサイズのものを用意しました。

耐火粘土素焼き前

ロクロは使わず手びねりで成形後、2日ほどおいて削って仕上げます。そこから1週間乾燥させた状態です。耐熱・耐火粘土は1,200℃程度の耐火度があり、火が直接かかっても大丈夫です。ですのでこれを七輪窯にそのまま入れて炭の直火で焼いていきます。

 

一般的な粘土では直火による破損の可能性があります。膨張・収縮幅の少ない耐熱・耐火粘土が直火焼成には適していると考えます。

 

今回は炭の灰かぶり作品を取りますので、ただ作品を七輪に放り込むだけです。灰がかぶらないようにするには、七輪の中にステンレスの棒を入れて土台を作ります。そして防護するための匣鉢(さや)に包んで焼けば灰をかぶりません。ステンレスの土台について興味のある方は、こちらを参考にしてみて下さい。(参考ページ : 楽窯(黒楽と赤楽の窯)

 

 七輪を用意する

七輪は窯で使えるよう円筒状のものを用意します。七輪の素材である珪藻土(けいそうど)の質が悪いと破損する場合もあるので、外国産のものではなく国産の七輪を用意しました。

円筒型七輪の用意

余分な金具を全て外してから、穴が開いた部分に粘土を詰めて密封状態にします。粘土は市販の土で1,000℃以上の耐火度があれば問題ありません。この粘土にひびが入る事もありますが、作品ではないので穴が埋まっていれば良しとします。

 

最終的には画像にある取手の金具も取りはずします。七輪だけの状態で焼けた炭を投入し、断熱材をかぶせて焼いていきます。

 

 七輪窯と鞴をつないで準備する

鞴(ふいご)は別のページで紹介した通り、鍛冶屋などで使われた昔ながらの送風機です。窯に空気を送るさいの利点はその「風圧の高さ」です。風をダラダラ送るのではなく、圧縮した勢いのある空気を送ります

 

風圧が高いため炭の灰はそんなに飛び散らない風力でも、窯全体に十分な空気が行き届いてくれます。逆に灰をかぶらせたい時は、取手を小刻みに前後させれば灰を意図的に巻き上げることもできます。

七輪窯と鞴の連結

七輪窯と鞴は図のように連結します。窯の断熱材は七輪より大きめのサイズのものですが、使いやすいサイズのものでよいと思います。同じサイズの七輪を上にかぶせて焼いてる方もいますよね。

 

いずれにせよ、もっとも重要なことは七輪にかぶせる場合に必ず隙間がなくなるようにするという事です。隙間があると外に炎が逃げるため温度ロスにつながります。

 

 炭火おこし

炭は基本的に備長炭(白炭)を使います。備長炭は煙が少なく火持ちも良いので重宝します。火がつきにくい場合や、温度を一気に上げたい時などは黒炭を一時的に使います。黒炭は不純物の残った炭で、火がつきやすく燃えやすいため火持ちが悪い(はやめに燃え尽きる)といえます。

 

買ってきた状態での炭は筒状になっているものが多いです。これを3cmほどにカットする「炭切り」の作業を行い、画像のような状態の炭を使います。これは火おこしから焼成まで使う炭ですので、ナタで均等にカットしておく必要があります。

 

こうすることで炭は酸素を取り込みやすくなり、個々の炭が均等に燃えるようになります。太い(もしくは長いままの)炭を投入すると、燃える部分と燃えにくい部分が出てきます。その結果、均一に焼けない・温度が上がりにくい・逆に急に燃えだして温度が急上昇するといった問題が起こります。各焼成に十分な量を確保してください。

炭火おこし

網目の入れ物で炭に火がついたら七輪に投入します。画像のようにカセットコンロで火おこしをする場合は、必ずボンベのところを濡れタオルなどで保護してください。

 

炭は遠赤外線の力が強いためボンベが熱で爆発することもあります。こうした怖い一面もありますが、この遠赤外線によって芯までじっくり熱が通ります。炭火は見た目より実際の熱量が高いので、十分注意しながら火をおこします。

 

 窯を焼く:火床を作る

新品の七輪には防水のためでしょうか、表面に塗料がぬってあります。この塗料は焼き飛ぶといやなにおいが出るため、事前に少しでも焼き飛ばしつつ、七輪窯の温度を上げるために窯を焼きます。

七輪窯の窯焼き

これは塗料を飛ばすためと、窯を少しだけ温める程度にとどめます。七輪が温まると底に火床(ひどこ)ができて、炎が偏らず均等に焼けるようになります。時間にして20分〜30分くらいで十分でしょう。1回目の焼きで塗料は全てなくなりませんが、何もしないよりは格段ににおいが少なくなります。

 

作品は湯呑みサイズ(小型)であること、耐火粘土であることから、多少温度が高くても水蒸気爆発は起こらないと判断しました。作品は十分に乾燥させてますので作品を入れてフタをします。

七輪窯の窯焼き

作品を入れてからは少しずつ温度を上げていきます。急激に温度を上げると作品の表面だけが焼き締まってしまいます。その結果、内部に閉じ込められた水分によって破損することもあります。

 

今回は耐火粘土なのでやや強気で温度を上げていきました。炎の色が暗いオレンジ色の段階ですと、窯の温度は200〜300℃の低温であると判断します。温度が上がるにつれてより白っぽく透明な炎になってきます。

 

焼成時間は窯の仮焼で20分ほど、作品を入れてから約90分かかりました。序盤は炭を少なく(3cm四方のかたまりを4〜5個)します。

 

鞴(ふいご)の取手を一定間隔でゆっくり動かして、暗めのオレンジ色(推定200〜300℃)からやや明るめのオレンジ色(推定800℃)まで60分程度の時間をかけます。夕焼けの空をイメージしながらゆっくり温度を上げていく感覚です。手も疲れますし段々と焦れてきますが、徐々に温度を上げていけば破損する可能性は格段に低くなります。

 

 色見と推定温度

焼成中は鉄製のトングで作品を挟み、裏返したりして焼きの面を変えていきます。面を変えたら保温させるため断熱材にもフタをして空気を送り続けます。

 

炎がやや小さくなったらフタをあけて少しずつ炭を足します。一気に炭を入れると急激に温度が下がるので、序盤(はじめの60分)は燃え尽きるくらいで炭を足しながら800℃〜900℃を目指します。

色見と推定温度

七輪本体は炎の色が外から見えません。したがって画像のように断熱材の色と隙間の炎の色から温度を推定していきます。断熱材の全体がオレンジ色になっていることから、均一に温度が上がっていると考えます。また、隙間から覗く炎の色が明るく白味を帯びているので、約800℃〜900℃の温度帯と推定します。

 

この状態になるまで約60分かけています。800℃〜900℃になると作品の素地が酸化・還元状態の影響を受け始めます。よってここからは窯の内部における酸素量の調整を行います。

 

空気が十分であれば「酸化状態」、酸素が足りなければ「還元状態」になります。鞴のスピードは序盤より早めますが一定の速度を保ちます。送る空気量を一定にして燃料(炭)の投入によって酸素量を変えていきます

 

つまり炭が焼けてから投入するサイクルならば「酸化」、燃え尽きる前に投入するサイクルならば不完全燃焼により「還元」気味になります。焼きながらの撮影なので画像が撮れていません(笑)実際は還元をかけるため不純物の多い黒炭(3cm四方のもの)を5つほど追加して約30分焚き上げました。

 

酸化状態では七輪の中で澄んだ炎がうっすらと見えます。逆に還元状態ではメラメラと炎が揺れる様子となり、窯の内圧が上がるので鞴を動かすと炎が隙間から吹き出してきます。酸化・中性・還元の状態を体験するには理想的な状態です。すぐ目の前で作品が焼かれているのです!

 

なお写真を撮るときは熱風が目に見えないので、カメラを近づけすぎないようにしてください。スマホでも同様ですがレンズが一瞬で傷むおそれがあるので注意が必要です。

 

 窯出しと急冷

作品を直接見るとオレンジ色の作品の表面が光ってきます。かかった灰が熔けて表面にツヤが出てくるわけです。その状態を確認したら10分ほどその状態で焼き続け、鉄製のトングで作品を取り出します。

七輪陶芸_窯出しと急冷

取り出すとすぐに作品の色が変わり始めます。画像では高台部分と口縁部がすでに黒ずんできていますね。これは温度が低くなった部分を示しています。

 

ボディがやや黒ずんできた時点でトングで挟んで水に入れます。用意するバケツは必ず鉄製のものにします。プラ製のものは作品がちょっと触れただけでも、あっさり熔けてしまうからです。

 

水に入れるさいの注意点としては、必ず口縁部(薄いところ)から水につけます。トングで挟んだ湯呑みで水を掬い取るようにつけると、口縁・ボディ・(厚みのある)高台部と順を追って水に浸かります。

 

なお、ゆっくりつけると部分的に温度変化が出て割れます。したがって上記の手順で一気に水に浸します。この急冷方法で土と灰に含まれる鉄分が黒く発色します。瀬戸黒や黒楽茶碗などもこうした「引き出し黒」と呼ばれる急冷方法を採ります。

 

 耐火粘土の焼き味

さて耐火粘土の焼き上がりですが、普通に電気窯で焼くとレンガのような茶色(単色)の作品になります。茶一色で焼き味の変化も全くない状態になります。

 

これは七輪窯と炭・鞴(ふいご)で焼きあげた作品です。全体的に灰をかぶり、還元気味に焼けた黒っぽい肌など表情が豊かになります。

耐火粘土作品1

これは水で急冷した直後に撮影しています。「無釉焼き締め!」といえば響きはかっこいいのですが、要するに何もせず七輪窯に放り込んだ作品です。ただの耐火粘土ではなく「備前だよ!」と言っても私の家人ならば信じてしまうかもしれません。

 

 まとめ

構成としては市販の耐火粘土、市販の七輪、中古の断熱材、ウバメガシの備長炭(白炭)8割・ナラの黒炭2割、鉄製のトング、鉄製のバケツとなります。

 

窯の使用回数については焼成時間と、七輪の底にたまる自然釉の量に左右されます。

  • 本体が崩れるほど重度の割れが生じる(修復不可)
  • 炭の灰で七輪の送風孔がふさがってしまう

軽度のひび割れならば粘土で埋めれば使えます。しかし送風孔が熔けた灰で埋まると使えません。焼成するたびに少しずつ灰(=ガラス)で埋まってきます。使えなくなったら七輪を交換します。

 

焼成の注意点としては

  • 序盤(はじめの60分):急いで温度を上げない。炭は燃えきるくらいで追加する(=酸化状態で温度を上げていく)。鞴は押しと引きを等間隔にして「ボーー・ボーー」と二拍子から「ボー・ボー・ボー・ボー」と四拍子!
  • 中盤(60分〜70分):鞴のペースを上げて「ボー×8回」八拍子!やはり押し引きは等間隔で。色見で温度を推定し、800℃あたりから酸化・還元の調整を行う(=炭の投入方法による調整)。
  • 終盤(70分〜):黒炭を投入して攻め焚き。灰を巻き上げるなら鞴の押し引きの間隔をせばめて「ボッ・ボッ・ボッ・ボッ」と八拍子。作品の表面を見て釉(今回は炭の灰)の熔け具合を見る。ツヤがあれば熔けていると判断して、そこで引き出すか、もう少し焼くか決める。

このケースでは最終的に1,000℃を超える温度帯まで鞴を吹きます。後半はかなり疲れますし、汗もかくので塩分をしっかり採りましょう。また換気を十分に行える環境で、火消し用の水をしっかり確保します。

 

鞴は押し引きの音を聞くだけにして見ない(=音だけを意識すると等間隔に押し引きできます)、何よりも七輪窯の色見に集中するとよいです。じっくり窯を観察して炎が弱まれば炭の追加タイミングとなります。

 

耐火粘土作品2

左が今回の作品ですが、右は別の方が同じ方法・同じ材料で焼いた作品です。焼き方によってこれだけ表情が違ってきます。

 

左は黒味を帯びて還元気味に焼かれた一方、右の作品は酸化気味に焼かれたのでしょうか。炭の灰が黄色い自然釉となって美しい景色になっています。中盤からの窯の酸素状態(酸化・還元)による差が出ています。

 

ちなみに右の作品は、私が七輪と鞴焼成をするきっかけになった作品です。はじめは薪窯の灰が飛ぶところに窯詰した作品だと思いました。土味もよくただの耐火粘土とは予想もつきません。焼成も数日かけて焼かれた雰囲気です。

 

それが七輪の窯でしかも短時間で焼けると聞いて正直驚きました。備前の黄ゴマのような景色と渋さに惹かれて「自分も作ってみたい!」と七輪焼成のきっかけになった作品です。

 

さて、引き出しの際の注意点については

  • オレンジ色が7割がた収まる(=全体の温度が下がる)のを待つ
  • 薄いところ(口縁)から一気に水につける

 

なお、焼成時間は土の性質や作品の厚みによって変えていきます。割れやすい土ならば、焼成時間を延ばしてより緩やかに温度を上げます。厚めの作品でもやはり焼成時間を延ばします。

 

作品は七輪に収まるサイズであれば、ぐい呑み・小型の花入・茶碗・ジョッキ・小皿などいろいろと挑戦できるでしょう。最終的な温度は1,000℃を超えてきますので施釉作品も十分焼けます。実際に私の知人が作っていますが、匣鉢(さや)など窯道具を使えば灰をかぶらない作品も作れます。

 

七輪の窯では目の前で刻々と焼成状態が変化します。そして小型の窯は外部の温度など環境の変化をダイレクトに受けます。焼きが甘ければ土が締まらず水漏れしますし、短時間で温度を急に上げれば破損もします。「やきもの」を焼き遂げる難しさが詰まっています。

 

こうした難しさ・シビアな状況がある一方、焼きの実際が分かる楽しさと達成感も味わえます。炭に含まれるかすかな湿気や鞴の取手の重さ、噴き出る炎とその色など体験として十分すぎる内容となります。

 

そして比較的お手軽に焼成できる点も、小型の窯ゆえの魅力といえるでしょう。

 

 

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