鶴首徳利
鶴首徳利について
鶴首徳利(つるくびとっくり)とは首の部分が細長い徳利のことです。鶴の細長い首に例えられた呼び名で、別名 首長徳利ともよばれます。代表的なものは焼き締めの備前のほか、有田・伊万里などの磁器にもみられる器形です。
特に備前の鶴首は胡麻(ごま)・火襷(ひだすき)・桟切り(さんぎり)など、窯の炎による土の変化(=窯変:ようへん)を楽しめる点でおすすめです。
底から肩までは丸みを帯びた形で、首は細長い作りになっているものがほとんどです。うつわの座りがよく酒器としてはもちろん、細長い形状から一輪挿しにしても良く合う形といえます。
首の部分に装飾が施されている磁器や陶器もあれば、画像のような焼き締めで多様な景色を持つものもあります。この作品は首の一部に窯変が見られ、左側には窯の炎と薪の灰の跡が変色して景色になっています。
丸みを帯びたボディには桟切り(さんぎり)の跡があり灰色・暗褐色の窯変がうつわを彩ります。胎土が赤褐色に焼きあがった箇所と、桟切りの灰色が混ざり合い複雑な色調を見せてくれます。
窯変と土味を楽しむならば備前がよいでしょう。また雰囲気は変わりますが、白っぽい焼き上がりと火襷の組合せも備前のひとつの作風として面白いと思います。
この作品の首の長さは鶴首の中では標準的といえるサイズです。割合として半分ほどが首になりますが、もっと長めの鶴首徳利もあります。首は口縁に近づくと少し太くなるのが一般的です。
この長さで作品の雰囲気がガラっと変わりますので、作品をいくつも見るうちに気に入った長さが自ずと決まってくるでしょう。
鶴首徳利を選ぶさいは首の長さと全体のバランス、焼き締めならば窯変の景色、施釉ものならば釉調の好みで選びます。形としてはまっすぐな鶴首以外にも、やや傾いた首や太さが一様ではないもの、首の部分にロクロ目の残ったものなど多岐にわたります。
個人的には首がまっすぐに伸びて口縁部に近づきやや膨らむタイプ、画像のようなシンプルな形状がよいと考えます。
肩がやや衝きだした作品もありますが、やはり全体のバランスを見て選ぶとよいです。肩が衝きだしたものはどっしりと存在感があり、なで肩で張りのない作品は柔和な印象でそれぞれ美しいと思います。この作品は張りのないおだやかな形ですね。
口作りは酒が注ぎやすい形ならば良いです。この作品はV字にくぼんでいます。つまり口縁の形と同じで均一な厚さでロクロ引きされています。
口縁の内部が平らな作りだと、傾けたときに長い首から一気に酒が出てきます。慣れれば問題なさそうですが、V字にくぼんでいる方が注ぎやすく酒のキレもよいので使い勝手がよいです。口縁部を持たず筒形の口のものは一輪挿しの方が向いているかもしれません。
こちら側は灰をかぶった側面です。冒頭の画像と比べると地味で全く違った雰囲気になります。肩から首がはじまる箇所と細長い形状、口縁に近くなってやや膨らみができるところがよく分かります。
口縁部近くの微妙な首の膨らみと、内部のくぼみに液体がたまって少しずつ注ぐことができます。このように作品の作りを見ていくと、おおよその使い勝手が分かることでしょう。
全体の景色・手取りと口縁部の作り・鶴首の長短で選ぶと間違いがありません。優美な鶴首徳利の魅力を楽しんでみて下さい。