芋徳利(いもどっくり)
芋徳利について
芋徳利(いもどっくり)とは形による呼称で、芋のように膨らんだ胴が名の由来です。主に古備前に見られる器形で中~大型の作例がよく見られます。
したがって酒器として使うだけでなく、花入として使うにも程よいサイズといえます。
高さ25cm、胴幅は約12cm
徳利として使う場合は相当な量が入ります。一人では到底まかないきれない酒量なので大人数で飲むサイズでしょう。
この姿は典型的な芋徳利の形です。首は短く肩はなで肩で、胴の部分がゆるやかに膨らむ形状が特徴です。
備前の土味によって素朴な姿がより美しく引き立てられています。
腰から底にかけては窯変が見られます。この作品における大切なアクセントになっています。
こうした景色の善し悪しと、用途に応じたサイズで選ぶことになるでしょう。
備前は徳利として使っても酒が美味くなりますし、花器として用いても水が汚れにくく長持ちします。さらに侘びた土味が花を引き立ててくれます。
また無釉焼き締めの肌は手取りが温かく、ザラついた質感としっとりとした感触が楽しめます。これはきめ細かい備前の土が持つ「やきもの」ならではの手触り感です。
口作りと肩
口縁の作りはオーソドックスな形で、液体が切れやすい形状をしています。肩には張りが無いため穏やかな印象を受けます。液体を注ぐ際に肩に起伏が無いので手がよく馴染みます。
肩の回りには一様に灰が降りかかっていますね。その灰が溶けて胡麻(ごま)と呼ばれる景色になっています。黄色味を帯びているため黄胡麻と呼ばれるものです。
胡麻の景色は備前焼のひとつの見どころです。そしてこの天然灰による装飾は、見た目の美しさと独特の手触りをもたらしてくれます。
胴から底の窯変
胴から下は窯変の多様な色彩が見てとれます。備前の土は地味に見えることもありますが、このような窯変による意外性、色調の変化が大きな魅力といえます。
こうした発色が器面全体にあると華美に過ぎるかもしれません。あくまでも一部に表れた窯変が、さりげなくちょうど良いと考えます。
徳利として、または花器として。備前焼に多くみられる芋徳利は備前の純朴な土味と窯変が魅力です。その質感を楽しんでいただければと思います。