陶磁器の選び方
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日用使いのうつわを選ぶ

 

 暮らしの中のうつわたち

普段私たちが使う陶磁器にはどんなものがあるでしょうか。それは人によって違いますが、毎日抹茶を飲む人ならば抹茶椀、料理を楽しむ人なら平皿かもしれません。

 

あるいは晩酌が欠かせない人にとっては酒器が大切でしょう。花を挿して楽しむ人は毎回同じ花器だと、時には別の花入が欲しくなるかもしれませんね。

 

いずれにせよ、自分が心から気に入ったうつわを使う時は心躍る瞬間でもあります。日用使いのうつわでは食器が一般的ですが、たとえばお気に入りの飯椀で食べるご飯はどうでしょう。

 

普段はあわただしい日常だとしても、時には椀を眺めてゆっくり食事をするのも贅沢な時間ではないでしょうか。

 

また私の身のまわりでも、友人や家族がお気に入りのうつわでもてなしてくれることもあります。それは一杯のコーヒーや一皿の菓子であっても、その人が大切にしているうつわでいただくと幸せな気持ちになります。

 

何よりも陶磁器を大事にするその人をみると心が和みます。「よく分からないけど昔から好きなんだ」とか「料理が美味くなるよ」と談笑するうちに、我がことのように嬉しくなることもあります。そのうつわを見ると当時の光景をふと思い出すことさえあります。

 

さて、こうした日用使いのうつわには共通する事があります。

 

それはじかに手で触れるということです。実際に手に取って使うものだからこそ、選ぶ際にはじっくり見て触れてみることが大切です。

 

 選ぶさいに大切なこと:直視する

まずは手に取って「じかに見る」ことです。まっさらな気持ちで値段も作家も桐箱の存在も忘れてただ見ます。つまり先入観を持たず作品を純粋に見ることを心がけるとよいです。

 

作品の値段や説明書き、箱書きの有無や銘など。こうした情報があるとそこに囚われてしまって、純粋に作品をみる妨げになることがあります。

 

たとえば30万円の茶碗と3万円の茶碗があるとします。値段を意識しすぎると「30万の方(高い方)がよい物に違いない」と思い込んでしまう場合もあります。

 

しかし実際そうとは限らないですよね。安価でも良い作品はいくらでもあります。気に入った作品があれば必ず手に取ってみましょう。

 

 手に取って使う光景を想像する

実際に作品に触るとさまざまな事が分かります。思ったより手取りがよく手に馴染む、高台の削り跡の感触が心地よい、近くで眺めると釉がとても美しいことに気づきます。手に取ってはじめて作品そのものが見えてきます。

 

まずはじめに基本的なポイントを確認します。

  • 全体:割れや欠けがないか。口縁や高台部など縁をよく見ておく
  • 釉調:釉薬のはがれがないか。色ムラは好みの範囲内であれば可
  • フタもの:とくにフタの裏側と縁の割れ・欠けを確認する
  • 高台:極端に引っかかるような凹凸が無いか。小さい凹凸ならヤスリをかけても可

次に全体の色合い・手取りの良さ・置いたときの安定感はどのうつわにも当てはまると思います。色や装飾でいえば、食器皿ならば盛り付ける食材が映えるよう、シンプルな色調(例えば白で装飾なし)は飽きが来ませんし、椀形のうつわであれば多少の装飾があっても目を楽しませてくれます。

 

また酒器であれば、酒を注ぐぐい呑みの見込みの美しさ、手取りの軽さや高台の削りと座りのよさ、口をつける口縁の作りも重要です。徳利であれば作品の装飾・意匠のほかに、酒の注ぎやすさも使う上でポイントとなるでしょう。

 

そして使っている光景を想像してみます。これはものが売買される場所では日常的に繰り返されることです。たとえば服の試着や車の試乗も、使っている光景が浮かぶ点では同様のことといえるでしょう。

 

 買わないという選択

ここで使わないと思ったら見送ります。店員がどんなに親切でも「使わない」感覚を信じて買わないことです。

 

というのも使うイメージができないものは実際に使われないからです。なんとなく買ってしまい、なんとなく置いてあるだけのうつわ。もったいないし陶磁器もかわいそうですよね。

 

使われない陶磁器は雑然と積まれて傷んでいくか、ダンボールに封印されて放置されるか、最終的に廃棄処分や下取りに出されることになります。

 

日用使いのうつわをはじめ、長年使われない陶磁器は生気を失います。水をくぐらせてようやく生き返るようにも思えます。

 

収納スペースに余裕を持てば、うつわが傷む可能性もおさえられます。そして自分で使いたい、人をもてなしたいと思えるうつわを手に取って選んでみて下さい。

 

仮に数が少なくてもそれは問題ではありません。気に入ったうつわに囲まれるうちに、その作品や作家、大切な人を通じて「このうつわを持っていて良かった」と思える瞬間がきっと訪れるはずです。

 

 

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