斑唐津(まだらがらつ)
斑唐津とは
斑唐津(まだらがらつ)は唐津焼の一種で白濁した藁灰釉(わらばいゆう)を用います。唐津焼が焼かれはじめた16世紀後半から現代まで作り続けられています。器種は酒器・食器・花器・茶陶など多岐にわたりますが、中でもぐい呑みや茶碗の人気があるといえます。
藁灰釉の表面が斑状になることから斑唐津と呼ばれます。この黒い斑点は素地の鉄分によるもので、藁灰の斑文の中でアクセントになっています。どの面から見てもそれぞれ表情が違います。
斑唐津の特徴は白っぽく乳濁する釉薬と唐津の土味でしょう。酒を注げば見込に美しく映え、抹茶の深い緑は白色の釉とよく合います。唐津の土は採取場所による個性が強いですが、総じてざんぐりとした温かみのある土味が魅力です。
釉薬のかかっていないところを「土見せ」または「露胎(ろたい)」といいます。胎土そのものの質感と、淀んでは流れる釉薬との調和がうつわの個性となります。斑の釉調・土味・手取りでじっくりと選ぶのがよいでしょう。
焼成によっては乳白色の中に青味がさすものもあります。これは還元焼成されたさいに発色する青味で、酸化気味に焼かれるとやや黄色味を帯びた色になります。
これは別の作品ですが見込に流れる青白い釉調もなかなかよいです。酒を注ぐと見込みの乳白色が揺れて輝くようで杯が進みます。高温で焼かれたのか釉がだいぶ流れていますがこれも景色になります。
高台回りについては土見せの多い唐津の醍醐味ともいえるでしょう。私は酒器展に行くと片っ端から高台を見て回ります。とりあえず頭を真っ白にして見るといい買い物ができると思います。
斑唐津はその斑文・見込みの美しさが見どころですが、まずは無心で見て「これがいい」という直感は誰しも大切にしたほうが良いです。第一印象で何となくよかった作品は意外と手元に残るものです。逆に雑念だらけで買った作品は割とすぐ飽きてしまいます。皆さんもそんな経験はないでしょうか。
高台は内側を三日月型に削っています。これは中心をずらしてロクロに乗せて削ったもので三日月高台といいます。畳付きには糸で切り離した跡が残っています。
陽をあてると削った肌あいもよくわかります。この土は山瀬の原土を乾燥させてはたき土で作っています。地元の土に灰をかけて近隣から採れた薪で焼く。豊かな自然と炎から斑唐津が生まれます。