陶芸作家で選ぶ
現代陶芸作家
陶芸作家の魅力はその独自性にあります。誰のものか一目でわかる作品は、かけがえのない一品といえます。
陶芸作家と呼ばれる人々は数えきれないほどたくさんいます。しかしその中で自分が知らない作家と作品を探すのはじつに楽しいことでもあります。そのうえ気に入った作品に出会えた時にはこの上ない喜びがあります。
未知の作家を知るきっかけは取扱店のほか広告や雑誌、展示会、インターネットなど多岐にわたるはずです。作品をじかに見て気に入った作品があれば作家の略歴をみてみるとよいでしょう。
略歴には客観的な情報が詰まってます。その作家の軌跡が書いてあります。窯の移転歴や誰彼に師事していたとか、公募展の受賞歴などその作家のことがよく分かります。「○○年から作陶を始めた」という内容だけでも作品を求める人がいる限り立派な略歴です。
情報発信の大切さ
そして公募展の出展歴はなくても素晴らしい作品を作る陶芸家はたくさんいます。2010年の話ですが、ある作家と話をすると「(この店の)DMで来てくれたのですか?」と聞かれました。
私は販売店のホームページであったりDMで知ることが多いですが、最近は個人で情報発信している陶芸家が増えたと思います。上記の作家は本人のブログがきっかけでした。
そのまま話すとその作家さんはとても喜んでいました。自分で「集客できた!」ということですから、作家がきっかけで来店者が増えるのは、店舗側としてもお互いに良い傾向だと思います。
サイトを持つ、またはブログを始める陶芸家が増えるのは素晴らしいことです。インターネットがこれだけ普及した現代では、ギャラリーと陶芸家の立ち位置や宣伝方法も変わってきて当然といえます。
その作家から「何でもいいからアドバイスが欲しい」といわれました。偉そうに物申せる立場ではありませんが、私はその作家のブログで2つ惹かれた点があります。
- 失敗をそのまま公開している
- 対策や作り方を公開している
シンプルな内容ですが、水が漏れた土で再チャレンジしたさい、叩きで土を締めて成功しています。基本的な作業内容も載っていて、分かりやすくためになる内容でした。ですので「もっと技法を公開するのはどうでしょうか。人によっては興味持ちますよ」と言ったところ「真似されてしまう」という事でした。
残念だなと思いました。人柄も作陶内容も作品も宣伝できる場なわけですから。企業秘密まで明かす必要はありませんが、作陶の工夫や一部のノウハウを教えても、その作家と同じものは作れないはずです。
また、作品の画像はインターネット上に溢れかえってますが、作家の思いや日常の作陶風景はまだ情報が少ないと思うのです。アメリカで陶芸が盛んな理由は、動画(you tubeなど)や勉強会で情報開示することによって、陶芸家と一般人の垣根を低くしてますよね。今後は日本でもそうなっていけばいいなと思います。
作家の特徴を知る
最後に作家の特技を把握しておきます。たとえば唐津の作家で主に酒器を作っている作家がいるとします。たとえばこの作家が単発で織部の酒器を焼いたらどうでしょうか。
作品として珍しくて面白いと思います。しかし質が熟練度と比例すると考えれば、本筋の唐津のほうが質は高いでしょう。客観的にみればこの作家の得手は唐津なのです。
阿部出版の「陶芸の名品」という本があります。「巨匠たちのアナザー・ワールド」と題して荒川豊蔵の焼いた備前・唐津の徳利が載っています。本にも秀品とありますし、荒川豊蔵は素晴らしい唐津をたくさん焼いています。しかし志野・瀬戸黒の完成度と比較するのは難しいのではないでしょうか。
したがって作家の本領の中から作品を選ぶのが間違いが少ないです。
会場に作家がいる場合は話かけてみましょう。貴重な話を熱心にしてくれる作家もいます。その一方でほぼ何も話してくれない作家もいます。作り手と話すことで作品がより多角的にみえてきます。
どんな窯で作っているとか、この土はどんな粘土か、この作品はこうして出来たと聞くと、作品に対する思いを垣間見れる気がします。こうした陶芸家とのやりとりも楽しみのひとつといえるでしょう。