井戸茶碗の魅力
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井戸茶碗の魅力

 

井戸茶碗は高麗茶碗の一種です。高麗茶碗とは朝鮮半島から渡来した茶碗を指します。これらは高麗王朝のあと、李氏朝鮮時代(1392年~1910年)に作られたものです。

 

16世紀はじめには日本に渡来し、時の戦国大名や茶人・豪商たちを虜にした名物として現代に伝わります。また、現代作家による抹茶碗をはじめ、ぐい呑みや汲み出しも各地で作られています。

井戸茶碗_とうろじ

現代作家の井戸茶碗。使って育てる楽しみがあります

 

井戸は茶椀の最高峰とも評されますが、李朝では日用雑器として作られたといわれます。または祭器との説もあれば、白磁を模した試作品という見解もあります。この謎も興味をひかれますね。

 

 井戸茶碗の魅力

井戸茶碗の魅力は簡素な美と安穏たる佇まいでしょう。古くから伝わる伝世品を間近で見れば、器面のひびも繕いも吸い込まれるような深みを湛えています。

 

その多くは各地の美術館と個人に収蔵されますが、根津美術館(東京都港区)の特別展で全国の名物が一堂に会した事があります。「戦国武将が憧れたうつわ 井戸茶碗」と題された展示会では国宝である喜左衛門をはじめ実に70余点が展示されました。

 

実物をじかにみるとその自然な作りがよく分かります。400年前から伝世する名物という固定観念をはずす必要があります。長い説明文は最初に熟読すると先入観が強まってしまいます。

 

ただ茶碗だけみれば「井戸の約束事」や「一井戸、二楽、三唐津」もひとつの目安なのだと思えてきます。もちろん参考になるのですが、盲信すると目の前の茶碗がよく分からなくなります。

 

 井戸茶碗の約束

井戸茶碗の約束

  • 琵琶色(びわいろ)の釉薬:酸化焼成で琵琶色、還元で青っぽい焼き上がりになります。
  • 総釉(そうぐすり)であること:うつわ全体に釉薬をかけていることを指します。
  • 魚子貫入(ななこかんにゅう):細かい貫入の事で魚の小さい鱗にたとえ名付けられてます。
  • 竹節高台:竹の節のように高さのある高台のこととされます。
  • 轆轤目(ロクロ目):3段~5段ほどのロクロ目が残るのが約束とされています。
  • 梅花皮(かいらぎ):高台周辺の釉薬の縮れのことを指します。
  • 渦巻き兜巾:高台裏の刳り貫き部分を指します。中心に兜巾状の突起が見られます。
  • 見込の目跡:3~5つの目跡(*)があるとされています。* 重ね焼きをする際、複数のうつわがくっつかないようにある工夫をします。それはうつわ同士の間に粘土などを入れて焼くことです。結果、その粘土の跡が残りますがこれを目跡といいます。

 井戸茶碗の分類

  • 大井戸・・・大ぶりで堂々とした器形が特徴です。名物が多いため名物手とも呼ばれます。代表作「喜左衛門井戸」など。
  • 小井戸・・・大井戸と比べ見込が浅く高台が小さいものを指します。代表作「老僧井戸」など。
  • 青井戸・・・色は青味が多く、灰色・琵琶色のものもあります。共通点は高台の上から口縁までほぼ一直線の器形です。代表作「柴田井戸」など
  • 小貫入・・・伝世品が少ないと言われています。器形は小井戸に準じ小さく細かい貫入が入ったものと分類されます。

約束事だけでもたくさんありますが、私が知らない決まりがもっとあるかもしれません。ただ、まずは目の前にある井戸茶碗を色眼鏡なしで楽しむ事が大切です。

 

逆に約束事を全て満たす作品があるとすれば、それは意図的に作られた注文茶碗でしょう。または「伝世品」と称した骨董品をみていると、約束事をほぼ満たした作為満々の贋作を目にすることもあります。名品における銘も約束事もたくさんの井戸を見た結果、後から人が作ったことなのです。

 

たとえば会場にあった茶碗たちは、初めから名物を意図して作られたのではないはずです。雑器説を信じるならば自然と生まれてきたのが井戸茶碗のはじまりといえます。

 

茶碗を選ぶさいにも約束事や他人の評にとらわれず、自分の気に入った作品を手に取っていただくのが一番です。それがあなたにとって純粋に良い井戸茶碗なのです。

 

 

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