徳利の魅力
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徳利と花器

 

徳利の形は大きく分類しても約20種類の徳利が存在します。細かく分類すればその種類は無数に存在します。徳利は酒器の中でも人気が高く、ぐい呑み同様コレクターがいるほどです。

 

徳利と一口にいっても形や使い勝手が違います。ものによっては酒の味も変わってきます。徳利はぐい呑みよりも容量が大きく酒をためておく時間も長くなります。したがって、日本酒など味にこだわる人は徳利をより慎重に選ぶ場合が多いと思います。

 

たとえばガラスのぐい呑みで飲み比べると、青白磁の徳利より備前徳利の方が味が柔らかいです。もちろん相棒であるぐい呑みによっても味が変わるので組合せを考えるのも一つの楽しみです。

 

一般的に言われるのは「備前の徳利、唐津のぐい呑み」という取り合わせです。とくに備前・信楽・伊賀など無釉焼き締めの徳利は酒の味をまろやかにする傾向があります。

 

はじめこの言い回しに抵抗がありました。それは酒を楽しむ当人が決める事だと思っていたからです。しかし酒をたしなむうちに華美なものから落ち着いたものへと趣向が変わってきました。

 

酒の味だけではなく、素朴で飽きの来ない備前をはじめとする焼き締めの徳利。使いこむうちに酒を吸って肌やうつわの表情が変わってきます。こうした経年変化を酒器を「育てる」と表現しますが、不思議なことに無色の酒が徳利の色と味わいを深めてくれます。育てた徳利は年月とともにより愛着が深まることでしょう。

 

唐津は施釉陶器ですが、たとえば斑唐津のぐい呑みは酒を注ぐと見込の斑文が美しいです。やや極端な言い方ですが、味は徳利・見た目はぐい呑みといえるかもしれません。

 

あとはぐい呑み同様、徳利の手取りで選べば間違いないと思います。酒がすすむうちに徳利を落としてしまっては困りますよね。手にしっくり馴染むか、滑りにくく大きすぎないか、重心が適度にあって置いた状態で揺れがないか念のため見ておきます。

 

また、口縁のつくりで酒の滴がよく切れるかどうかも分かります。たとえば口縁の一部がやや三角状なら酒を注ぎやすく滴が切れやすいものでしょう。酒のキレが悪い徳利だけは個人的に使う頻度が下がりますが、ここもご自身の感性で選んでみてください。

 

 徳利と一輪挿し

さて、こう書いていると徳利は呑兵衛の独占物のように思えてしまいます。しかし全くの下戸でも徳利を買う人がいます。それは何に使っているのでしょうか。

 

実は花器として使われるものもあります。

 

代表的な例は舟徳利(ふなどっくり)が挙げられるでしょう。これは船で揺れても酒がこぼれないと言われるほど底が大きい徳利です。備前のものがつとに有名で唐津・丹波のものもあります。

 

こうした底の作りが大きいものに首長の砧徳利(きぬたどっくり)と体の丸い蕪徳利(かぶらどっくり)があります。舟徳利とあわせて茶の湯の席では花器として使われてきました。

 

徳利を花器にするなんて論外と思う人がいるかもしれません。私もはじめは問題外ではと思っていました。茶の席は筋違いなものも置くのかなと。

 

しかし茶の湯のはじまりを考えれば全く逆だとわかります。筋違いで頭でっかちなのは私の方なのです。

 

そもそも名物である井戸も熊川も、茶碗ではないものを茶碗に見立てたわけです。水指しも茶入れも同様です。黎明期の茶人の慧眼には畏敬の念を抱きます。

 

ゆえに徳利を花器に見立てるのも自由闊達な目と遊び心に根差します。理屈にとらわれなければ徳利にも花器にもなりえるのです。

 

手に取って酒をたしなむにかなうもの、花をいける場を想像して花が活きると感じた作品をじっくり選んでみてください。

 

 

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