蕎麦釉 茶葉末釉
蕎麦釉とは
蕎麦釉(そばゆう)は鉄釉の一種で緑~黄色に発色します。日本では蕎麦釉と、中国では茶葉末釉(ちゃようまつゆう)と呼ばれます。その発祥は7世紀の中国(唐の時代)までさかのぼります。
緑色と黄色が混ざった釉薬は蕎麦の実のようにも見えます。または茶葉の粉末の色にも見えてきます。こうした釉調から蕎麦釉・茶葉末釉という名前が付けられました。
釉薬自体は灰釉に鉄分を加えたもの、鉄化合物を主体としたものでポピュラーな釉薬です。日本各地で作られる素朴な黄色と深みのある緑色が特徴です。
薩摩の蕎麦釉
さてこの画像は薩摩の苗代川焼(なえしろがわやき)の花器です。一般的によく見られる色合いで、緑色の中に黒い小さな斑文が無数にあります。深みのある緑に発色しています。
緑色の発色となると織部釉のような銅釉を思い起こします。しかし鉄釉も緑や青の発色を得ることができます。還元焼成による青味と冷却過程で鉄分の黒い発色により深みのある緑になると考えます。
薩摩は黒薩摩と白薩摩が有名ですが、蕎麦釉は日用雑器として素朴でよい作品が多いです。もちろん蕎麦釉は日本各地の窯元で作られているので、自分の好きな作品を選ぶと良いでしょう。その際は無地で過度の装飾がないもの、黒斑が少ないものをお勧めします。
次は同じく苗代川焼の茶入れです。こちらは黄色みを帯びた発色です。酸化焼成されるとこうした黄色い色になります。
冒頭の花器と同じような斑文がみえます。黄色の釉薬の中に茶色の斑が浮き出ています。この茶色も土と釉薬に含まれる鉄分による発色でしょう。斑文が適度な量であれば美しい景色となります。
釉調を見ると中央に二筋の釉流れが見えますね。茶入れは景色のあるところを正面にするので、画像の面が正面となるでしょう。色の目安としては釉薬の光沢が少なく渋い色合いがよいと思います。
もちろん光を当てればどんな作品も多少の光沢は出ます。中でも艶が出すぎた光沢の作品を避ければよいでしょう。日用使いの作品としてこの渋い色合いはとても良いと思います。
さて、土は赤みを帯びた発色をしています。よって胎土にもそれ相応の鉄分が含まれていることが分かります。
この角度にすると作品の釉調・肌合いがよく分かりますね。まとめますと無地の作品で釉調が単調ではなく、光沢と斑文が少ないもの。蕎麦釉の純朴な美しさを楽しんでみてください。