高台の遊び心
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高台の遊び心

 

 高台の見どころについて

高台は底の部分ですので、普段あまり気にかけない箇所でもあります。しかし高台はうつわを支える大切な土台であり、作者の遊び心やこだわりがあらわれています。

 

そして椀形の作品においては全体の造形バランスにも影響を及ぼします。特に茶碗では重要な見どころのひとつであり、高台の良し悪しは作品の出来・不出来にもつながります。

 

もし茶碗の見込や本体が素晴らしくても、土台となる高台が今ひとつならばどうでしょうか。たとえばボディに対して高台の大きさ・装飾のバランスがとれていない、またはグラついて安定しなければ、見た目も使い勝手も悪くなることでしょう。

 

このように高台は使用・鑑賞するうえで重要な要素となります。したがって選ぶさいには高台も大切なポイントのひとつといえます。

 

 様々な高台

これは斑唐津(まだらがらつ)のぐい呑みです。釉調はおとなしめの発色ですが、露胎(ろたい:釉薬をかけていないところ=土見せ)の土味が見どころです。

斑唐津の縮緬皺

削り跡がささくれだっていますが、このシワを縮緬皺(ちりめんじわ)といいます。粘りのある土を一気に削るとシワが入るのですが、あえて手直しせずそのままにしてあります。これは唐津の土によく見られる削り跡で、おとなしめの釉調と荒々しい縮緬皺の対比が見てとれます。高台内の兜巾(ときん)と呼ばれる突起もよいですね。

 

次の高台は目跡が3つ残っています。目跡とは作品を焼くときに、底がくっつかないように土や貝などをかませた跡のことです。

赤貝の目跡

この目跡をみると筋状の模様が出ています。これは赤貝のカラをかませて焼いた跡です。作品自体は端正な形で釉調も地味な色合いです。しかしこの筋状の目跡がほどよいアクセントになっています。冒頭の斑唐津と比べて兜巾が丸く、とても柔和な雰囲気が出ていますね。全て筋の方向と場所を揃えるなど、さりげないこだわりが伝わってきます。

 

この作品は赤土に白化粧をしたものです。高台内をみると本体と同じように線の盛り上がりがあります。

高台にイッチンで白化粧

これは高台内を一旦きれいに削ったあと、イッチンで化粧土を盛ったと考えます。イッチンとはスポイトや筒に泥を入れ、絞り出しながら模様を描く技法です。高台内の三本の線が微妙に本体とずれていますね。ツマミをちょっと回したようなズレが面白いと思います。

 

この作品の底をみると削り込んで穴が開いています。ここは指が入るほど深く削られています。

小石原焼の碁笥底

これは碁笥底(ごけぞこ)といって底を内側に向かって削ったものです。碁笥とは囲碁でつかう碁石(ごいし)の入れ物のことです。碁笥は底がこんな形ですので、陶磁器においても碁笥底とよばれます。削りはもっと浅いのが一般的で、黄瀬戸や志野、一部の楽茶碗などにも見られます。高台ではありませんが、碁笥底はよくある形なので紹介させていただきます。

 

さて、次の高台はおもしろい形にくり貫かれています。これは伊賀の作品で本体にはやや歪みもみられます。胎土の緋色と釉薬の緑の対比がわかります。

伊賀高台の刳り貫き

口縁や胴に動きがあるのに対して、高台の形はほぼ正方円で静的です。しかし高台部が動的に見えるのは、内側の刳り貫き跡によります。ヘラで二か所の土を一息にえぐっていて勢いがありますね。やや静的な高台の形と、動的なくり貫きが対称的な作品です。その跡に釉溜りができて景色になっています。

 

最後の高台は粉引作品のものです。土の鉄分が白化粧土の下から黒く噴き出しているのがわかります。

粉引高台絵付け

この作品は高台部に呉須(ごす)で絵付されています。呉須とは染付などで使う青い絵具のことです。ゴツゴツして荒々しい肌の作品ですが、虫が繊細に描かれています。作りと削りに勢いがあるいっぽう、虫の羽は細やかな筆致で描かれています。実際は作品の見込みと胴にも絵がありますが、高台内だけでもさりげなくて良いかもしれませんね。

 

このように高台は使い勝手のみならず、作者の意図・作品の造形や魅力を決める大切なところです。全く装飾性のない高台もあれば、過度にいじったものもあります。

 

もちろん好みは分かれますが、全体のバランスが取れていればよいと思います。ちょっとした遊び心を垣間見ながら選んでみて下さい。

 

 

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