銀彩のうつわ
スポンサード リンク

銀彩のうつわ

 

銀彩について

銀彩とは銀を用いて装飾する技法および作品のことです。一般的には銀箔(ぎんぱく)や銀泥(ぎんでい)を塗った作品がこれに該当します。色絵や色釉との組合せで色彩豊かなうつわが出来あがります。

銀彩の陶磁器

この作品は鉄釉に銀彩を施した一例です。黒・柿色に発色した鉄釉のうえに銀泥で絵付けをしています。魚文の青釉はソーダを含むアルカリ質の釉薬で、微量な酸化コバルト(もしくは酸化銅)の青味が鮮やかですね。

 

アルカリ釉は低火度で熔ける釉薬なので、鉄釉をかけて焼いたあと、その上に青釉をかけて低火度で焼きつけてあります。ちなみに釉薬の上に装飾する方法なのでこれを「釉上彩」(ゆうじょうさい)といいます。後述する上絵も釉上彩の一種ですね。

 

口縁部は金泥でうっすら縁取りされ、端反りで面取りの境目がやや低くなっています。そのため口縁に流線型の起伏ができてゆるやかな動きが出ています。こうした装飾があるだけでも作品の雰囲気が変わってきます。

 

銀彩作品を選ぶさいは、色絵の美しさや銀の輝きなど装飾の良し悪しで選ぶことになるでしょう。実際に手に取って銀彩部に触れると、表面にかすかな凹凸があります。

 

これは釉薬の上に銀彩を施した「上絵」である証拠です。青釉にも指にかかる感触があります。どちらも鉄釉の上に焼きつけられ、青釉の上に銀が乗っています。

 

純銀は961.8℃で熔けるので、1,100℃~1,200℃の高温帯では流れ落ちてしまいますね。もちろん加飾しやすいよう純銀に添加物を加えますが、融点はそこまで高くなりません。したがって釉薬をかけて高温で焼いたあと、青釉をかけて低火度で焼き、さらに上絵で銀彩をして再度焼きつけています。

 

普段使いの質感につながることですので、表面をじかに触って感触を確かめておくとよいです。

 

 高台まわりについて

裏返すと多角形になっているのがよく分かります。実際の作品はゆるやかな六角形なのですが、器面を見ると鉄釉を斜めに掛け分けしています。かけ分けた境界は微妙なカーブを描いてやわらかい雰囲気がでています。

銀彩の高台まわり

つまり六角形の器面に、斜めの塗り分けを加えてより多面的な効果を得ています。背景の幅とそこに合わせて魚や花がやや斜めに配置されています。背景の配色と傾けたモチーフの配置がそのまま作品の個性となっています。

 

高台はシンプルな造りで高台内・外の鉄釉の結晶がよくわかります。また、畳付きは白い素地がのぞいていますね。これは釉薬が熔けてくっつかないよう拭き取ったのでしょう。こうした白色の磁器土は鉄釉の発色を妨げません。

 

 銀彩の酸化と対処法

銀彩について一点気に留めておく事があります。それは銀はいずれ酸化して黒ずんでくるという点です。上絵である以上、銀は酸素にふれて次第に酸化していきます。

銀彩の拡大画像

鉄釉の上に青釉、そこに銀彩が施されている。目とウロコの一部に金彩、黒い部分は掻き落とし

 

拡大してみると銀の中に黒ずんだ部分が見てとれます。ちなみに金は酸化しませんが、銀はその特性上やむをえないことです。しかしこの黒ずみは単なる汚れではなく「いぶし銀」とも呼ばれる味わいともいえます。

 

もちろん曇りなく輝く銀彩も美しいですが、いぶし銀の渋さも捨てがたいところです。鉄釉の結晶が複雑な色彩を出していますので、この作品に限っては銀がキレイすぎると間が抜けて調和が取れません。

 

キレイにする場合には市販の銀磨きを使えば新品状態に復活します!クリーナーは研磨するタイプだと銀彩を痛めますので、酸化被膜を取り除くクリーム状のものがよいでしょう。

 

仮にいぶし銀の状態にしておくならばプラスチック消しゴムが便利です。厳密にいえば消しゴムで擦るわけですので力加減に注意します。※砂消しゴムは不可

銀彩の汚れをプラスチック消しゴムで落とす

これでクリーナーほど汚れが落ちすぎず適度な渋さが残ります。10年来この方法でやっていますが銀彩に問題はありません。銀の黒ずみが気になったらクリーナーを使うか、身近なプラ消しを活用していただければと思います。

 

さて銀彩はその鮮やかな色彩はもちろん、使いこむうちに味わいが出てくる点が魅力でもあります。金彩とはまた違った趣を楽しんでみて下さい。

 

 

陶磁器お役立ち情報 トップページへ

 
スポンサード リンク