飛び鉋(とびかんな)の技法
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飛び鉋の技法

 

 飛び鉋について

飛び鉋(とびかんな)とは、工具の刃先を使って、連続した削り目をつける技法です。鉋といっても木材を削り出す鉋とは異なり、反発性の良い古時計のゼンマイを加工したものを使います。

 

丸まったゼンマイを伸ばして、刃先を削ったものが工具となります。ロクロで回転させた作品に刃先をあてると、ゼンマイが土を削って弾かれます。そして定位置に戻って土を削って再度弾かれます。この繰り返しによって連続した模様が出来あがります。

飛び鉋の作例

工具自体は鉋というよりはヘラに近い形状のものです。これが器面を飛び跳ねるように動くことから、「跳ね箆」(はねべら)とか「踊り箆」とも呼ばれます。代表的なものには小石原焼(こいしわらやき)、小鹿田焼(おんたやき)の飛び鉋が挙げられます。

 

また、中国では飛び飛びに白い模様ができることから「飛白文」(ひはくもん)、連続した点が散見することから「聯点文」(れんてんもん:聯=連)、または「千点文」ともいいます。

 

 飛び鉋の技法

画像のような作品は「化粧がけ」とゼンマイによる飛び鉋の作例です。ゼンマイで化粧土を削りますので、飛び鉋は「掻き落とし」技法のひとつともいえますね。

 

まず胎土に鉄分の多い黒土を化粧がけします。そしてその上に白土を化粧がけしています。胎土は褐色に焼きあがるので、白化粧との対比をはっきり出すために黒土を塗ったと推測します。胎土と化粧土の密着を高めるためには、フノリなどの糊剤を化粧土に混ぜると食いつきがよくなります。

 

化粧土が乾いたら、作品をロクロに載せてゆっくり回します。そしてゼンマイを作品の表面にあてて、一方向に引き上げます。すると掻き落とされた点は黒化粧土の黒色が、刃先の当たらない箇所はそのまま白化粧土の白が残ります。

 

十分に乾燥させたら素焼きして、透明釉をかけてから本焼成しています。

 

飛び鉋の作業は一見簡単な作業にみえてしまいます。というのも回転する器面にゼンマイを添え、スッと引き上げると連続模様ができているからです。しかし実際にやってみると表面を削り過ぎたり、掻き落としの間隔が一定になりません。

 

回数をこなすことはもちろんですが、ゼンマイの固定・ロクロの回転速度を決めると上手くいきます。右手でゼンマイを構えて、左手で右手をしっかり固定します。肘が不安定だと手もふらつきますので、両肘をお腹に当てて削ると感覚がつかみやすいです。そして刃先の角度を変えず引き上げます

 

またロクロの回転が速いと弾く力も強まり、刻む間隔も細かくなります。逆に回転が遅ければ弾く力も弱まります。これは工具の反発性によって変わりますので、工具・ロクロの回転速度・土の乾燥具合にしたがって、何通りも試すしかないです。練習するには、速度を一定に保てる電動ロクロが適しています。

 

さて飛び鉋は化粧がけや刷毛目など、別技法との組合せが多いです。これは白化粧と黒化粧など、色彩の対比を出す技法と相性が良いからです。装飾としても派手すぎず地味すぎず、器面に適度なリズム感を出すのに効果的な技法といえます。

 

 

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