白化粧 | 白化粧土の技法
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白化粧 | 白化粧土

 

 白化粧とは

白化粧(しろげしょう)は色のついた胎土に白色の化粧土を塗る技法のことです。そのはじまりは白い土が手に入りづらい時代と地域において、白磁のような白いやきものを模倣して白化粧が施されました。単に「白がけ」とか「エンゴーベ」(化粧土は独・仏・英語でエンゴーベ(engobe)と呼ぶ)ともいわれます。

 

いくつかの例を挙げれば、鉄分の多い土に白化粧をする粉引(こひき)、有色粘土に刷毛で白化粧土を塗る刷毛目(はけめ)、中国における磁州窯(じしゅうよう)のようなかき落とし作品がその一例といえます。

 

白化粧の例

  • 粉引:胎土「全体」に白化粧をぬって、その上に釉薬をかけて焼いた作品。
  • 刷毛目:胎土の「一部」に白化粧土を刷毛で塗った作品。
  • かき落とし:白土と黒土を塗ってから「一部をかき落とした」作品。

このように白化粧土を全体に塗る、または一部に塗る、そして塗ったものに装飾を加えるという3パターンが代表的な例となります。化粧土の塗り方としてはそのまま浸す「浸しがけ=ズブがけ」や「筆や刷毛で塗る」ほか、柄杓で器面に垂らす「勺がけ(しゃくがけ)」などがあります。

 

素地に鉄分が多く含まれれば鉄分の黒味が混ざり、真っ白な素地土だけでは得られない味わいが魅力といえます。画像を見ても粉引や刷毛目はその傾向があらわれていますね。

 

 白化粧土の作り方

白化粧土は白色粘土を単味で用いるほか、磁土とのブレンドもあります。対象となる白色粘土を天日干しでカラカラに乾燥させて、細かく砕いてから水に熔きます。砕く手順は金づちで細かくした後、すり鉢で粉状にします。

 

そして粉末状の土を水に熔いて泥漿(でいしょう)にしてから作品に塗ることになります。塗るさいには化粧土が水にしっかり熔けて、ダマになっていないか確認します。ダマになっているとムラができ、その部分が剥がれやすくなるからです。

 

筆塗りをすると想定すれば、水分量は筆が走る濃度にします。水で薄めすぎると白化粧の効果が薄れて作品も余分な水分を吸うことになります。薄めすぎずに何とか塗れる程度まで濃度調整します。

 

なお白化粧土の接着が思わしくない場合、白化粧の中に糊剤を混ぜます。糊剤とは「のり」のことで一般的な糊剤にはフノリがあります。フノリを混ぜると粘りが増して化粧土を塗った際によく伸びます。

 

さて、主な白色粘土といえば瀬戸で産出する蛙目粘土(がいろめねんど)、美濃で産出する五斗蒔土(ごとまきつち)が挙げられます。磁土でいえばカオリンのような白色粘土のほか、熊本の天草陶石や佐賀県有田の泉山陶石など陶石を砕いたものも混ぜられます。

 

ただし陶石だけでは可塑性や粘りが少ないので、長石や蛙目粘土などと混ぜることで剥離がいくぶん抑えられると考えます。粘りのほか耐火度や収縮率が胎土に近づけばトラブルが低減されます。

 

また、天然の原土であれば同じ採取場所であっても白色・有色の差があるので、細かい作業となりますが大まかであれば選別できます。ただ原土はどうしても有色で色の濃いケースが多いため、純白の化粧土を求めるのは難しいでしょう。対処法については後述します。

 

 白化粧土の調合例

 1【五斗蒔土を単味で使う場合】

  • 白化粧:五斗蒔(白)100%
  • 胎土:五斗蒔土と近い性質の有色粘土であれば、化粧土の剥がれが低減されます。テスト方法としては胎土を有色粘土100%、有色粘土70%:五斗蒔白30%、有色粘土50%:五斗蒔白50%と複数のテストピースを用意して焼成試験をするしかありません。

 2【ブレンドする場合】

  • 白化粧:蛙目粘土50%、長石30%、磁土(カオリンなど)20%
  • 胎土:蛙目粘土50%、黄土40%、木節粘土10%。黄土の鉄分により有色になります。また木節粘土(きぶしねんど)の粘りによって成形もしやすくなります。それに対して白化粧は長石とカオリンで白味が増し、長石によって胎土への食いつきもよくなると考えます。

 3【原土を使い分ける例】

  • 白化粧:磁土(カオリンなど)70%、原土30%。ここで使う原土は水簸(すいひ)を行い、鉄分とアクを抜いておきます。
  • 胎土:原土100%。こちらの原土ははたき土でよいと思います。可塑性・粘りが不十分な原土であれば、可塑性の十分な市販の粘土を20%~30%ほど混入して成形しやすくして使います。天然の原土は成分のバラつきが多いので、土によって調整が必要です。なお天然の粘土なので焼成試験は必須です。

これらの例で白化粧の効果が薄い(=白が際立たない)場合は、胎土側に鉄分を添加してみるとよいでしょう。たとえば鬼板やベンガラのような鉄分を含む材料を数%混ぜます。試験焼成用のテストピースは、鉄分の添加量を数パターンメモに残しておけば万全です。

 

実績のない組合せの場合はテスト焼成が必須です。まずは数パターンの組合せを用意して剥がれと収縮を確認します。乾燥時と素焼き後の時点で2回確認ができることになりますね。

  1. 成形土に化粧土を塗って乾燥:剥がれと収縮をみる
  2. 素焼き:問題なければ本焼成。(※)剥離・収縮が大きければ素焼き後に白化粧

素焼きして化粧土の剥離・極端な縮みがなければ本焼成でもほぼ問題ないでしょう。

 

※の場合は素地土が化粧土を吸収しやすくなりますので、厚めに白化粧を施すか、複数回筆塗りしておきます。そしてもう一度素焼きの温度で焼成して様子をみることになります。素焼きを余分に行う手間が必要ですが、白化粧の吸収と密着度を高めることができます。

 

いずれにせよ白化粧土と胎土の収縮率・耐火度を近づけると成功率が高まります。今後テスト焼成をする機会があれば陶芸のカテゴリーで順次紹介していきたいと思います。

 

真っ白な土を単味で使うケースと異なり、白化粧は胎土による影響で複雑な色調になります。さらに胎土の色を隠して白っぽく見せることができるわけです。

 

こうした色彩の美しさと利便性によって、白化粧は古今を問わずさまざまな作品に施されてきました。そして作品固有の味わいを深めてきた技法といえます。

 

 

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