布目の技法
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布目の技法

 

布目について

布目(ぬのめ)とは作品の表面に残った布の跡(模様)を指します。もともとは装飾技法としてではなく、型で作った作品についた布の痕跡がはじまりといわれています。

 

これは織部焼の型づくり作品に特徴的な模様です。たとえば型に粘土を押し当てて向付(むこうづけ:食器の一種)を作るとします。いざ作品を取り出そうとすると、粘土が型に貼りついてしまうことがあるわけです。

 

これを防ぐために型と粘土の間に布をかませます。すると簡単に粘土が剥がれるうえ、布目の模様がきれいに残ります。

織部の向付に残った布目

この作例では角の部分に布目がはっきり見えますね。角の部分は特にしっかりと型に密着させるため、布をかませないと粘土の離れがよくありません。布をかませて剥がすと画像のような跡が残ります。

 

こうした型物の布目は織部など陶磁器のほか、布目瓦(ぬのめがわら)など多くの建築材料や型細工の工芸品などで用いられました。

 

このように布目のはじまりは、装飾というよりむしろ作陶しやすくするための創意工夫といえます。織部釉が布目にかかって面白い装飾効果が得られています。こうした布模様を活用するのです。

 

 布目の技法

先の織部の作例であれば、木もしくは素焼きの型を用意します。その型に対して布を事前に巻き付けておき、粘土を押し当てて成形するわけです。布は土離れがよい麻布(あさぬの)が用いられたといわれます。

 

見込みに布目があれば、粘土の上に型を乗せたことが分かります。逆に皿などの外側に布目があれば、型の上に粘土を載せて押し付けたといえるでしょう。

 

このように布目の跡をみることで、型の形状や作り方もおよそ推測することができます。

 

現代においても麻布をはじめ、ガーゼや綿布など土離れがよく跡が残る布材がひろく使われています。

 

さて布目は素地の表面を装飾しますので、色絵や別技法との組合せも面白いと思います。

布目の陶芸作品

色釉や絵付けをした場合でも、表面の布目があると質感がたいぶ変わってきます。布が食いこんだ跡には釉薬がたまり、色の濃淡が出ています。触った感触も適度なザラつきが出てやわらかい質感となります。

 

この作例では作品全体に布目が施されています。型成形のケースとは異なり、生乾きの素地両面に布を押し当てて装飾した一例となります。

 

また、作品全体ではなく部分的な布目もアクセントになると思います。たとえば面取りをした作品の面に布跡をつける、施釉する部分に布目をつけて釉調に変化を加える、部分的に布にシワを持たせてみるのもよいでしょう。

 

このように作品の色・形状・釉薬との兼ね合いなど、幅広い組合せが楽しめると思います。

 

手取りのやわらかな質感に加え、布跡で変化する色の濃淡や微細な凹凸による影など、視覚的にも効果的な装飾技法といえます。

 

 

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