画花 | 刻花の技法
画花の技法
画花(かっか)とは陶磁器の表面に文様を彫りこむ技法のことです。中国では「劃花」(かっか)という文字が使われます。「画」とはもともと「描く・書く」という意味があり、ここでいう「花」とは模様のことを指します。
つまり画花とは工具で描いた模様のことです。描かれた模様の題材に花が多かったことから名付けられたと推測します。類似する「花」の使い方には、青花(せいか:青い模様=染付)、黒花(こっか:黒い模様=鉄絵)、印花(いんか:スタンプ・型を用いた模様)などが挙げられます。
画花の技法は一般的に「線が細く浅い彫り模様」のことをいいます。先のとがった竹ベラなどの工具で細い線を彫りこみます。
画花の彫られた部分は沈んで見えるため「沈み彫り」、彫り跡が陰になるので「陰刻」ともいいます。細い線描なので雰囲気はさりげなく、過度な装飾にならない点が良いと思います。
刻花の技法
それに対して刻花(こっか)とは「線が太く深めの彫り模様」となります。線描の太いところ以外に細いところもあり、抑揚をつけることで表現の幅が広がります。
刻花は立体的に模様が浮かび上がるので「浮き彫り」、陰刻に対する「陽刻」とも呼ばれます。
線の輪郭を刻んだあと、その輪郭を際立たせるための彫りを施します。刻花の代表的な例は片切り彫り(片切彫:かたぎりぼり)という彫刻技法です。
たとえば作品の表面に涙型の模様を彫ったとしましょう。イメージとしては割り箸で輪郭を描いたとします。このままでは平面的な涙型(=画花)ですが、片切り彫りをすることで輪郭を浮き上がらせることができます。
その方法は、輪郭の外側をノミもしくはL字型のカンナで削るのです。すると輪郭の外が削られて凹んで影になりますね。その結果、涙型の輪郭が浮き彫りになって際立つ(=刻花)わけです。画花と比較すると、刻花の方が輪郭の外側を削るぶん手間と工数が必要です。
こうした刻花の技法を用いることで、画花よりも線の力が強く輪郭がより鮮明に浮かび上がります。模様に重点を置いて、より強調したい作品に適した装飾技法といえます。
まとめ:画花文と刻花文の違い
さて両者の違いは画花が「沈み彫りで平面的・細い線」であるいっぽう、刻花は「浮き彫りで立体的・太い線や細い線=抑揚」ということになります。イメージ図のような違いが見てとれます。
美術館で作品を見ていると「画花(劃花)」と「刻花」が並んでいる場合があります。はじめ両者の違いが分からなかったのですが、作品の題名と模様を見比べるうちに区別できるようになります。
画花は模様を描いているのに対し、刻花は模様を刻み込んでいるともいえます。素朴な画花文の美しさと重厚な刻花文の意匠は、作品によって使い分けることもあれば、組合せることでより深い味わいをもたらします。
なお彫りの高低と溝の太さによって釉薬の溜まり方に差が出てきます。深く太いところには釉薬がより厚くたまり、他の箇所との濃淡があらわれます。
画花と刻花は上図の通り、彫りによって平面と立体の使い分けが自由にできます。そして彫った溝で釉の濃淡が出来ることから、視覚にも訴えかける効果的な装飾技法といえます。