貫入について

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貫入(かんにゅう)

 

 貫入の美しさ

陶磁器における貫入とは釉薬の表面にできたひびの事です。ガラス質の釉に入った貫入は、光を受けて私たちに多様な表情を見せてくれます。日本や中国では古来より鑑賞上の見どころのひとつとなっています。

貫入

その形状によって「氷裂文」「柳葉文」「牛毛文」など数多の呼び名がついています。また意図的に貫入を際立たせるため、窯出し直後にベンガラや墨などを塗り込む作品もあるほどです。

 

ちなみに貫入が入るよう意図した釉薬を貫入釉(もしくは亀裂釉)といいます。この貫入釉の例としては青磁釉や蛇蝎釉(じゃかつゆう)などが挙げられます。

 

青磁には貫入がない(=ほぼ見えない)ものもありますが、多くの作品には貫入が見られます。貫入の中にさらにひびが入る二重貫入が装飾的に美しい一例といえます。たとえば中国 南宋官窯の青磁に見られる二重貫入がつとに有名です。または古陶磁に限らず、清水卯一や岡部嶺男など現代作家の青磁にも見られます。幾重にも入った貫入に光が当たると幻想的な輝きを放ちます。

 

蛇蝎釉は黒釉の表面に長石釉をかけて焼きます。すると長石釉が黒釉より縮んで貫入ができます。表面の釉の隙間から下地の黒が見えることで複雑で独特な景色をなします。そのひび割れが見どころとなり、作り手は釉薬の試行錯誤を繰り返しています。おもに薩摩焼、唐津焼などに見られます。

 

こうした貫入釉に限らず、一般的な陶磁器にはおおむね貫入が入っています。目に見えない小さな貫入でも、使っているうちに徐々に見えてくるものもあります。釉は水を通しませんが、貫入は胎土に水が染み込む一因となります。そこから貫入に色が付いて視認できるようになります。

 

 貫入ができる仕組み

貫入は陶磁器の素地と釉薬の膨張・収縮率が異なるため生じます。物質には熱を加えると膨張し、冷やすと収縮する性質があります。これを熱膨張とよび素地と釉薬で差が出てきます。

 

おもに貫入は温度変化が起こる窯出し後に進行していきます。焼きあがった陶器を窯から取り出すと、外気との温度差で陶器の温度は急激に下がっていきます。そして熱膨張の反動で素地と釉薬が縮みます。基本的に釉薬の方が多く縮むため、釉薬の表面に貫入が入ります。仮に素地が10%縮んだ一方で、釉薬が15%縮むと図のようになります。
貫入ができる仕組み
素地と釉薬は密着しているので、より縮んだ釉薬の表面に亀裂(=貫入)が入ります。釉薬が極端に縮んでしまった場合、亀裂が大きくなって釉がはがれ落ちたりします。

 

逆に素地の方がより縮んだ場合は図と反対の力がはたらきます。貫入は入りにくいものの極端に素地が縮んだ場合、そこに亀裂が入ってうつわ自体が割れてしまうこともあります。こうした課題をクリアした作品が私たちの手元に届くわけです。

 

 貫入を防ぐためには?

陶磁器の見どころのひとつである貫入ですが、ものによっては貫入があっては困るものもあります。たとえば洋食器や工業製品など貫入を不良品とみなす場合です。このようなケースでは貫入防止策を講じています。

 

理論上は「釉と素地の収縮率を同じにする」ことが第一です。技術の進歩によって、現在ではほぼ同じ収縮率の素材が使われています。さらに長年使ううちに経年貫入が発生するか耐性試験も実施されています。

 

すなわち各メーカーが実施する「耐貫入性試験」がこれに該当します。オートクレーブという装置を使って高温・高圧下で試験をすると、長年使った状態を再現できます。そこで貫入があるか否か短期間で分かる検査方法です。

 

このように一言で貫入といっても作り手・使い手によって捉え方は千差万別です。これを陶磁器の「味わい・見どころ」とするか「不良品」とするかは当人次第です。

 

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