自作鞴(ふいご)と構造について
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自作鞴(ふいご):鞴の内部構造について

 

 鞴の構造

送風機である鞴(ふいご)は一見ただの木箱ですが、その密閉性ゆえに強力な送風機として機能します。

 

主に鍛冶現場で欠かせない道具であった「箱鞴」。構造について何件か問合せをいただいたので、概要と詳細を述べたいと思います。

 

鞴の構造は4つの弁を持ち、ピストンを前後させることで圧縮された空気が図のように出てきます。
鞴の構造
まず赤色で図示したものが4つの弁。そして青い矢印が空気の流れです。鞴の部位を大別すると本体・フタ・ピストンの3つに分けられます。

 

大まかな構造であればこの概略図で分かるかもしれません。より詳しい構造については以下を参考にしていただければと思います。

 

 鞴の本体について

今回は厚さ1cmほどの木材を使って鞴を自作しました。この板は何年も使われず放置されていたもので、それらの中から反りの少ないものを選びました。

 

新品の板はしばらくすると反りが出るものもあるので、長い間乾燥されたものが材料に適していると考えます。

 

まずは板をのこぎりで切って、鉋(かんな)できれいに整えます。そして画像のように弁をつけるための穴を2つ開けておきます。

鞴の本体(外枠)

本体の構成は底板×1枚・側面の板×4枚です。はじめの2つの弁に加え、さらに2つの弁。合計4つの弁を設けます。

鞴の本体(外枠その2)

弁の取付は空気の流れにしたがって、画像通りの開閉方向にしましょう。これが逆になると、当然のことながら空気の取りこみ・排出がうまくいきません。

 

本体の側面の板は隙間が空かないよう加工し、釘でしっかりと打ち付けます。

 

側面の板に対し、本体の底板はメンテナンスで取り外しができるようネジ止めします。弁の再調整やごみの掃除などなど。取り外せる構造にしておくと後々メンテナンスしやすくなります。

鞴本体の裏側はネジ止め

本体についてまとめますと取り外しをしない側面の板は「釘止め」取り外しをする底板は「ネジ止め」ということになりますね。

鞴の隙間を埋める作業

排出口近くの2つの弁は画像のように木材で覆います(釘止め)。なお隙間ができてしまった場合、画像のように木工用ボンドで隙間を埋めます

 

ボンドは棒状のもので均一に慣らせば、透明に乾いた後しっかりと隙間を埋めてくれます。これで本体は完成です。

 

 鞴のフタについて

フタもメンテナンスで取り外せる作りになっています。蓋の裏面は密閉性を高めるための溝を彫ります。

鞴の蓋について

本体の板の厚さが1cmですので、蓋の溝も1cmで彫り進めます。ノミを使って画像のように少しづつ切込みをいれます。そしてノミで出来るだけ均等な深さに溝を彫ります。

鞴の蓋に溝を彫る

全て手作業で行いますので、溝の深さは多少のバラつきが出てしまいます。しかし最終的にガタつきが少なく、蓋がしっかり閉まっていれば問題ありません。溝の深さは4~5mm程度で、本体に対して蓋がきっちり閉まることを確認します。

鞴の完成形

次に蓋の表面に角材を4つ取り付けます(画像は完成形)。これら角材の目的は、おそらく蓋の反り・歪みをおさえる用途と推測します。昔ながらの鞴をみるとこのような角材が3~6つほどついています。これで蓋も完成です。

 

 鞴のピストンについて

ピストンの板は内部の大きさから2cmほど小さく作ります。というのも板のまわりに毛を巻き付けるので、板は小さく作っておく必要があるからです。

 

昔の鞴では狸の毛が主に用いられましたが、ここでは入手しやすい羊毛のファーを用いました。

鞴のピストン素材_羊毛のファー

ちなみにファーとは毛のついた獣皮のことです。この皮をピストンの板に釘打ちしますので、素材としてはファーが適材といえます。

鞴のピストン

画像左が柄の部分、右は羊毛を巻き付けた板です。柄はデッキブラシのものを使い、余った廃材をネジ止め、さらに楔(くさび)をうつための穴を開けてあります。

鞴のピストンに楔をうつ

画像のように楔を打つことで、ピストンを前後させて柄がすっぽ抜けるのを防げます。また、柄と楔の上下が分からなくなると困りますので、マジックで上下を記しておくとよいです。

 

これで本体・蓋・ピストンが出来あがりました。

 

蓋を閉めた状態でピストンを前後させ、抵抗が重すぎればピストンの羊毛をカットします。ただし使っていくうちに羊毛はすり減りますから、抵抗が重めの状態に留めておきます。

 

ここで本体の空気漏れが無いか、蓋のガタつきが無いか、ピストンの隙間が適切か最終チェックを行います。空気が漏れなければピストンの押し引きで、力強い圧縮された空気が出てきます!

 

 その他:排出穴と連結パイプ

さて空気の漏れがないことを確認できたら、空気の排出穴をつけます。ここでは市販のプラスチックパイプを使いました。後述の排水パイプ(洗濯機用)とサイズの合うものを選びます。

鞴の空気排出穴

補強板を釘打ちし、プラスチックパイプの径に合わせて板をくり貫きます。そこに木工用ボンドをたっぷりつけてパイプを接着します。

 

ただ、どうしても穴とパイプの隙間はできてしまうので、さらに木工用ボンドで隙間を埋めましょう。

 

次に鞴と窯を連結するパイプを作ります。用意するものは…

  • ステンレスのパイプ:鉄は錆びてしまうので不可
  • スポンジ:ステンレスパイプに巻き付けられる量
  • 排水パイプ:洗濯機で使うものが安価で◎

まずステンレスパイプにスポンジを巻き付けます。そして捻じりながら排水パイプにねじ込みます。

鞴と窯の連結パイプの作り方

こうすることで余分な隙間がなくなります。仕上げは簡単ですがガムテープを巻けば十分です。こうすればステンのパイプが劣化したり、排水パイプが傷んでも交換が簡単ですね。

鞴と窯の連結パイプ

なお、この鞴は七輪窯に連結して使います。風圧の高さと手動で風量調節できる点が送風機として優れています。

 

このように鞴の構造自体は「空気の取りこみ」「空気の排出」する弁が2セットあるだけのシンプルな構造です。しかしながらその機能性は高く、先人の知恵と創意工夫に改めて驚かされるのです。

 

 

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