鞴(ふいご)は最強の送風機!
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鞴(ふいご)は最強の送風機!

 

 鞴について

鞴(ふいご)は主に鍛冶現場で使われていた送風機のことです。大きいものは踏み鞴である「たたら」が有名です。これはシーソー状態のたたらを、作業者がそれぞれ両端にいて交互に踏むことで空気を送ります。たとえばジブリ作品の『もののけ姫』に出てくる「たたら」は巨大鞴の一例です。

 

これを木製の箱型にして、取手で空気の送出ができるタイプの鞴があります。これは陶芸においても優秀な送風機として機能します。陶芸作品を焼く場合、その多くは窯の中に作品を入れたら出来るのを待つことになります。

 

その中でも送風機を必要とする窯、たとえば古来からの楽窯や現代の七輪窯は、自分で風量を調節するので鞴は重宝することになるでしょう。

鞴(ふいご)

この画像は手作りの鞴です。左側にある取手は押しても引いても空気を送ります。箱の隙間ができたところはテープで隙間をふさいであります。取手を動かし続ければ、空気が絶え間なく送られることになります。

 

圧縮して作られた空気は灰色のパイプから勢いよく出てきます。これを延長パイプで窯につなぐわけです。

 

 鞴の利点

昔ながらの楽窯では鞴が使われます。そして気軽に出来る七輪を使った窯でも鞴は有効です。七輪窯の送風機はドライヤーが使われることがありますが、鞴にはドライヤーでは補えない利点があります。

 

それは『風圧』です。鞴は空気を箱の内部で圧縮して送るので、風を送りながら圧力の高い空気を作り出してくれます。風圧があると重なった炭(燃料)の隅々まで空気が行きわたります。
(※参考ページ : 七輪陶芸の窯

 

七輪窯のページで述べたとおり、たとえば風船を例にとってみましょう。風船を膨らませる場合、口をつけずにどんなに強く吹いても風船は膨らみません。これは風力はあっても「風圧が足りない」状態だからです。

 

それに対して今後は口をつけて膨らませると上手くいきます。これは風量はそこまでなくても「風圧が十分」な状態だからです。これを鞴に置き換えて考えれば、この風圧によって窯の隅々まで空気が送られることが分かります。鞴の利点はこの風圧にあるのです。

 

 鞴の欠点

鞴の欠点は人力駆動であることです!場合によっては何時間も吹き続けますのでとにかく疲れます。交代要員がいない場合は相当な覚悟と体力・情熱が必要とされます。

 

特に厳しいのは攻め焚きの状態で焼く作品の場合です。攻め焚きとは薪窯でいえば、薪をどんどん燃やして昇温させる段階です。鞴焼成では炭を足しながら吹き続けることになります。

 

ただしやみくもに炭を放り込んでも、不完全燃焼で温度が下がります。したがって少量くべては炭が燃え尽きそうなタイミングで炭を足し、鞴をひたすら吹きまくるのです。強還元・高温で焼く場合は、重労働は避けて通れません。なお攻め焚きの状態で、炭の燃えている部分は1,000℃を超えてきます。

 

温度はそれなりですが七輪窯が小さいので、作品にかかる熱量はかなり高いといえます。

 

逆に低温帯で中性~酸化気味に焼成するならば、ゆっくりそっと吹き続けます。この場合は負担が少なく窯の温度も600℃~700℃くらいの温度帯です。色見はもちろん必要ですが、体力的にはだいぶ楽になります。

 

いずれの場合も交代要員がいるに越したことはありません。この吹き続けるという状況が鞴の唯一のデメリットです。

 

 鞴の内部

鞴の内部は取手にモップのようなウールを巻き付けています。昔ながらの鞴はウールの部分にたぬきの毛が使われました。滑りが良く硬質のため隙間ができない点が非常に優れています。そして箱の手前と奥にはそれぞれ空気が入る弁を設けています。

鞴(ふいご)の内部構造

実際にはフタで密閉されていますが、画像のように取手を押すとどうなるでしょうか?モップによって隙間がない状態、モップより「奥」と「手前」の空気がどうなるか見てみましょう。

  • 空気が箱の「奥」で圧縮される。
  • 圧縮された空気がパイプから勢いよく排出される。
  • 同時に「手前」の弁が開いて空気が入る。

弁は全部で4つありますが全て一方向にしか開きません。その理由は両側に開くと空気がもれて圧縮できなくなるからです。画像で見える2つの弁は内側にだけ開く構造です。つまり空気を取り込む方向にだけ動くのです。

 

隠れて見えない残り2つの弁は箱の手前と奥(ともに下側)についています。画像のような状態では「奥」の弁が開いてパイプに空気が送られます。同時に「手前」の弁は閉じた状態です。こうした構造が取手を押しても引いても空気が出る仕組になります。

 

実際に空気を送る作業は窯焚きの長さによります。1時間で目的の焼きが得られれば終わりですし、5時間かかればずっと動かし続けることになります。時間が長引けば重労働になりますので、交代要員がいないとちょっと厳しいですね。

 

鞴を使うと七輪窯でも面白い焼き味が得られます。実際の焼きについては別のページで取り上げていきたいと思います。

 

 

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