蹲(うずくまる)

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蹲の壺

 

 蹲について

蹲(うずくまる)は花入に転用された壺です。古信楽や古伊賀のものがつとに有名ですが、備前や唐津にも蹲の小壺が伝世します。

 

名の由来は人が膝をかかえてうずくまるような姿からきています。もともとは穀物の種壺や油壺として使われた雑器を、茶人が花入に見立てたものです。文献によれば江戸時代に入ると蹲という呼称が定着しています。

 

なお信楽の蹲は古いもので鎌倉末〜室町時代から伝世しています。おおむね20cm前後の小壺で、掛け花入れ用の鐶(かん:環状の金具)の穴があいているものもあります。そこに金具を入れて壁に掛けて使われるわけです。

 

その形は背が低くずんぐりとしており、胴が張り出しています。この作例(信楽の蹲)は縦長で腰から下がやや間延びしていますね。もう少し丈の詰まったものが一般的に見られる形となります。

信楽_蹲と檜垣文

作品の表面は、紐作りの段によって微妙に波打っています。灰のかぶったところには焦げと自然釉が、灰のない部分には緋色が出ています。選ぶさいには焼き締めならではの肌の表情、全体の形を見るとよいでしょう。

 

侘びた風情と愛嬌のあるずんぐりした姿が蹲の魅力といえます。肩から丸みをもって膨らみ胴が張ったもの、高さと胴の径が同じくらいの長さで丸みのある器形がよいです。

 

画像の例では口の大きさは良いですが、肩の丸み・胴の張りが甘いので口が大きく見えますね。こうしたバランスや好みで選んでもらえればと思います。

 

 蹲の口作り

蹲の口は特徴的なものといえるでしょう。こうした段が入っているわけですが、これを二重口といいます。現代作品ならば装飾かもしれませんが、当時はこの二重口が必要だった理由があります。

信楽_蹲の二重口

冒頭で蹲はもともと日用雑器であったと述べました。ゆえに乾燥させた穀物を貯蔵したら首に縄を巻き付け、そのまま背負って運ぶこともあれば、吊るして天日干ししたとも言われます。縛ればまとめて小壺を運ぶことも出来たでしょうし、吊るせば穀物を狙う鼠などの害を避けられます。

 

または木蓋をして縄をくくり付けるためのもの?という話を聞いたこともあります。しかしその用途であれば、四耳壺(しじこ)や茶入に見られるような「耳」の方が縄をくくり付けやすいでしょうね。縄を締めずとも二重口が取手になって持ちやすいです。

 

いずれにせよ実用性を重視した作りになっているのは確かです。そして実用的な二重口は、口縁部の装飾としても美しく口縁部にメリハリが出ます。紐をしめて運んだり壺を吊るしている中世の人々を想像しながら、じっくり選ぶのも楽しいかもしれませんね。

 

なお伝世品を見ると首の真ん中より上、より口縁近くに段があります。いっぽう画像の作例では首の真ん中あたりに段があります。手で持つのに丁度よいところですが、米を入れて吊るすのは怖くてできません(笑)こうした口作りもポイントになるでしょう。

 

 檜垣文とは

次に作品の肩回りをみていきましょう。二本の平行線の中に「×」印が刻まれています。こうした模様を檜垣文(ひがきもん)といいます。不揃いですがヘラ目に勢いがあってよいと思います。

信楽_蹲の檜垣文

檜垣文は室町時代の作に多くみられます。その後は次第になくなっていった文様です。ただ現代作品にはよく見られる装飾で、信楽の1つの特徴的な文様といえるでしょう。檜(ひのき)で作った垣根の形にちなんでこう呼ばれます。

 

なお、檜は香りもよく高級木材として知られます。また檜を神聖視する習慣もありますし、垣根は居住空間を外敵から守るものです。よって檜垣文は当時の人々の神聖なお守りであり、無病息災や魔除け、安全・豊作祈願の思いが込められていたのかもしれません。

 

 下駄印について

さて最後に底の部分を見ていきたいと思います。蹲は高台を持たずベタ底ですが、中にはこのように凹凸のある作例があります。これは下駄の歯に見えることから下駄印(げたいん)と呼ばれます。

信楽_蹲の下駄印

この作品では下駄印が凹んでいます。このように凹んだものを「入り下駄」、凸のものを「出下駄」といいます。これは作品をロクロ引きするさいに、中心がずれないよう固定した跡といわれます。こうするとロクロからの離れもよく、焼成しても底に隙間ができるのでくっつきにくくなります。

 

下駄印も二重口と同様、実用的な作りが装飾として見どころになった一例といえます。信楽や伊賀の作品をはじめ、備前や唐津などそれぞれの土味を活かした作品が作られています。その独特の形と表情を楽しめることでしょう。

 

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