粉引(こひき)

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粉引について

 

 粉引とは

粉引(こひき)のはじまりは15〜16世紀に朝鮮半島で焼かれた白色系の陶器です。当時は李氏朝鮮(李朝:1392年〜1910年)の統治下にあり、白色の化粧土を主体とした作品群は粉青沙器(ふんせいさき)と呼ばれます。

 

代表的な粉青沙器には粉引のほか、白土装飾したうえに青磁釉をかけた一部の青磁、白土装飾を削った部分に別色の土をはめこむ象嵌粉青(ぞうがん ふんせい)、白土装飾をかき落とした三島手(みしまで)などが挙げられます。

 

胎土の色は様々ですが、たとえば鉄分の多い黒い土を白く見せるため白化粧土が塗られているものがベースになっています。こうした粉青沙器の一種である粉引は、当時の朝鮮半島では次第に焼かれなくなりますが、現代では日本や韓国をはじめたくさんの粉引が作られています。

 

 粉引の特徴

およそ鉄分の多い素地を用いて、その上に白色の化粧土を施します。これは高台も含めた全体に白化粧を施した一般的な粉引です。

粉引湯呑み

黒っぽい胎土に白化粧土で装飾したのち、透明釉をかけて本焼成されています。化粧土の下から土の鉄分が黒っぽく浮き出ていることが分かります。

 

貫入の細かなひびと小さな石はぜやブク(器面の気泡)、白化粧・鉄分の黒が混じった色合いが景色となっています。

粉引湯呑み高台

高台回りの削りはオーソドックスな形で引き締まった印象です。化粧土の薄いところに胎土の鉄分がにじんでいるほか、畳付きには褐色の胎土が一部のぞいています。このように白化粧を基調としながらも、うつわの表情が多彩なところが粉引の魅力といえます。

 

 これは粉引?無地刷毛目について

次は盃の画像です。高台回りは化粧をせず土見せとなっています。これは無地刷毛目(むじはけめ)と呼ばれる作例です。粉引は「作品全体に白化粧」をしているのに対して、無地刷毛目は「一部に白化粧」が施されています。

 

その一部分の白化粧が「無地=真っ白」であること、白化粧土が「刷毛」で塗られていた名残から無地刷毛目といいます。伝世品に見られる無地刷毛目、特に茶碗などは口縁〜胴までが白化粧、胴〜腰が別の釉(灰釉など)、高台回りは土見せの三層になっている例もありますね。

粉引盃高台

さて、画像を見ると茶褐色の胎土に含まれる鉄分が、白化粧の中に浮き出てきています。厚めの化粧土には刷毛で塗った動きがみてとれます。高台内の削り跡はささくれ立っていて、滑らかな白化粧との対比が面白いと思います。

 

見込をみると化粧土の縮れによるシワが見えます。日本酒を注ぐと酒を吸ってシワ周りから徐々に灰色が強まっていきます。

粉引盃見込み

使いこめば白化粧に経年変化が起こり、見込の景色が変わっていきます。このように盃を育てる楽しみがあります。柔らかな色彩の変化など、地味ながらも飽きが来ない酒器といえるでしょう。冒頭の湯呑みより全体的に黄色みを帯びた焼味で、やや酸化気味に焼かれた作品だと考えます。

 

 鉄絵粉引

粉引の中には絵が描かれた作品もあります。たとえばこの画像は鉄絵を施したケースです。右下の高台部側面には、指で持って釉薬につけた指跡があります。そこは釉がつかないので素地がそのままあらわれ計3つの指跡が残ります。

唐津の鉄絵粉引

鉄絵は鬼板(おにいた)やベンガラなど酸化鉄を含んだ絵具で描く装飾技法です。土の鉄分が黒く発色するのと同様、鉄を含んだ絵具で描画してもこのように黒く発色します。こうした作風を鉄絵粉引(てつえこひき)とよびます。

 

文字通り鉄絵と粉引の組合せですが、もともと鉄絵が盛んな唐津によく見られる作行きです。唐津の土は鉄分を含むものが多いので、その特性を活かして表情豊かな粉引が作られます。

唐津の鉄絵粉引高台

高台は低く中央に兜巾(ときん:中心の突起のこと)が見られます。まず唐津の原土に鉄絵を描いてから刷毛で白化粧を施します。そして土灰釉(雑木の灰+長石)をかけて焼成すると鉄絵が浮かび上がってきます。土灰はやや白濁しているので長石の比率が高い長石釉(長石多め+雑木の灰)と考えます。

 

この角度から見ると高台脇に残った2本の指跡がわかりますね。対面には親指の跡があります。また、畳付きには底がくっつかないように道具土をかませた「目跡(めあと)」が4つあります。したがって、この作品は立てた状態で焼かれたことが分かります。

 

 粉引と雨漏り

さて、画像の例から粉引の特徴は胎土に「化粧土」ということが分かります。そもそも化粧土とはどのような土なのでしょうか。

 

たとえば唐津の褐色に焼きあがる粘土に対して、化粧土とは異色の粘土を水に熔いたものです。土の性質が異なれば収縮率も異なることがほとんどです。したがって白化粧をして焼いてみたら「収縮が足りず剥がれた」、逆に「縮み過ぎてひびが入った」などトラブルもよくあります。

 

そのため性質(主に収縮率)を近づけようとして、素地土を白化粧に混ぜることもあります。しかし、鉄分を含む素地では白さが得られないことになります。このように一言で白化粧といっても、収縮率の問題・色のジレンマなど問題点があるのです。

 

とはいえ多少の収縮率が違っても作品はできあがります。そこには素地と化粧土の違いにより多少のひびやシワが生まれます。粉引は釉薬をかけても貫入は必ず生じますし、化粧土のひびやシワなどを通じて水が浸透しやすいともいえます。

 

そこから雨漏りと呼ばれる状態になることもあります。雨漏りとは水が染み込んで跡になった状態を指します。こうした景色を茶人や数寄者が見どころとしています。

 

たとえば室町・桃山時代から伝世する高麗茶碗には雨漏手の作品があります。特に井戸・熊川のほか堅手や粉引などによく見られますね。また、萩焼のような軟質陶器にも雨漏りの作品があり賞玩の対象となっています。

 

雨漏りの風情については好みが分かれるところでしょう。しかし粉引の特性として、吸水性があるという点は選ぶ際にひとつの目安となります。すなわち変化を楽しめる陶器として粉引は魅力的といえるでしょう。

 

現代作品を含め粉引の器種は多岐にわたりますが、食器・茶器・酒器などいずれも個性豊かな表情を見せてくれます。

 

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