皮鯨(かわくじら)

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皮鯨(かわくじら)

 

 皮鯨とは

唐津の茶碗やぐい呑みに見られる装飾のひとつに皮鯨(かわくじら)があります。これは口縁部に黒い縁取りをあしらったものです。名の由来は口縁部の黒を鯨の皮(背中側)、うつわ本体の白〜灰色を鯨の身(腹側)になぞらえたことによります。

 

皮鯨見込み

この黒色は鉄絵具によるものです。その上に釉薬をかけて焼くと、鉄分が黒く発色して浮き上がってきます。この作品は線の太さと細さによってうつわの表情に動きが出ています。

 

鉄絵はもっと均一に描かれたものもあれば、口縁を一周する中で途切れながら描かれているものもあります。鉄絵に口縁部を浸けたような野太い空気感の作品もあります。また、鉄絵ではなく黒釉を使った皮鯨もありますが、黒釉が流れて朝鮮唐津のようになったものもありますね。

 

私の場合は黒が流れず口縁部にしっかり留まっているもの、そして茶碗やぐい呑みは見込みを見ながら使う(飲む)ので、見込み側に鉄絵が太くみえる皮鯨が好みです。

 

展示会や販売店に行くと、皮鯨の茶碗ならば背の低い筒形で口縁が姥口(うばぐち:内側に抱え込むようになった形)、ぐい呑みであれば腰からまっずぐに立ち上がり口縁がやや端反り(はたぞり:外側に開いた形)の立ちぐい呑みが比較的売れています。

 

会場で赤印の付いた売約済みの作品を見ると、売れ筋などおおまかな傾向が分かると思います。いずれにせよ口縁の黒と本体のバランス、手に取ったさいの景色(外観と見込み)、皮鯨の線描の印象(力強さ、もしくは繊細さなど)で選ぶとよいでしょう。

 

 内側と外側の対比

この作品は見込みに太く力強い線で鉄絵が描かれていました。それに対して外からみると口縁部の黒線が細いため繊細な印象を受けます。繊細さもありますが、この細い線によってうつわ全体が締まって見えます。このように内側と外側で雰囲気が違ってきます。

 

皮鯨ぐい呑み

この作品はぐい呑みですが、手に取って見込みをのぞくと大らかな印象を受けます。いっぽう外観を見るとやや引き締まった印象を持ちます。この線描が逆であれば印象も逆になることでしょう。

 

このように内と外の対比、陰と陽とでもいうべき景色の違いがあります。これは陶芸作品全般にいえることですが、真円や正方形の作品は端正ではありますが奥深さに欠けます。そこで釉薬を流し掛けしたり削りで表情をつけるなど、少しだけ「変化」を与えるとうつわが生きてきます。

 

たとえば高台内でも一方を直線的に削り、他方をやや曲線的に削るだけでも表情が豊かになります。または器面に装飾をしたならば、見込みや高台の作りを端正にしてバランスを取る(=「対比」させる)など。うるさい部分があるならば、別の所は静かにさせると調和がとれてきます。

 

もちろんわざとらしい過度の装飾・意匠はかえって飽きが来るでしょう。しかし自然に作る中でちょっとした変化が加わると、一様ではない奥深さが生まれるのではないでしょうか。

 

ひとつの作品の中でもこうした「対比」や「変化」は、長く使っていくうえで大切な要素です。たとえば自然界においても、海や山が幾何学模様で単色だったらすぐに見飽きてしまいますよね。

 

長いあいだ使っているうつわも同様、飽きの来ない作品にはちょっとした「対比」や「変化」があります。こうした要素も選ぶさいに見てみると面白いかもしれません。

 

 高台まわり

さて、高台回りをみると見込みと比べてカラフルです。見込みは灰釉をかけていますが、この裏側にはいろいろありそうです。
 

皮鯨高台


釉薬がきれいに階層になっているので、筆で塗り分けたのかもしれませんね。透明釉をベースにして口縁近くは長石釉(もしくは灰釉)を筆置き、高台近くの釉薬の薄い部分は、土の含む鉄分によって褐色になっています。

 

唐津の素地土が含む鉄分は、褐色に発色して釉調に影響しています。また、ロクロ目には釉薬がたまって濃淡がみてとれます。ただ、見込みもこのような色調だと唐津としては派手すぎるかもしれませんね。

 

高台は土見せ(釉薬をかけないこと)で小ぶりに削り出してあります。これは上に向かって広がる朝顔形とバランスが取れています。土は柔らかい感触で削り跡から胎土の粗さが分かります。

 

まずは口縁部・鉄絵の印象から掘り下げて皮鯨を楽しんでみてください。

 

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